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第二章 Ⅸ

 午前中の勉強が終わり、鈴子に付き添われて一也は個室に戻ってきた。元の一也の記憶は、所々しか役に立たなかった。しかし教わった事は次々と記憶に刻み込まれてゆく。少なくとも記憶力は一級と言えた。もっとも例によって元魔王ヴォイドとしては、記憶すべき物事をきちんと記憶出来ているのは当然なのだが。昼食時となり、個室へと食事を運ぶ者の姿があった。ノックをし、許可を得て入室してきたその者とは。

「飯島三等軍曹、入ります!」

プレートを片手に、マコは敬礼した。

「どうぞ」

着席したまま素っ気なく答える。彼女はプレートを両手で掲げ、机の傍らに立った。彼の前に一つを置き、自分はベッドに腰掛ける。プレートは大小幾つかの区分けが為されており、それぞれがパッケージングされている。添付されたスプーンとフォークを外すと、大きな区分のパッケージを剥がす。湯気と共に白米が姿を現した。「頂きます」の後、彼女はフォークをそれに突き立て一塊を口に運んだ。その様を見ながら、一也も倣う。

 食事を済ませ、プレートを処分すると、マコは済まなげな表情と共に暫し、一也を見詰めていた。

「?どうかしたか?」

その様子をどう解釈して良いか判らず、一也は素直に訊ねた。マコは一旦口を開き、それでも僅かの間躊躇した後、声を発した。

「…その…昨日、作戦には自分も従事していて、病院が、ミサイルの直撃を受けた、と聞いて…実は、あのミサイルを撃ち漏らしたのは自分です!大変な目にあった様で、本当に、申し訳ありません!」

バッ、と頭を下げる。一也には内容の大半は理解不能だったが、どうやらああいう状況で転生する事になった原因を作ったのがこの女性らしい、と推測した。彼にしてみれば、それは決して謝罪される事ではないのだが。

「そうなのか?大した事はなかったのだ、どうでも良い」

「え、どうでも良いって…」

怪訝げな表情になるマコ。どうでも良い、で済ませられる事ではなかった筈なのだ。起爆こそしなかったものの、さもなければどれ程の死傷者が出ていた事か判らなかったというのに。もっとも、彼女は元の一也がミサイルのせいで死亡した事は知らない。

「我はこうして無事だ。気に掛ける必要はない」

自分の前世や能力の話は、大隊内でもスーザンや久音に留めておくべき、と釘を刺されていた。あくまで運良く難を逃れたという事にしておく様に、と。彼にしても拒否する理由はなく、ひとまず従う事にしたのだった。

「そう?それなら、そうしておきます」

多少なりと釈然としない思いを抱えながら、微笑んでみせる。自分も精一杯任務に努めた結果とはいえ、そう簡単に割り切れるものでもない。それでも一也が気にしていないというのに暗い顔をしているのは、やはり違うだろう。

「これから何をするのだ?」

「もう少し休憩したら、自分達の詰所へ案内します。貴方のお姉さんが日頃詰めている場所ですが、滅多に部外者は入れません」

「そうか」

それきり会話は途切れた。それから十分余り、マコばかりが気まずい空気を感じる事になった。

 バンカーには相変わらず何もなかったが、右隅に地下への階段が口を開けている。マコに続き、一也は降りていった。そこに到着するまでに、何事か詠唱しつつ(彼にはそう感じられた)ランニングや完全武装の行軍訓練をしたりしている将兵の姿を見掛けた。トレーラに乗せられた戦車や、装輪装甲車等が正門へと移動する様を目撃した時には、あれはゴーレムか馬車の一種かと、興味をそそられた。あれを『分解』で輪切りに出来るものか、と。

