【ヴェローナ=ガラテア】!!
「ゴオオオオオオオオォォォォォッッッッッッッ……………」
女の背後の黒い球が、燃え広がる炎の全てを、喰らい尽くす……。
今まで、昼間ほどに、明るく見通せた空間は、この森本来の、静けさと、漆黒に落ちる森の闇の深さを、取り戻した……。
「はじめまして……。刹那……。私は、【ヴェローナ=ガラテア】と、申します……。お気付きでしょうが、アナタへの殺意は、微塵も、ありません……。アナタと、同じく、【影】…の力を使う者……」
感情は、分かる……。
先ほどまでの好戦的な、態度を翻して、手の平を返したかのように、オレへと、言い寄る………。
女は、【影】を操るというが、本人に実体は、伴う……。
女の身体の更に内部、深部中央付近に、温度の上昇を、感じる……。
つまりは、感情の変化……。
現在のオレ自身を構成する条件の内、彼女が有用と判断した要因が、劣勢に変異しない限り、しばらくは、信用出来そうだ……。
オレは、この女、【ヴェローナ=ガラテア】が、オレを呼ぶ名…しか、知らない……。
刹那……
セツナ……。
「一緒に、来て頂けますか……?」
女が、再び、そう、オレへと、問いかける……。
「いいだろう……」
オレ自身の『記憶』というものが、無い。
言葉は、話せるが、まるで、ここに、存在している感覚が、無い……。
いや、無いというよりは、『薄い』……。
『希薄』……。
オレは、この世界と、自分自身の、手掛かりを、つかむため、女と、行動を、共にすることに、決めた……。
何かに、繋がりそうで、想い出せない……。
しかし……。
「来て……」
【ヴェローナ】が、背後に開けた黒い空間の穴へと、手を差し伸べて、オレが、来るのを、待ち望んでいる………。
吸収は、されはしない……。
女、ヴェローナの感情が、悦びに、満ちているからだ……。
やがて、誘われるがままに、導かれ、漆黒の闇の空間へと、入ってゆく……。
ヴェローナと、ともに……。