其の四
暇つぶしならぬ時間潰しのつもりで、少しでも読んで頂けたら嬉しいです。
あの夜から数日。由貴は叩かれる事は無くなったが何時も監視役として付いている。
そして現在の由貴は身体中に青痣を沢山作って、包帯や湿布だらけで痛ましい姿になっていた。
「ーーー」
『…』
祝詞を唱える由貴と黙って聞く千都世。前の様に喋りかけると由貴がまた酷い目にあうと思い、千都世から喋りかける事は無かった。
この日も由貴の祝詞が終わると付人が由貴を連れて下山するだけだったのだが、男はいきなり由貴の腹を殴った。
「ゔっ!」
『!?』
「はぁ〜何で毎日毎日俺がお前みたいなガキのお守りをせにゃならんのだ」
お腹を抑えて蹲る由貴に今度は蹴りを入れた。
「かはっ!」
『おいお前!何してる!』
千都世に声に男は反応せず、由貴を蹴り続けた。
しかし男に霊感は無く、千都世の声が聞こえず、取巻きの老人の息子の1人で、仕事をしていなかった為、由貴の監視として命じられ、何時も付いて回っていた。
「親父も親父だよ。今時悪霊だの何だの。これだから田舎の風習は好きになれないだよな」
『止めろと言っているだろ!』
「はぁ〜金につられてこんなど田舎来るんじゃなかったな〜女も居ねえ風俗も無い。ホントしけた村だよ」
男は自分のストレスを由貴にぶつけてスッキリさせていた。由貴にはこの村で助けてくれる者は誰一人として居ない。その為、多少傷が増えようと放置されていた。
「うう」
「チッ、オラ立てよ…」
男が由貴の服の襟を掴んで引き起こすと胸元がはだけ、サラシを巻いた由貴の胸が目に入り、下卑た笑みを浮かべた。
「まだガキだが…体は悪くねえな。ヒヒヒ」
男は由貴に馬乗りになり胸元の襟を広げた。
「や、やめて!」
由貴は抵抗するも中学三年生の腕力では、ましてや殴られたりした傷のせいで身体も弱っていた。
「フヘヘ、良いね!抵抗してくれた方が盛り上がるってもんだ」
両腕を押さえられ、由貴の首元から胸にかけて大きく息を吸って匂いを嗅いだ。
由貴は気持ち悪さと血走った男の目に恐怖を覚えて震えるだけだった。
「ん〜。久しぶりの女の匂いだ〜。さてさてお次は身体は女か確かめてやるよ」
男の手が由貴の胸元に伸びてゆき、触れようとした瞬間。扉から大きな音が鳴り響いた。
「ひっ!?な、なんだ!?」
ドン!…ドン!…ドン!扉の内側から何かが叩いている音が断続的に聞こえる。
男は怯えながらも由貴から降り、扉に近づいて行く。
「だ、誰か居るのか!?」
男が扉に向かって叫ぶと音が止んだ。
男が恐る恐る扉に耳を当てると何かが聞こえくる。
耳をすませているとこの世のモノとは思えない声を聞き男は叫びながら出口に向かって走り出した。
「ぎゃあああ!!」
山を下る階段を慌てて降りていたが足を踏み外し転がり落ちていった。
いつまでも降りてこない由貴達を不自然に思った男達が山に行く途中で男の死体を発見した。
警察の調べによると階段から踏み外して死んだと判断され事故死として処理された。
しかし警察の話によると転落死した男には奇妙な痣が沢山あった。
第1発見者の男達はその痣を見て絶句した。痣の跡が由貴に出来ていた位置と全く同じだった。
何より恐ろしかったのが男の恐怖に満ちた死に顔だった。
その日から、たとえ松に命令されても由貴に付いて洞窟に行こうとする者は居なくなった。
♢
『怪我は大分マシになってきたわね』
「うん。千都世のおかげかな」
事件後は見張りが居なくなり、最初の頃以上に千都世と由貴は姉妹の様に話していた。
「あ、もう時間だね。明日は少し来るのが遅れるかも」
『何か予定があるの?』
「うん。明日は卒業式と祓いの依頼があるの」
『…そう。祓いが手に負えないならココに持って来なさい。何とかしてあげるわ』
「その時はお願いするね。それじゃあ家が五月蝿いから戻るね。バイバイ」
『ええ、おやすみなさい』
山を降りて屋敷に戻ると女中の人達は事件以来。由貴を怖がりすれ違う時も目線を下げて決して目を合わせない様にしていた。
食事の時も襖をノックされ、開くと食事が置かれているだけと徹底していた。
食事を終えると身体を清めて仏間でお経を唱え、明日に備えて眠りに就いた。
♢
翌日。学校で卒業式が始まり、どこの学校でもあるよなプログラムで式は進み、式は無事終了した。
教室に戻って各々思い出話しに花を咲かせていたが、由貴は卒業証書を貰って直ぐに家に帰った。
家に着くと既に依頼主が来ており、直ぐに祓いの準備を整え、依頼主の話を聞くことにした。
今回の依頼主は他県でお祓いを受けたがどうにもならず、此処を紹介されたそうだ
「本日はどの様な御用でしょうか?」
「家の娘が学校でコックリさんをやってから、まるで動物の様になって暴れ回るんです!お願いします!娘を助けて下さい!」
既に奥の襖には夫婦の娘が閉じ込められており、いつでも祓いを開始出来る準備が出来ていた。
「おそらく動物霊でしょうね。安心した下さい。今日中に娘さんと家に帰れます」
「本当ですか!?ありがとうございます、ありがとうございます!」
「それでは此処でお待ち下さい」
