其の二四
遅れて申し訳ないです。
どう表現していいか悩んでいたので、だいぶ遅れました。
待って頂いた方には感謝の言葉しかないです。
どうか楽しんでください。
あれから数日経った頃。残った案件については千里眼で確認して低級霊を詩翠一人に任せ修行と小遣い稼ぎに丁度良いからと暇が有れば好きな時に行きなさいと任せた。
「分かりました!頑張ります!」
根が善良なのか、学校が休みの日には千都世と一緒に積極的に霊を成仏させたり退治したりと頑張っている。
「滅……これで最後っと」
残った案件は詩翠にはまだ早いタイプが多くいたので由貴が一人で行ってきて、僅か1週間で由貴が担当した場所は全て終わっていた。
田畑に連絡を取り、依頼されていた大阪の件はもう直ぐで全て終了すると報告する。
「残りは弟子に任せてますので、終わり次第、詩翠から連絡を入れさせます」
「いやはや、流石ですな。こんな事言いたく無いのですが他の十二天将に頼むと依頼料は高いわ、仕事が遅いわで大変でしてね。おっと、これは内緒でお願いしますよ。それと1つ相談がありましてね、出来ればまたお邪魔して話したいのですが」
「ええ、構いませんよ。前にも言いましたが私には特にする事も無いので、いつでもいらして下さい」
「そうですか、では明日にでも其方に伺わせてもらいますので、お願いします。それでは」
田畑との電話を切るとタイミング良く詩翠が部屋に逃げ込む様に入ってきた。
何事かと思っていると奈美に追いかけられていただけらしい。
最近は詩翠にコスプレをさせようと頑張っているようだが、少し強引な、(最早犯罪と言ってもおかしくない)奈美に詩翠は怯えているし、コスプレをさせる道のりは遠そうだ。
暫くすると瞳にが奈美の首元を掴んで引きずって仕事に戻っていった。その際に詩翠が塩を振ったのは笑えた。
♢
翌日。田畑が屋敷に訪問し、由貴にとある依頼をお願いした。依頼内容は奉っているキツネ達の怒りを鎮めて欲しいとの事。
「何故そんな依頼を?何かしたのですか?」
動物霊から恨みを持つと人とは違うので、かなりしつこい。払う事自体は簡単だが、祀っている物となると別だ。祀ってもらっている手前、人々を厄から守ったりと友好的な筈だが。
「それが、厄介な事がありまして」
田畑の話によると、K国の在日が泉崎村の烏峠稲荷神社のキツネの石像2体を壊した上、本殿に侵入し、キツネの木像をなどを壊すなどした。
その後、同県内では福島市から白河市にかけて南北約80キロの範囲で寺や神社から仏像や地蔵像が壊されたとの被害届が相次ぎ、損壊数は少なくとも22カ所で119体に上っているとの事。
その神をも恐れぬ所業に、由貴は顳顬を押さえて深い溜息を吐き、またしてもあの国かと頭を痛めた。
「何故そのような事を。馬鹿ですか?」
「事情聴取も行ったのですが、要領を得ない事ばかり喋ったり、この逮捕は不当だのと話が通用しないので、ほとほと困っているんです」
「ならその男を生贄にでもすれば良いのでは?人1人居なくなった所で問題は無いでしょ」
「いや〜他にも厄介な事が有りましてね。K国から男の身柄引き渡しの要求がありましてね。何でもK国でも重罪を犯した者らしく、偉く強気の姿勢なんですよ」
「私個人の意見ですけど、何か怪しくないですか?タイミング的に」
K国の男がキツネの石像を壊し終わって逮捕され、そのタイミングで何故か逮捕された事がK国に伝わり、本当にあるかどうか分からない重罪がその男にあるから引き渡せと突然言ってきた。
K国がその男に指示を出した証拠は無いが出来過ぎだろうと思う。
こうなると勾留中に不審死だとしても問題になりかねない。
「まぁ我々も十中八九、K国が指示したと見ていますが確たる根拠も証拠も無くてですね、取り調べがあるとはいえ、後1週間程度で引き渡すしかないでしょうな」
K国と日本政府との政治関係は全く知らないからどうこう言うつもりは無いが、納得は出来ない。
