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住めば都

作者: 34

オレは4月から一人暮らしをすることになった。


まあ最初はボロアパートだよな...と思っていると...!


なんと叔父が持っているアパートを格安で貸してくれるとのこと!


しかも1年前にリフォームしたばかり!?家具つき!?!?徒歩3分で駅!?!?!?


で家賃が月1万!?!?!?!?


もちろん親戚だから安くなっているのもあるけれど、普通の人でも3万程だという。


ここまで聞いたときは「最高の叔父を持った...!」と感動したものだった。


が、広さを聞いて驚いた。唖然とした。


「あ~...まあ元から家具置いてるスペース除いて3畳ないくらいか?」


と叔父は平気な顔で言った。


「え、まって間取りは?」


「1Kだな あ、キッチンと部屋に境とかないからな」


と叔父はやはり平気な顔で言った。




そして引っ越し当日──


最低限の荷物だけをレンタカーのハイエースに載せ、アパートに向かうと...


「え...おしゃれ......すげえ.........」


オレの中にあったアパート像が崩れる音が聞こえた。


てっきりボロボロの木かコンクリの壁にトタン屋根だと思っていたのに、そこにあったのは、白ベースの壁に焦げ茶色にレンガや、木材がアクセントとして使われているような超おしゃれアパートだった。


10台が入る駐車場に車を止めると、ちょうど叔父がアパートから出てきた。


「おー!来たな!まずは部屋に案内しよう」


階段を登り、2階の1室がオレの部屋らしい。


「この部屋だ よいしょっと」


カードキーを当て、ピピッという電子音と共に開けられたドアの先には...


壁だった。


いや、よく見ればその壁の前には木で出来たおしゃれなデザインの台があるし、もちろん玄関には靴箱だってある。


でも.........


「えーっと...他に部屋は...?」

「風呂、トイレはちゃんとあるしクローゼットもある」


風呂、トイレはともかくクローゼットは部屋じゃないよな.........。


「じゃ、新生活、頑張れよ!なんか困ったことあったら言ってくれればすぐ来るからな!」


えーと...心遣いはうれしいんだけど.........。この部屋の衝撃で何も入ってこない...。


叔父さんが部屋を出て10分程してから、ようやく部屋を見てみたり、荷ほどきをしたりした。


荷ほどきと言っても、家具と基本的な家電はすでにあるので、家から持ってきた小物や本、CDだったり調理器具や掃除用具等々を置くだけだけど。


「いやでも......狭ぁ...」


試しに布団を敷いてみると、他に家具を置くことは出来ないくらいには部屋が埋まってしまった。


この部屋で...これから生活するのか.........。



翌日──


初出勤を終え、帰宅すると、


「あれ...?なんか落ち着く.........」


昨日初めて見た時は狭い部屋だ、としか思えなかったはずのこの部屋が、妙に落ち着ける場所になっていた。


荷物を置き、テレビを点け、そのまま(3歩程で)キッチンに向かい、料理をする。


不思議と寂しさは無かった。



そう言えば、昨日隣の部屋の人に挨拶に行ったら、「いいとこ見つけたな 兄ちゃん」って言われたっけ...。


その時は貧乏扱いされてるだけだと思ってたけど、確かに"いいとこ"かもしれない。



1人でしか暮らせないし、家具なんてろくに追加できないし、手を伸ばせば壁に触れるような狭い部屋だけど...。


ちょうど落ち着ける広さだし、変な物を買って部屋の雰囲気が壊れることもないし、少し動けば大体のことは出来るし、家賃は安いし.........。


「住めば都」っていうのは、こういうことを言うんだろうか?


でも、なんでかそういうのとは、違う気がする。


布団に入り、そんなことを考えていると、いつの間にか眠りについていた。

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