由貴は立ち上がり襖を開けると部屋の隅で膝を抱えて此方を睨んでいる少女が居た。
由貴は何の躊躇いも無く少女に近づいて、額に人差し指を当てた。
「禁」
「グギャ!?」
すると少女はピクリとも動かなくなり、唸るだけで何も出来ずにいた。
「何処の霊かは知らぬが、決めさせてやろう。この身体から出て行くか、それとも滅せられたいのか。三つ数える。3、2」
『わ、分がっだ。出ていぐ』
「二度と悪さをするな。二度目は無い」
『や、約束ずる』
少女が出せない低く唸る様な声で返事をした後、少女の身体から狐が出てきた。スッと消えると倒れた少女を付人に任せ、少女の両親の元に行き、正座して結果を報告した。
「祓いは終わりました。娘さんが起きたら帰っても大丈夫ですよ」
「も、もう終わったんですか?」
「はい。明日から普通に生活しても問題ありません」
「「あ、ありがとうございました」」
「それでは失礼します」
祓いが終わると松の元に向かい報告をする。
「依頼、終了いたしました」
「ふん、腕だけは一人前だねぇ。終わったならサッサと山に行きな!」
「失礼します」
♢
準備をした後、何時もの様に長い階段を登り、洞窟の台座の上に座り、千都世に喋りかけようとした瞬間、後ろから複数の足跡が聞こえてきた。
由貴が振り返るとそこに居たのは今日卒業式したクラスメイトとの人達だった。
「うっわ〜。マジで居る」
「巫女服着てるし。ガチじゃん」
「な、何で此処に?此処は私有地だよ」
普段は山の周りは巡回している人が必ずいる。それにこの山は御子神家の私有地としても有名だ。一体何しに来たのだろうかと戸惑っていた。
「いやさ、卒業記念に皆んなで遊ぼうかって話しになったんだけど〜この辺って遊ぶ所無いじゃん。だから肝試ししようって話しになったの」
「そこでっ!祭りの時っていつも此処入れないじゃん。だったら御子神さんに頼んで入らせてもらおうとおもってさ」
あまりの自分勝手な言い分に、普段はそんなに感情を出すことは無い由貴は空いた口が塞がらなかった。
「てな訳で、御子神さん!ここで夜に肝試ししても良いよね?」
由貴は呆れながら深く溜息を吐き、常識的に考えて駄目だと、まるで小学生に言うように教えた。
「悪いけど、私の一存で決める事は出来ないし、貴方達が今してる事は不法侵入よ。見なかった事にしてあげるから早く出て行きなさい」
由貴が世間から見ても至極当然のな言い分に卒業生達は黙り込んでいた。
しかし彼らは私が断らないと高を括っていた為、自分達が今まで虐めていた人物から逆らわれ一部の卒業生が逆上した。
「はぁ?御子神さん空気読もうよ」
「そうだよ〜御子神さん感じ悪〜い。てか私に逆らってんじゃねーぞ」
「空気読むとか、そう言うレベルの話じゃないわ。良いから早く出ていって」
由貴は呆れながら卒業生の前に立ち、出口を指差した。
「あんたさぁ。卒業したら虐められないとでも思ってるの?」
「関係ないわ。早く出ていきなさい」
「チッ、生意気言ってんじゃないわよ!」
クラスのリーダー的の女生徒が由貴の肩を押し、由貴は肩を押されてバランスを崩し、尻餅を着いた。
すると女生徒が扉の前に向かって歩き出した。
「ちょっと!何する気!?」
由貴が立ち上がり女生徒と止めようとするが、女生徒の取り巻きに取り押さえられた。
「離しなさい!貴方達の為に言ってるのよ!」
「あ〜ハイハイ。てかこの札何?何か封印でもしてるの?」
「それに触るな!馬鹿女!」
卒業生達の余りの馬鹿さ加減につい本音が出てしまった。女生徒は触ろうとしていた札から手を離し、ツカツカ由貴に近付き顔を引っ叩いた。
「調子乗ってんじゃねーよ!誰に口聞いてんだアー!」
「馬鹿は馬鹿だと思っていたが救いようの無い大馬鹿者の集まりね」
「ッ!ねぇこの女剥いちゃわない?アンタの裸、SNS にUPして一生外歩けなくしてやるよ」
「ヒュー!良いね!」
「服取っちゃえー」
皆んなが由貴の服を剥ぎ取ろと手を伸ばす。そんな中、由貴の中で何かが切れた。
近寄る男や女に平手を打ち、囲みから抜け出し、扉の前まで走る。
「いって〜。このクソ女、タダで済むと思うなよ」
「ハハハ!ヨシヒコ殴られてやんの!」
「御子神さんさ〜、もう抵抗したって無駄だよ〜」
「写メ撮ったら皆んなで回そうぜ」
由貴は息を荒げ、元クラスメイト達を見渡す。
誰一人罪悪感など無く、今の状況を楽しんでいる。
私は何を守ってきたのだろう。産まれてから今まで、毎日馬鹿みたい山に行って、効きもしない祝詞を読み上げて、救いを求める人達に高額な依頼料を吹っかけて、小学生から中学生まで虐められても先生すら助けてくれず、ずっと我慢し続けて…
「本当、馬鹿みたい…」
そう言って扉に貼られていた封印の札を勢いよく剥がした。
「もう、好きに生きて良いよね?千都世」
面白い、続きが気になる。という方は良ければ評価お願いしますm(__)m
拙い文章なので良ければ「こうしたら面白い」「こうしたらもっと良い」というアドバイスもお待ちしてますm(_ _)m
返信等は遅れる事がありますのでご了承ください。




