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其の一八



東京から大阪までの長い空の旅を終えた由貴は地上に着いた喜びを噛み締めていた。

取り敢えず田畑には1ヶ月タンスの角で足の小指をぶつける呪いをかけておこうと、直ぐに呪いを飛ばした。家に帰ると安心感で居間でだらしなく寝転びテレビを見ていた。



番組の内容は、L国のダム決壊。

現在の報道によると、9人が死亡、131人が行方不明になっていた。決壊で5億立法メートルの水が流出し、7つの村が浸水し、6600人以上が家を失った。

K国の工事に問題があったのか!?



「酷い話だね」


『K国ってよく聞くけど、色々とやらかしてるわね』


ニュースはそれで終わり、チャンネルを変えるもダムが決壊したとしか報道がされておらず、あまりK国の名前が出ていない。

由貴としてはK国がこの事に対してどう思っているのか知りたかったが調べる術を由貴は知らなかった。


「何だか気になるけど、どこも放送してないね」


『なら詳しそうな人に聞けば良いじゃない』


「そんな人居たっけ?」


『阿倍野 慎之介』


「…確かに」


電話番号を知っているのは義彦なので、由貴は屋敷を出て弁護士事務所に向かう。

事務所に入ると、何時ものメンバー以外に見知らぬ多くの人が居た。確か前に新しい人を入れたいって相談があったと思っていたら、その内の1人が由貴に近づき、営業スマイルとは言えない営業スマイルをしていた。


「おう!今日は何の用や?」


何で初手で絡んでくるの?私ってこの弁護士事務所に5000万投資してるんだよね?何んで客に対してガニ股で近寄って来て、威圧感放っているの?だけど経営は義彦に一任しているし、私がどうこう言えるスジは無いわ。


「えっと、義彦に会いに来たのだけど、義彦は今居るかしら?」


「あん?お前兄貴の女か?それにしては若過ぎるしの〜。もっと乳が育ってから出直してこいよ〜」


男の高笑いで頭が痛くなってきた。後で義彦と話し合わないと。

そして探していた渦中の人物が奥の部屋から出てきた。事務所の異変に気付いた義彦は由貴を接客している男を見て、明らかに接客の対応では無いのと、由貴の目が座っているのが確認出来た。サァーっと身体中の血が引いていくが分かり、慌てて由貴の元に駆け寄った。


「お、お嬢!コイツが何か失礼しましたか!?」


「へ?」


「そうね。私は貴方の女なのかとか、接客の基本がまるでなっていない事とセクハラされた事以外は何一つ問題無いわよ」


満面の笑みとは逆に目が全く笑っていなかった。

その事で義彦の顔がだんだんと青くなり、異変に気付いた由貴を良く知る部下達もとばっちりが来ないように由貴から離れていた。


「す、すいませんでしたー!!お前もサッサと謝らんかい!」


「えっ!?兄貴この女誰なんすか!?」


「馬鹿野郎!散々教えただろうが!お前らを真っ当な仕事に就けるようにしてくれたのは、お嬢だ!それにペーペーのお前らに給料を出せるのもお嬢が5000万をウチに投資してくれたからだよ!」


その後は散々義彦に怒られてから、改めて由貴を新たに増えた部下に紹介した。

一言挨拶だけしてから、義彦の執務室に向かう。


「本当にウチの若い者が失礼しました。今後はしっかりと教育しますんで」


「これから直せば良いわ。それより阿倍野さんに連絡を取りたいのだけれど、お願いだからかしら?」


「お安い御用です」


義彦が先ず田畑に連絡を入れると、直ぐに阿倍野に繋いでくれた。義彦から電話を受け取り、今回の事を聞く。


「それは調べが付いていましてね。どうやら手抜き工事じゃないのかと思います」


「そう、情報が早いわね」


「いや〜此処だけの話。K国が決壊の責任は日本に有るって言ってて、困ってたんですよ」


話を聞くと、K国のダム建設の工事をしていた者が言うには工事で使った設計図は日本のものだ。決壊した部分は日本の業者が工事した。というデマの情報が流され、『すべて日本が悪い』という世論操作が始まっているので、現在はその対応に追われているのだとか。救いなのが現地の人はそんな嘘に騙されていない事だ。


「それってジョークですよね?」


「残念ながら本当の事だよ。もはやお家芸と言ってもいいくらいだよ」


電話越しだが、阿倍野の心労が伺える。

少し可哀想なので助けてやるかと思い、由貴は有る提案をした。


「阿倍野さん。私の報酬金ってもう用意してます?」


「ええ。後は確認してから其方に振り込むだけです」


「なら送るのを止めて、半分をL国に支援金として送って下さい。もう半分は日本で被災した方達に送って下さい」


「ええ!?良いんですか!?かなりの大金になりますが…」


今回、由貴に頼んだ依頼料はK国やC国等ののスパイを探し出すだけではなく、外交上のカードとしても有効に使える為、報酬金は2億円となっていた。


「私はお金を特に使う予定が無いからね。それに阿倍野さんには、この国を良くしてもらいたいですから。上手に使って下さいね」


「…ありがとうございます。これで日本とL国はより強い友好関係を結べます!」


由貴は期待してますと言い、阿倍野との電話を切った。義彦にK国の会社名を調べてもらうと、今回のダム決壊の事もあり様々な情報が匿名掲示板などで開示されており、アッサリと問題の人物の情報が手に入った。情報を元に取り敢えず千里眼で覗いて見ると、問題のK国の人物がいたので、机に置いてあったL国のダム設計を処分される前に千都世が全部回収した。


