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其の七

続きです\(^ω^)/




電車で数時間揺られ、漸く大阪の難波駅に到着した。

念願の夢である外に出れた筈なのに由貴は周りを見渡し疲弊していた。

どこもかしこも人、人、人。初の人混みに少し酔っていて、今まで自分がいた世界はどれだけ狭かったか痛感していた。


「凄い人だね。今日はお祭りでも有るのかな?」


『大きな街では普通じゃないかしら。昔の京も負けず劣らずだったわよ』


「千都世って、以外と都会っ子だったのね」


『そう言う訳じゃ無いけど、ただ…蘆屋道満探してる間に粗方の村々は回ったからね』


「…それ笑えば良いの?」


楽しみを持って旅行するならまだしも、憎しみと怨念を振り撒いて全国を旅するのはちょっと。

まぁそれはそれとして、折角の都会。楽しまなきゃ損よね。

自動改札機を通る時は少し慎重に通っていたら背後から50代くらいのオジさんに、早よせぇ!と怒鳴られたが、千都世が足を引っ掛け、倒してくれたから良しとしよう。


暫く歩くと、道頓堀に到着した。

無駄にカラフルでドラマを叩いてる人形に、噂に聞いた巨大蟹を見た時は妖怪かと思った。

今は歩き疲れ、ベンチで休憩しながら出店のたこ焼きを食べていた。

初めて食べた、たこ焼きに由貴は上機嫌だった。


「美味しいわねコレ!」


『そうね、今の世の中は凄いわね』


千都世は由貴の絶賛するたこ焼きを食べながら今の食の凄さを感じていた。

非常にほのぼのとした場面ではあるがた、偶々通りかかった人が見たのは、由貴が誰も居ない所に喋りかけながら、たこ焼きを差し出し、それが手品のように一瞬で消えるのを目撃してしてしまった。

