始まり!!二人を追って!!
「マナシス様……ご報告が、ございます……」
うおっ!!
びっくりした!!
無の精霊王、アナスタシオンじゃないかっ!!
漆黒のオーラを纏い、黒い影のような霧状のものが、アナスタシオンの周囲に漂っている……。
アナスタシオンの筋肉の隆起に沿って鎧のようなものが、黒く全身を包んでいる……。
相変わらず、キリッとした顔立ちに、金色の長髪……。
口元に、不敵な笑みを浮かべて続きを話す……。
「ロアナール地方の大森林に、二体の巨大なエネルギーを感知致しました……。おそらく……」
「【ヴェガ】……ですか?」
「…はい……。しかし、もう一体の方のエネルギー源の詳細が、現在のところ、不明なのですが……、おそらく……」
「シュンタロさんの……影……?」
アナスタシオンから貰った漆黒のカードが、明滅している……。
おそらく、ここから、来たのか……。
アナスタシオンなら、どこでも、神出鬼没な感じが、するが……。
……
そんなことより、僕とマナさんの影が、なんだって!?
取り急ぎ、その、ロアナール地方の大森林ってとこに、早く行った方が、良いんじゃないかっ!?
「そうですね……。急ぎましょう……。何か、手掛かりが、見つかるかも知れません……。だいたいの場所は、分かりますか?」
聞かれると、すぐさま、アナスタシオンの、手の平の上で、感知地点付近の森の周囲の状況が、映し出された……。
大規模な激しい火災の跡が、あり、焼け焦げた巨木が、薙ぎ倒され、森の深部、一点に、何も無い、土と岩肌の露出した広大な荒れ地が、広がっていた……。
凄まじい戦闘の跡が、見て窺える……。
「かなりのエネルギー量の衝突が、あったものと、考えられます……。二つのエネルギーが、唐突に現れて、激しい戦闘を繰り広げた後、忽然と、その消息を絶っています……。私の、探知能力にも、現在のところ、反応は、ありません……」
「分かりました……」
毅然とした態度のマナさん……。
あんなに、可愛くて、優しいのに…。
背筋が、ピンと張る僕……。
しっかりしないと……。
焦る僕…。
いやいや、焦っても、仕方ない……。
けれど、何にも分からずに、この世界に、来たんだよ……。
戦闘も、素人。元の世界の一般人以下……。喧嘩もしたことが、ない……。
駄目だ……。腹をくくろう……。死ぬかもしれない……。恐怖する……。死ぬのは、嫌だ……。死にたくない……。いや、死んでも、いいけど、痛いのがな……。痛みに、恐怖する……。
「マナさん……」
涙目になりながら、マナさんの方を、見る……。
なんて、情けない男だ……。
「シュンタロさん……。信じてください……。自分を信じてください……。私も、守ります……。それに、シュンタロさんには、私の力を増幅させる『力』が、あります。私が、シュンタロさんを、死なせません……。それに……」
続けて、マナさんは、こう言った……。
「精霊王たちの加護を受けた装備品たちも、シュンタロさんを強く守ってくれるでしょう……。シュンタロさんの強い気持ち……それだけで、全ては、導かれるでしょう…。私も…この世界も……」
そうか、そうなのかっ!!
涙をぬぐう、単純で、情けない男、僕シュンタロ……。
マナさんに、慰められて、ようやく、顔を上げることが、出来た……。
まだ、目は、腫れているかと、思うんだけど……。
「では、参りましょう!!シュンタロさんっ!!シュンタロさんは、【全界の救世主】なんだからっ!!」
僕を見て、満面の笑みを浮かべるマナさんっ!!
強いっ!!!
素敵っ!!!
僕は、マナさんを見て、安心するのだった……。