「コレを阿倍野さんに送っておいてくれる?」


「分かりました。直ぐに送らせます」


やる事は全てやった。後は阿倍野総理次第だと成功の祈りを捧げた。


後日。日本政府からL国へと毛布やテントの支援を決定し、その迅速な支援にL国の副大臣がSNSにUPしてL国の市民から多くの感謝の声が日本に届いた。


『日本も被災しているのに感謝の言葉しかない』


この事は日本でもニュースになり、阿倍野総理は大きな支持を受けた。


他にも豪雨による災害した地域に義彦が経営する弁護士事務所の名前で多額の支援金が送られ、瓦礫の撤去作業等が進み、弁護士事務所に多くの感謝の手紙が届いた。

後日。寄付金の事でテレビ局からの取材が殺到し、SNSでは強面の弁護士と事務員で話題になった。

今では寄付金の事で多くの人から知られる事になった弁護士事務所は、今や朝から晩まで毎日忙しそうに働いている。

家にはテツの奥さんが新たに入社した元ヤクザ達の炊事洗濯を忙しそうにしていた。本当に大変そうなので由貴が手伝おうとすると。


「いいですよ。バカ亭主を真っ当な人間にしてくれた上、どこに出しても恥ずかしく無い仕事までさせてくれた。そこで由貴さんに家事手伝いまでさせたら、私の小さな恩返しの機会が無くなっちゃうじゃない」


と言って、中々手伝わせようとしない。

だけど皆んな朝から晩まで働いてる中で、何もせずダラダラと過ごすのは心苦しい。色々考えたが、社会経験が圧倒的に少ない由貴に何一つ思い付かず、ふとスマホに目をやる。そう言えば、阿倍野の電話番号は知らないが、田畑と安藤の電話番号は知っていた。

そこで、相談の為に田畑に連絡を取る。


「はい、田畑です」


「もしもし由貴でございます」


「お〜!由貴さんですか、どうかされましたか?」


「実は相談がありまして…」


それから今の状況を相談すると直ぐに答えが返ってきた。今回の寄付金の貸しが有るのでと、政府から弁護士を5人を数日後には派遣しますとの事。

しかも費用は政府持ちで。家に関してはお手伝いさん…俗に言うとメイドとか雇えばいいのでは?と提案を受け、探してみますと返事を返す。


「ありがとうございます。私、こういう仕事はした事が無かったので、本当に助かりました」


「とんでもない。この程度で由貴から受けた恩は返せませんよ。また何か有れば何時でも連絡して下さい」


それではと電話を切ると、取り敢えず田畑にかけておいた呪いは直ぐに消した。

この事は直ぐに義彦に報告すると、余程疲れていたのだろう。鼻水を垂らし、泣いて喜ばれた。


「お嬢〜〜!」


「ちょっ!汚い!





一方で、何もかも上手くいっている日本の事が気に入らない国があった。

そのK国の大統領が現在、役員を集めて会議をしていた。


「どういう事だ!最近になって我々のスパイや捏造がバレているでは無いか!」


大統領は唾を飛ばしながら激怒していた。今までなら何をしても日本は強く出てこなかった。

それを利用して、反日感情を焚きつけ、大統領まで上り詰めた。

だが最近では、情報操作の為に送り込んだスパイや、コメンテーターなど、炙り出され、指示書まで掴まれた。お陰で外交で赤っ恥をかいた上に憎き日本に弱みを握られた。


「何故こうなった!誰か説明しろ!」


「そ、それが捕まった奴から話を聞くと、何時の間にか書類が盗まれていたり、不可能な位置から盗撮されたりと、誰が実行したのか分かっていないのです」


「言い訳なんか聞きたくも無いわ!」


大統領は机に有る灰皿を役員に投げつけた。

しかし、こんな事では収まらない大統領は、とある事を思いつく。


「そうだ。工作員に伝えろ。今から言う場所を破壊し、可能なら国に持ち帰れとな」


「了解しました。ではそのターゲットとは?」


「そうだな。日本の稲荷神社の狐の像を壊せ」


「像で、ありますか?」


「貴様も知っているだろ。一般人には秘匿され、知られていないが、この世界には霊や化物が居るのは常識だ。だからこそ日本を守護する像を破壊し、あわよくば持って帰れるなら我が国を守護させるのだ」


一般的に知らされていないのは余計な混乱を避ける為で有り、その事は一部の政治家を含め、世界各国の政府が知っている。

そして、殆どの人はそれらの力を悪用する事なく、宗教間の神として、あるいは良き隣人として、自国の発展の為に崇め奉る。もしそれらに攻撃すれば向こうも意思を持って反撃してくる。

中には神と呼ばれる程強い力を持つ者も少なくはない。特に日本は八百万の神が居る事で有名で、例え戦争だろうと日本が崇めている物には攻撃してはいけないのが暗黙のルールだった。

しかしK国はそのタブーを破ろうとしていた。


「分かったのなら、サッサと指示してこい!」


「分かりました!」


部下が慌てて部屋を出ると、会議は終了し、K国大統領は自分を恥をかかせた日本に良い復讐が出来ると思い、笑みが浮かんだ。

しかしK国は知らなかった。現在の日本には、日本を守護する十二天将と、今や裏世界で有名になってきている最強霊能者とその相棒の事を知っていたならば、こんな無謀な事はしなかったであろう。







田畑「トイレ、トイレ」呪いのデバフ


タンスの角「ステラアアァァァァ!!」小指必中


田畑「うぐおおおお!!!」

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