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第一章 Ⅵ

 フィルタによる光量調整で暗くなったカメラの映像が、明るさを取り戻してゆく。地対地ミサイルからは充分に距離を取っていたため、フラッシュの閃光対策もこの程度で済んだのだ。

『チャーリー、ファイア!』

小隊長の号令一下、地対地ミサイルへ向け射撃が開始される、その様がウインドウに表示されるのを後目に、チャーリー3、飯島マコ三等軍曹はアイコンを操作した。手にしたHM83A2を収納する為に。リアグリップから右手を離すと、サイトウインドウが閉じられる。フォワードグリップを握ったままの左手を右肩まで持ってゆくと、バックパックから伸びたアーム先端のマニュピレータがリアグリップを掴み、背中へと銃器を移動させる。収納されると前方からは、まるでスリングで吊っている様に見えた。空飛ぶ歩兵というコンセプトの機動歩兵ではあるが、プラズマスラスタの可動範囲とのバッテイング、また装備重量の関係で、バックパックには余り兵装を搭載出来ない。それも悩ましい弱点の一つではあった。と、それはともかく。AMRが収納される間にも胸部のLM84A1のグリップを右手で握る。新たなサイトウインドウが開き、それが自爆したミサイルの飛散する様を捉えた。一連の動作には十秒と掛かっていなかったが。

『遅いわよ、チャーリー3!』

小隊長からの叱責がとぶ。

「はっ、すみません!」

謝罪を口にしつつ、射撃体勢を取る。

「セレクト、ライフル、バースト、シュート!」

自分達の方へ飛んでくる地対地ミサイルへ向け射撃を開始した。距離約四百メートル。爆発しても被害はないと思われた。曳光弾トレーサを含む三点射は、しかし僅かに外れた。小さく舌打ちし、照準を修正する。

「シュート!」

次の三点射は、方向舵を掠めた。もう少し、とばかりに照準を修正しようとして。

『ごめん、そっち行った!』

分隊の僚機から突然、通信が入った。ほぼ同時に警報が鳴り出す。P.A.W.W.のカメラがミサイルを捉えたのだ。同僚はヘッジホッグを搭載していた。ヘッジホッグはカメラと連動し自動的に起動、対空迎撃を行なう機関銃だ。その攻撃で方向舵が破損し、こちらへ向かっているのだろう。不規則なロールを起こしつつ突進してくる。距離は三百メートル余り。

「了解!」

射撃体勢のまま加減しつつ上体を捻り、新しい標的に向かいあう。揺らぐミサイル先端部分に照準した。

「シュート!」

冷静にタイミングを計り、三点射を浴びせかけた。複合センサが破壊され、ミサイルは爆発した。少々近かったか爆風に煽られ、射撃体勢を崩してしまう。

「きゃあ!」

プラズマスラスタの出力が一瞬、下がる。高度が下がり、慌てて体勢を立て直そうとしていたその頭上を、自分が狙っていたミサイルが通過していった。それに気付いた時には、撃墜するにはもう遅い、と判断した彼女は、小隊長及び中隊長へ通信を入れたのだった。


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