 地下一階を、マコはずんずんと進んでいった。駐車したトラックや軽装甲車の周辺では制限や作業服姿の男女が動き回っている。見た事のない機械類(転生したばかりで、たいていがそうだが)も操作していたりする様子の彼らを、一也は魔力の目で視ていた。男性の場合は似たり寄ったりだが、女性の場合にはスーザンや久音に比べ貧弱だった。胸部や下腹部が顕著だったが、とにかく集束点が曖昧だった。魔力の濃度が桁違いなのだ。そういえば、と、昨日路上でやり過ごした者達もそうだったと、彼は思い出した。いったい姉さんとやらとこの者達との間にどんな相違があるというのか、と、先を行くマコを視て、姉さんとやらほどではないが、それなりに集束点の濃度は高い、と判断した。この集束点の存在感の差はどこから来るのか?そんな事を考えているうちに、マコの足が止まった。

「こちらでB.E.適合値の計測をして頂きます」

くるり、と振り向き、眼前の施設を右手で示した。そこはP.A.W.W.の整備ブロックだった。奥へと向かう六本の整備用ターレットレーンが二本ずつに束ねられ、フォークリフトが往来する通路といえば両端は三メートル少々、内側の二本は六メートル余りの幅があり、直立型のフォークリフトが作業するには充分な余裕があった。整備用ターレットは一レーンにつき八基、フォークリフトで『試着室』を上に乗せ、整備や弾薬補充の為のバックパック取り出しや格納、P.A.W.W.自体の自己診断等を行う。束ねられたレーンは中隊単位で纏められており、左から第一、第二、第三となっていた。いま真ん中の第二中隊のレーンには背中合わせに『試着室』が並べられており、一也達に背後を見せている。作業用P.E.(骨格剥き出しのP.E.)を装着した整備隊員が、横のアクセスハッチを開き、中からバックパックや兵装等を固定したバスケットを取り出そうとしていた。全体で六十キロ近くはある筈だが、苦もなく取っ手を握り奥へと運んでゆく。その横では、整備用ターレットのコンソールを操作しつつ、手にしたノートパッドを見詰めている隊員の姿もあった。

「あれは、何をしているのだ?」

作業中の隊員達を指さすと。

「ああ、第二中隊は先程野外演習から帰還したばかりなので整備中ですね。ああやってきちんと整備をしないと、自分達は満足に任務の遂行が出来ませんから」

「あれは、あの鎧の物か?」

「鎧?ああ、確かに、P.A.W.W.は『現代の金属鎧』などと形容される事もありますね」

「貴様はあれを用いるのか?」

「はい。自分は城田中尉の、貴方のお姉さんの部下ですから」

言いつつ、マコは再び歩き出した。右端のスロープへと向かう。一.五メートル程の高さを上ると整備用ターレットが途切れ幾つもの作業台や、彼には用途も機能も想像のつかない機器類が並んでいた。作業台の上に並んだ銃器に取り付いて作業を行なっている者達、P.A.W.W.エミュレータに取り付けられたプラズマスラスタの試運転を行なっている者達等、黙々と作業に集中している。その脇を通過する際にマコが低く声を掛けると、横目でチラリ、会釈する。その更に奥には、横長の部屋があった。そのほぼ中央には両開きの、『試着室』が余裕で出し入れ出来そうな大きな扉が二つ、並んでいた。その左側には『試験室』、右側には『作業室』と書かれたプレートが貼られていた。その壁の半ば程を占める窓には、全てブラインドが下ろされている。マコは『作業室』の扉を数度、ノックした。やがて扉が開かれ、姿を現したのは人懐こそうな、イケメンの青年だった。

「城田、一也氏をお連れしました」

敬礼をし、マコが報告する。敬礼を解くと、すっと横に退いた。

「ああ、済みません。さ、どうぞ中へ」

青年は一也へ会釈すると、室内へ誘う様に道を空ける。意図を察し、一也は敷居を跨いだ。室内は少々寂しい印象だった。中央にテーブルがあり、バインダやノートパッドの類が置かれている。壁際には金属棚が置かれ、バインダや金属ケース、他に何かの機械類が置かれていた。テーブルの更に奥には事務机が一つ、それに着いた女性と、そしてその横にも女性が立っていた。紗智だった。制服はかつてと違うが、看護師姿だった。