後に幽霊と喋る女が出ると道頓堀に噂されるようになり、夜にベンチ付近で肝試しする人が増えたとか増えなかったとか。


閑話休題。



暫く色々な物や食べ物を見て回り、ふと、ビルとビルの間に気弱な高校生くらいの青年が辺りを警戒するよに見回し、路地裏に入り込んだ。


「ねぇ、千都世」


『良いわよ。由貴のしたいようにしなさい』


由貴は頷き、青年の後を追って路地裏に入って行った。奥まで行くと曲がり角から複数人の声が聞こえ、バレないように覗くと先程の青年とそれを囲むように3人の男がいた。



「遅そいわ、早よ来い言うたやろ?」


「ごめん…」


「まぁええわ。金持ってったんか?」


「それやんねけど、先月オカンから小遣い前借りしたから、もう出来へんねん。バイト代の前借りもアカン言われたし」


傍目からは見ると、どうやらカツアゲみたいな?会話が繰り広げられている。

気弱そうな青年は俯きながら目を合わせずに、お金は無いと理由も含めてちゃんと言った。

だが、それでは納得出来ないのかイラついた雰囲気で青年に1人の男が詰め寄った。


「だから何やねん!持って来い言うたら、どないしてでも持って来いや!」


「せ、せやかて、もう、どないも出来ひんし…」


「何や?俺に逆らうんか?調子のっとんけ?」


男に凄まれ、青年は小さな声で、いや、でも、と困り果てていた。

そんな空気の中、由貴は馬鹿らしい寸劇を見飽きたかのようにスタスタと青年に向かって歩いた。

突然現れた少女にカツアゲをしていた男達は驚いたが、直ぐに女、それも垢抜けてない少女を見て余裕を取り戻していた。


「おい、お前。こんな所になんか用か?」


「そうよ」


「ほーん。何のーーー」


「貴方、最近肝試しとかしなかった?」


「えっ?」


由貴は男の質問に答えると次の質問には興味ないと言わんばかりにセリフを被せた。

一方で見た目は綺麗と可愛さを合せ持つ少女に急に喋りかけられた青年は、しどろもどろになっていた。


「だから最近肝試しとかしなかった?」


「えっと、行きました」


「おい、無視すーーー」


「そ。自分から行ったの?」


由貴がまたしても男を無視して青年に話し続けると、青年は男達の顔色を伺いながら由貴の質問に答えていった。


「いや、行けぇ言われて…」


「後ろの連中に?」


「おい聞いとんーーー」


「五月蝿い。今喋ってるから黙ってて」


3度目になると由貴は本当に煩わしいそうに視線を向け、ハッキリと言い切った。

男は額に青筋を浮かべ今にも爆発しそうになっていた。


「で、どうなの?」


「えっと、その、…はい…」


「なら今回は助けてあげる」


「お前、誰にそんなナメくさった態度しとんじゃ!」


由貴が青年の肩辺りに手を伸ばし始めた瞬間、男の我慢が限界にきて、由貴に近づこうとした。

しかし男の足は、あるものを見て時間が停止したかのように止まり、他の取巻きも、男と同じものを見て目を見開いていた。

男達が見たのは由貴の手に掴まれた人の形をした黒い靄だった。


「貴方の怒りは分かるけど、荒らすように命令したのは後ろの連中よ。怒るならその男達にしなさい」


「えっ?何の事?」


急に近づいてきた美少女に焦りながらも自分の肩に向かって無表情で何かに話している。

するとフと肩が急に軽くなった感じがした瞬間。


「うわああああ!!」


「ああああ!!」


「ひいいいい」


背後から男達の悲鳴が聞こえた。

その声に驚き振り向こうとしたが、顔を少女に押さえられ背後を振り向けないようにされた。


「見なくていいわ。それから、もうカツアゲもされないから安心して帰りなさい」


「…はい、分かりました」


未だに背後から聞こえる男達の悲鳴の中、少女の声はハッキリと聞こえ、その言葉には何か説得力を感じ、見知らぬ筈の少女の言葉を信じた。

すると少女は踵を返して元来た道を戻り、青年の前から姿を消した。

青年は少女に言われた通り、背後を振り向かず家へと帰宅した。





『優しいのね』


「そうでもないわ。ただ、親族は貴方と一緒に皆殺ししたけど、人類全て憎し。って訳じゃないのよ」


由貴の言う通り、確かに大勢殺したが、由貴の生来の性格上、困っている者は手を差し伸べるし、助けを求められたら基本的に助ける。

ただしその反面。村での仕打ちが由貴の性格に大きな影響を与えた結果、自分に害を及ぼす者には反撃するし、必要であれば千都世の力を借りて始末する過激な部分も持ち合わせていた。


「さっきのだって、偶々通りかかって観えたから気になって聞いたのよ。そしたら、あの男達のせいって分かったから憑いていた悪霊を男達に飛ばしただけよ。私は善人が馬鹿を見るのは嫌いなの」


『…貴方が優しい子で良かったわ。だからこそ私も惹かれたのかしら?』


「…知らないわよ」


千都世は由貴の頭上で逆さになりながらクスクスと笑う。

由貴は母親が子を褒めるような千都世の雰囲気に若干照れながら、日が落ちた夜のイルミネーションが輝く街を歩き、今日の寝床を探していた。

暫くすると辺りの街並みと合わない、外観が昔のホラー映画に出てきそうな民宿が見えた。

普通なら怖がって近寄り難い雰囲気があるのだが、由貴には関係なかったようだ。


「さてと、今日はあそこに泊まりましょうか」


『洞窟じゃなきゃ何処でも良いわ』


由貴は扉を開けるとチャイムが鳴り、奥から女将さんが出てきた。


「いっらしゃいませ。お一人様のお泊まりですか?」


「はい、一泊お願いします」


「かしこまりました。一泊夕飯付きで5000円です。お風呂は一階に有りますのでご自由にお使いください。お食事が出来ましたらお部屋にお持ちいたしますので。それではお部屋の案内を致します」