「2つ聞きたいのですが、眷属であるキツネの怒りを鎮める方法は私に任せてもらっても?それから、要はその男が日本から出た後にどうなろうが知った事では無いと政府は言えますか?」
「……キツネの事に関しては由貴さんに全て任せます。最後に関しては、そうですな〜、日本から出た時点で死のうが知った事ではありませんな」
田畑は大黒様のような笑顔で答えてくれた。
その答えに由貴も目を細めて口元隠しながら互いに笑いあった。
たまたま客受け用の茶菓子を差し入れしようした奈美が部屋から聞こえてくる悪代官のような笑い声に踵を返し、たまたま通りかかった詩翠に持って行くよう頼み、逃げた。
その日、詩翠に新しいトラウマが出来上がった。
♢
後日、田畑と詩翠を連れ、泉崎村の烏峠稲荷神社に辿り着いた。
現場には多くの警察官が立ち並び、壊された石像にはブルーシートが被せられていた。
「それでは私は現場の警察に話をつけてきますので」
田畑は現場を仕切っている警察官に事情を説明しに行き、その間、神社の周りを確認していったが。
「由貴姉ちゃん、凄い霊気」
「まあ家を潰されたようなもんだからね。そら怒るわよ」
当然、神社の中から凄まじ怒りの霊気が外に漏れ出ており、眷属相手にこれは面倒くさい事になりそうだと溜息を吐いた。
元の場所に戻ると丁度田畑も戻って来たので神社の中に入る。入った瞬間から柱の影や屋根の上から視線を感じる。明らかに力有る私達に警戒している。
今は1人では無く田畑も詩翠もいるので威圧の意味も込めて霊気を四方にぶつける。
何体かは、それに驚いて逃げていったが本殿から感じる気配は逃げる事なく待っているようだ。
「田畑さん、此処からは詩翠と行きますので外で待っていてもらえますか?」
「分かりました。それでは」
田畑も霊感が無いが神社の異様な雰囲気に感じるものがあるらしく、由貴の言葉に素直に従って走る様に外に向かった。
本殿に向かって歩く程感じる圧が強くなり、詩翠の足が止まってしまった。
「ご、ごめん由貴姉ちゃん。足がもう進まない」
「分かった。千都世、頼むわね」
『はいは〜い』
詩翠に千都世を付けて拝殿前に着くと無数の白い狐が辺りを囲んでいた。
その中でも大きな人の身体で頭が狐の者がコチラをジッと見つめていた。
『何用だ、人間』
ただでさえ眷属と信仰を持った狐な為、言葉一つにすら圧があるのに多くの狐が集まってソレが何倍にも感じる。
今回は敵対しに来た訳では無いので、頭を下げ誠意を持って接した。
「今日来たのは貴方達を象った像を破壊された件について来ました」
『ほう、今更のこのこと何を言うつもりだ?』
「像を破壊したのは我が国の者では無く、K国の者がした事。憶測では有りますが我々と貴方方と仲違いさせるのが目的かと」
『それがどうした?』
狐はそう言うと圧の質を変えてきた。それは飛びっきりの念。
動物霊特有のやられたらやり返す。そんな強い復讐心を込めた念だ。
『何処の国かなど儂には関係無い。儂から見たらお前達は等しく同じ人間だ。なら話は簡単だ。人間にやられたなら人間にやり返せばいい』
狐の話を聞いた由貴は、まぁ最初からコチラの言い分なんて聞きはしないだろうとタカをくくっていた為、無表情で下げていた頭を上げる。
「では如何する所存でしょうか?」
『知れた事、砕かれた像の数と同じく貴様ら人間に死んで詫びてもらうまでよ。先ずは手始めに女子、お前の魂から喰ろうてやろう。殺れ』
周囲の狐が数匹、四方八方から由貴に向かって飛びかかる。
狐は目の前の女子を手始めに此処に来ている人間を片っ端から喰い殺そうか、呪い殺そうかと考えていたが、女子に飛びかかった狐達が吹き飛んだ。
『なッ!?』
「……名のり遅れました。お初にお目にかかります。十二天将が1人。第3席、六合の由貴と、申します」
狐達は由貴の口から出た言葉に戸惑いを覚えた。
人の身で有りながら神に近い力を持った霊能者達の集まり。