「いらっしゃい、城田さん。こちらへ」

「済まないけれど、こっちへ来て貰えるかい?」

紗智の言葉に次いで、着席した女性が立ち上がり手招きした。何者かと少々の警戒心と共に、テーブルを回り込み近付いてゆく。

「こんな所まで悪かったね。私はナンシー、有井ありい。ここのP.A.W.W.開発改修出向チームのリーダをしている。こちらは、紹介の必要はないね?」

そう自己紹介した、西洋系の血が入っているだろう三十代の女性は、人好きのする笑顔を浮かべて見せた。

「ふむ」

一也は二人を見比べ頷いた。ここで何をしているのか具体的なイメージが浮かんでこないが、いずれ判るだろう。それより気になるものが。チラリ、左側に目をやる。そちらの壁にはやはり大きな窓があり、しかしブラインドは下ろされていない。隣室の様子が一部なりと見えていた。中には『試着室』があり、扉は開いていた。彼からは、そこに格納されているフラットブラックベースにオレンジのワンポイントというカラーリングのP.A.W.W.が見えた。額に一本、角の様に突き出したナイフが目立つ。その視線に気付いたのか、ナンシーは自慢げな微笑みを浮かべた。

「気になるのかな?」

「あれも、空飛ぶ鎧なのか?」

「ふふ、そうだな。まだ試作段階だけれど。なかなか満足に稼働させられる者がいなくてね」

「そうなのか?」

視線をナンシーへと向ける。それをナンシーは受けて立った。

「聞いているよ、君は少々特殊だそうだね?これからB.E.適合値を計測させて貰うけれど、男子の君がどれくらい特殊なのか、興味津々なんだ。新井さん?」

水を向けられ頷いた紗智が動く。その背後から、奇妙な装置が姿を現した。それを、紗智が机の前へと移動させる。

「それは何だ?」

まるでぶら下がり健康器の様だった。とはいえ随分と低いが。左右の支柱は太く、カーテンレールの様な形状をしている。だが何より異なるのは、二本の支柱を巡る様に設置された、幅二十センチ程の楕円形の輪だ。

「これがB.E.適合値測定装置だよ。まぁ簡単に言えば、君がどの程度のB.E.を安定的に供給可能かを、独自の数値で表示出来るのさ」

言いつつ机上のボタンに触れた。あの金属枠のモニタが展開され、描出されたキーボードに打ち込んでゆく。ログインすると、モニタに指を突き出す。レーザービームが途切れた事を感知した金属枠の受光部の情報から、何が選択されどういった操作をされたのか、等が判断される。やがて楕円の前方が開放された。ぶら下がる梁の部分に設置されたカメラが彼の体をスキャンし、支柱が身長に合わせ伸びる。短く電子音が鳴った。

「さぁ、床の足形に合わせて立ってくれないか?」

促され、彼は半回転すると背後から、測定器床の足形に合わせる様に乗った。楕円が閉じ、支柱を上がってゆく。彼の頭上で停止した。カーテンレールからハンドルが飛び出す。

「取っ手を握って、楽にして」

言われた通りにすると、ゆっくり楕円の測定装置が下りてくる。ナンシーと紗智はモニタを見つめていた。その表情が、時とともに困惑に染められていった。やがてそれは、恐怖といってよいものへと。

「…壊れたのか?…これは、あり得ない…」

「こんな振幅のない人なんて、私も知りません…」

測定装置が胸部に差し掛かった途端、警告の電子音が鳴り装置は停止、楕円の前後が突然、開放された。どうしたのかと、一也が机へと顔を巡らせば。ナンシー達は口もあんぐりと。固まっていた。