「よろしくお願いします」


女将さんに着いて行くと内装は外観と違い、掃除も行き届いていて、かなり綺麗だった。


『中は思ったより綺麗ね。値段は5000円って高いの?』


「さぁ?」


『さぁ?って高いって事?』


「いやそうじゃなくて…私、お金の存在は知ってるけど、いくらが高くて、いくらが安いのか分からないのよ。今まで最低限必要な物しか与えられなかったから、その辺は疎いのよ」


由貴は産まれてから一度もお年玉や、お小遣いを貰った事は無く、必要な物は家に居た女中が買い揃えていたので買い物もした事はなかった。

ついでに言うと千都世の金銭感覚は千年前に置いてきた為、今の時代の金銭感覚は全く知らなかった。


『あら?それだと、悪党からしたら由貴は格好の獲物ね』


「別に構わないわよ。どうせ、お婆様達が悪どく稼いだお金なのよ。それに悪意を持った人が私に近づいたら、千都世は何もしてくれないの?」


『それを言われると…ズルいわね』


「なら大丈夫よ」


『強かになったわね…』


部屋に着くと八畳程の広さの部屋にテレビと机、エアコンが付けられ、1人には十分な快適さだった。


「それではごゆっくりして下さい。直ぐにお食事を用意しますので」


そう言って戸を閉めて女将さんは出て行った。


「先にお風呂に入りましょうか」


『良いわね、千年ぶりのお風呂ね』


「千都世を知らない人が聞いたら物凄い不潔な人に聞こえるわね」


風呂に行くと他にも客が居て、風呂場で若い人達の声が脱衣所まで聞こえてきた。


『あら、先客ね』


「まぁ私達が民宿に来るのが遅かったからね」


服を脱いでタオルを巻いて風呂場に行くと三人の女性客の人達のが由貴に視線を向けた。

軽く会釈して身体を洗っていると何か視線を感じ、振り向くと三人の視線が慌ただしく逸らされた。

何だろうと?思いながらも今度はヒソヒソと話し声が聞こえてきた。

盗み聞きするのも無粋だと思っていたが、千都世が耳打ちしてきた。


『由貴、貴女人気者ね。髪が綺麗だとか身体が綺麗だとか色々言ってるわよ』


「そう。でも盗み聞きは良くないわよ」


『してないわよ。風呂に浸かっていたら聞こえてきたのよ。それにしても褒められてるのだから、手でも振ってあげたら?』


由貴は千都世の言葉を聞き流し、身体の泡を洗い流してからタオルを取って風呂に浸かると、何故か凄く見られてる。すると1人の、まだ何処か幼さが残る女性が由貴に話しかけてきた。


「あ、あの〜。ちょっとええですか?」


由貴は視線を周りに向け、誰も居ない事を確認してから返事をした。


「私の事ですか?」


「そうです!ちょい聞きたい事が有るんですけど、メッチャ肌、綺麗ですね!?何かええ化粧水とか、つこてんですか?」


「いえ、一度も使った事は有りません」


由貴はそう答えると三人は一斉に喋りかけてきた。


「嘘!?ほな何もせんで元から!?ズルいわ〜」


「ホンマな!?最初どっかの芸能人でも入ってきょった思て焦ったもんな!?てか、芸能人ですか?」


「しかも化粧せんでもその顔て、可愛いってヤバいな〜」


「え、えっとありがとうございます?それと芸能人ではありません」


その後も終始彼女達のペースに翻弄され、名前を聞かれた後は顔や肌を触られたりと、逃げる様に風呂場を後にした。


「皆んな人見知りしなさ過ぎじゃないかしら…」


千都世がクスクスと笑うのを横目に部屋に戻っていった。






浮遊霊「せや!女風呂覗いたろ!」


千都世「<●> <●>」


浮遊霊「ひえ…」

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