その中でも3席以上の人間は、神をも超える力を持った化物と有名で有り、例え人間であろうとも逆らってはいけないと言われている程だった。
そんな者とは戦えないと思い、狐達は恐怖で後ずさると。
『狼狽えるなッ!!』
自分達の主人である狐に一喝され、足を止めた。
『十二天将だと?それが何だと言うのだ!先に仕掛けたのは貴様ら人間であろう!』
「御気持ちは痛く察します。勿論、怒りを収めて頂ければ、像の修復をし、私が直々に奉納の舞いなどさせて頂きます」
『それで手を打てと?割に合わぬわ!!』
狐の怒号と呼応するように地震のように辺りはガタガタと揺れ、砂利に有る石が浮かび由貴に向かって飛んできた。
由貴は地面に震脚すると不透明な結界を展開して飛来する石を全て防ぐ。
『舐めるなッッ!!』
狐が呪の力を使い、地面が盛り上がり巨大な手を形成し、結界ごと由貴を叩き潰そうと迫る。
「解」
印を結んだ由貴の一言で狐の呪が解かれ、砂利で形成された手が雨粒のように崩れ落ちていった。
狐は自分の力を顔色一つ変えず由貴に初めて恐れを感じた。信仰され、眷属となり、何百年の時を超え力を得た自分がまるで子供のようにあしらわれる事にどうしようもない力の差を感じてしまった。
「此方の話を聞いて頂けますか?」
コチラの心を読んだかのタイミングで再度話し合いを持ち掛けられた。
素直にこの話し合いを受けるべきなのだろうが、他の者達の前で小娘に手も足も出ずに負けたとあっては、自身の沽券にかかわる。
どうしたものかと考えていると小娘の後ろに式神らしき女と童子を見つけた。
式神を付け、遠くに離しているところを見ると大層大事にしている事が分かった。
『……ただでは負ける事など有り得ぬわ!』
砂利を巻き上げ、由貴に対して目くらましに使い後ろに居る詩翠に向かって行く。
式神の女は無視して小僧に取り憑けば勝負の流れは変わる。
そう思い、手を伸ばすと目くらまししていた小娘からこう言われた。
「それは悪手でしょ」
この言葉の意味を知るのは直ぐの事だった。
伸ばされた腕を式神の女に掴まれ、ピクリとも動かない。
『し、式神の分際でッッ』
『嫌だわ。いくら力を抑えているからって式神と間違われるって傷つくわね』
そう言い終わると狐の掴まれている部分から腕が黒く塗り潰されていく。
突然の事に訳が分からない程混乱していたが、溶かされるような痛みでソレが何なのか直ぐに分かった。
目の前の女は自分を喰おうとしていた。
『くっ、離せ!』
空いた手で千都世の顔に貫手をすると底無し沼のように手が顔に沈んだ。
直ぐに引き抜こうとするものの、餅のようにへばり付き、またしても鈍い痛みが走る。
『や、やめてくれ!』
『あら?ツレないわね。女に突っ込むだけ突っ込んで満足して終わりだなんて、私もちゃんと満足させてもらわないと』
千都世の身体から無数の白い手が伸び、狐を掴んで引き寄せるたびに手が顔に沈み、足を腹に取り込まれ、遠い過去の記憶、まだ自分が生きていた頃に体験した死を思い出し発狂寸前まで恐怖した。
『た、頼む!喰わないでくれ〜!』
『ふふ、あははははははははは!!!』
下半身が腹に沈み、崩れた顔で目の前にまで寄られ、悟った。もう自分は駄目なのだと。
しかし、死を覚悟した瞬間、どうあがいても抜け出せなかった女から引きずり出された。
「千都世、もうそれくらいにしておきなさい。詩翠も怖がってるわよ」
千都世は詩翠を見ると、ガタガタと震えている姿に、やり過ぎたかな?と思い、歪んだ顔を戻し笑顔で狐が怖かったのよね?と背後から抱き着きながら聞いていたが、どう取り繕うが詩翠には新たなトラウマが出来たのであった。
「さて、此方の話を聞く気になりましたか?」
由貴の言葉に狐は頷くことしか出来なかった。
とある街角での取材。
Q最近の悩みは何ですか。
詩翠「逆らってはいけないランキングの1位と2位を決めかねている事ですかね」