「どうしたのだ?」

彼の問いに、少しの間があって。

「ヒートアウト?…君は、何者だ?」

震える声で、ナンシーが問い返してくる。

「だから、どうしたのだ?」

少々苛立ち混じりに、一也が再び問う。

「ああー…B.E.適合値とは何か、判るかな?」

「いや?」

「そうか。生物エネルギー、等と日本では言うかな。他にV.E.、生命エネルギーとか。三十年余り前、ジェナイトが発見されてから私達はその存在を確認出来た訳だが。とにかく、ジェナイトを使えば人の未知のエネルギーから発電可能な事が判明してね。そこで、定量化可能な様に発電量の最大値と最小値、振幅間隔、周期性、発電の安定性等々、幾つものパラメタ値を基にした国際基準の計算式を定め、そうして算出されたのがB.E.適合値だね」

一也にはその言葉の一割も理解できなかった。

「??全く判らないのだが?」

ナンシーは特に不審にも思わなかった。P.E.に関しては義務教育で多少学習はするが、あくまで歴史に関わるほんの概要程度にすぎない。本格的に扱う必要のある業種を志望しない限りは、ろくな知識もないのが普通なのだ(それでも時勢に従い志望者は増加傾向にあるが)。逸材発掘のため中学ないし高校での測定を義務化すべし、との声もあるが、職業選択の自由との兼ね合いや、単に予算措置の問題等で実現はしていない。

「お姉さんは話さない、か。わかった。今から三十年余り前、小惑星から試掘された岩石から、未知の鉱物が発見された。つまりジェナイトだな。それを精製、発電機構に組み込んだのがジェナイト基盤と呼ばれるものだ。これを使えば、B.E.で発電が出来る。実のところ、私達に判っているのはその程度で、B.E.に関しては未だ不明点が多い。その一つが、性別による極端な適合値の差だろう。一般的に言って、男性より遥かに女性の方が高い事が判明している。女性の平均値が七十前後位とすれば、男性は高くて四十少々、というところかな?貴方のお姉さんに至っては、最高で百七十近くをマークしたものだ。人の事だから、体調や精神状態等で変動するものだが。そう、変動するのが普通なのだ」

ここでいったん言葉を切り、一也を見つめる。眼前の少年を透視しようとでもするかの様に。一方の一也はといえば、小惑星と聞いて脳裏に浮かんだあばただらけのジャガイモの様な岩石について考えていた。これは今どこにあるのか?なぜこの様にあばただらけなのか?

「ここまで良いか?」

「?ふむ」

一つ頷いてみせる。ナンシーは頷き返した。

「B.E.適合値というのは、時間と共に変動するものなのだ。例えば呼吸や心臓の鼓動等によっても変動する。しかし、貴方には、それがない。常に一定で、胸に近付くにつれ上昇し続け、遂にレッドゾーンに突入し停止してしまった。これをヒートアウトなどと呼んでいるが、貴方がどんな数値を叩き出したか判るかな?二百だ。これでもこの機械で測定出来る上限がこの値だっただけで、もっと上の筈だ。さっきも言った通り、貴方のお姉さんの百七十でも破格なのだが。それを男性が軽く超えるとは、どういう事なのだ?」

こういった質問に関する返答は、久音から教えられていた。

「機密だ。基地司令の許可がなければ答えられない」

この一言で、基地内の人間は追求出来なくなる筈だった。久音からは、自分の事に関しては喋るな、と釘を刺されているのだ。不審を抱かれる様なマネはするな、とも。事実、ナンシーも溜息をつくと首を振り、お手上げのポーズをした。

「なるほど、そういう事か。貴方は、連合軍の何か、プロジェクトの参加者か?あぁ、判っている、機密だろう?」

口を開きかけた一也に静止する様な仕草をする。一旦口を閉じた一也は、間を置いて再び口を開いた。

「質問をいいか?」

「どうぞ」

「そのジェナイトを使えば、B.E.とやらを発現させられるのだな?」

「まぁ、そう言えるだろう」

回りくどい言い方をする、と思いながら、ナンシーが頷く。一也にとっては好ましい回答だった。魔術を行使出来ない現状で、霊性外殻だけ(しかも制限付きの)では少々心許ないと考えていたのが、どうやら他に使える方法があるらしいというのだから。

