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第二章 ⅩⅠ

 ××2087/04/26 (Su)××

 試験勉強を終え昼食を済ませると、初顔の隊員に案内されて一也は詰所まで来た。整備ブロックの近くにシャワー室と更衣室が並んでいる。制度上性別で分けられてはいないが、実質女子シャワー室、女子更衣室だった。更衣室の扉を開けると、彼女の制服姿が奥の壁の姿見に映った。通路左側に手前から一、二、一で並ぶロッカー列の、奥側一番手前に彼を導いてゆく。

「こちらにインナースーツを用意しました」

ロッカーを開くとハンガー上の棚から畳まれたインナースーツを取り出し、一也に広げてみせる。

「これを、着るのか?」

しげしげと眺める一也に押し付ける様に渡す。

「はい。今着ている物は、すべて脱いで下さいね。脱いだ作業服はハンガーに掛けておいて下さい。下着類は、インナースーツの棚に。それと、替えの作業服がこちらに用意してあります」

ハンガーの下を示す。彼は三日余り、着たきりの状態で生活していた。本来ならば汚れたり臭ったりしてもおかしくはないが、彼に体臭というものはない。汗もかかず、霊性外殻に守られているため汚れもつかない。なぜ替えねばならないか判然としなかったが、必要なのだろうとひとまず従う事にした。

「外で待っていますので、着替えが終わりましたら呼んで下さい」

説明するだけしてさっさと出て行った。一也は暫し室内を見回し、今一度インナースーツを見返し、途方に暮れた様な表情をした。

 結局、彼女に声が掛かるまで十五分近く掛かった。中へ入ってみると、珍妙な光景が待っていた。一也はインナースーツの前後を間違え、背後のファスナーを閉められず動きづらそうにしていた。脱いだ作業服はといえば、上衣こそだらしなくハンガーに掛けられていたが、ズボンは肩車でもする様にその上衣の上に跨っていた。下着類は棚に適当に突っ込んである。彼女は最初、この少年が自分を笑わせようとしているのか、と疑った。

「どうかしたか?それより、これは動きづらいが」

感情の欠落した表情でそう訴える一也に、本気なのだと考えざるを得なかった。

「当然です、逆ですから!一度脱いで着直して下さい!」

「そうか」

言いつつ一也はインナースーツを脱ぎ始めた。下はもちろん全裸だがそれも意に介さず、彼女の前で股間まで下ろす。短い悲鳴が、思わず漏れた。

「こ、これはこういう風にするんです!」

顔を背けつつ一也の背後に回り込むと、ハンガーからズボンと上衣を外しズボンはハンガーから垂らす様に下げ、その上にキチンと上衣を掛けた。

「作業服はこういう風にして下さい!下着類もこういう風に畳んで!」

ぐちゃぐちゃの下着類も畳んで棚に置く。内心『私はお母さんか!』などと突っ込みながら。

「良いですね!?」

振り返ると、一也は既に着直し、ファスナーもきちんと首元まで締められていた。

「…」

「どうかしたか?」

じっと自分を見つめてくるのを不審に思い一也が問いを発すると。

「いえ、別に!」

残念に思う気持ちが全くない、と言えば嘘になる隊員だった。


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