「それはどこにある?」

「そこにある。そのアームの中に。ジェナイトの発電量以外に、私達には測定方法がないのだから」

測定器の解放された楕円を指さしつつ。一也はしげしげと見つめた。

「ジェナイトというのは熱に弱いのだ。発電時に発熱するが、七十度程度になるとさっきも言った通りヒートアウトといって発電が止まってしまう。長時間続けば、冷却しても発電しなくなる恐れもある。まぁ、もっとも発電量過多でそこまで加熱するなぞ、初めての経験だが。あくまで性能実験で確認されていただけでね」

肩を竦めてみせる。

「ジェナイトがあるのはこれだけか?」

「もちろん、あれにも組み込まれている。XPW101-1、愛称、ブラックオーガ」

ナンシーが隣室のP.A.W.W.を指さす。

「あれを使えば、空が飛べるのか?」

「恐らくは。君の数値なら、逆に過多かな。実を言えば、あれはまだ開発中なのだ。試験がしたくても、まともに稼働させられる人がいなくてね。まぁ、あくまで性能実証用だから実戦投入される事はないのだろうが」

「?使わない、という事か?」

「そうだな。簡単に言ってしまえば『我が社にはこれ程の技術力があります』という、一種の宣伝用だ」

ナンシーは溜息をついた。彼女は国内大手の電機メーカーから出向中で、この機体の設計者でもあるのだ。

「勿体ない…」

知らず、一也の口からその様な言葉が漏れる。ナンシーはその一言を聞き逃さなかった。

「おや、惜しいのかな?」

悪戯っぽい微笑が浮かぶ。

「そうだな」

今自分に不足しているものを補強出来る可能性があるのなら。

「それなら、協力してくれないかな?」

「何をするのだ?」

「いや、大した事ではないが」

机を回り込み、一也の前に立つ。殆ど身長差もなく、ナンシーは真っ直ぐに一也を見つめる。

「あれの試験を手伝ってほしいのだ。実際に装着して」

それは一也にとっても願ってもない提案だった。

「構わん、今からか?」

「いや、今日は測定だけだ。許可も取らなくてはならないしな」

と、扉を叩く音がし、テーブルに着き作業をしていた男性が立った。

「どうやらお迎えが来た様だ。それでは明日にでも」

「判った」

彼女が前を空ける。彼の傍らに立った紗智が「お疲れ様」と小さく呟いた。彼女に一瞥をくれると、一也はマコの待つ戸口まで歩いて行った。

 次に彼が案内されたのは広い、ガランとした部屋だった。奥に一つ事務机があるきりで、その代りコンクリート打ち放しの床には三メートル四方はある赤い正方形が十二×四の形に等間隔で並んでいる。その上方、天井にはカメラが設置されていた。今はP.A.W.W.姿の

二個小隊が赤い枠の中で高度を変えつつ銃を構えている。事務机には一人が着き、何か操作をしていた。

「こちらは模擬射撃訓練室です。各P.A.W.W.はシミュレータから配信される映像情報を元に、架空の標的を撃破すべく行動します。あくまであの赤い枠内で。もし少しでもはみ出したとあのカメラ映像から判断されたらそこで失敗、という事になって、色々と、まぁペナルティを課せられます」

天井を指さしつつ苦笑交じりに説明する。天井には縦横にレールが走っており、カメラの配置は自由に変更可能だった。

「あれは、空を飛び回る為のものではないのか?」

「あくまでP.A.W.W.を自在に、そして正確に操作する為の訓練ですから。中空で一点に留まったまま方向のみ変えるのって、結構大変なんですよ。さらには適切に高度も調節しながら、というのも。自分の体の動きに合わせてくれますから、ぞんざいな動きをするとすぐ軸がぶれたり」

と説明しているうちに、電子音が大きく鳴った。P.A.W.W.が一斉に降下し着地する。

「ああ、あの隊員が、はみ出した様ですね」

哀切の意を湛えた声と共にマコが指差した隊員は、しきりと頭を周囲に下げていた。


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