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其の一七

作者の小話其の3

小学生の頃。自転車で田んぼに突っ込んだ友達を見て笑い、余所見していたら自分も自転車ごと田んぼに突っ込んだ。


由貴「…」



あれから数日後。由貴が田畑に頼まれて出した証拠が大活躍して、無事に多数の悪人は御用となった。

そして今日も田畑は屋敷に来て、依頼とは別に世間話をしに由貴の元に来ていた。


「いやはや。由貴さんのお陰で数十年分の仕事が一気に進みましたよ」


「お役に立て良かったです」


その後もアレが凄いだの、捕まえる時の犯人達の顔が面白かったなど、子供のようにはしゃいで色々と教えてくれた。白熱していて、気づけばかなりの時間が過ぎていた。田畑は一度咳払いをして由貴に会いに来た理由を話し出す。


「ところで、本日は折り入って頼み事がありまして、是非とも総理がお会いしたいとの事でして」


「…その様な方が一体私に如何様なのでしょうか?」


由貴は少し警戒していた。以前、安藤から聞いた『此方に引き込まなければ拘束しろ』と命令したのは上の人間だろう。その政治家のトップが会いたいと言われれば怪しむのは当然だろう。

千都世もソレを察して、田畑に姿が見えるよう足元から具現化している。

それを見た田畑は大慌てで事情を説明する。


「ま、待って下さい!前に由貴さんを拘束するように独断で命じた奴は既に捕まっています!ですから総理は全く知りませんし、寧ろ由貴さんを高く評価しています。今後のより良い関係の為にお会いしたいだけですから!」


「…そうでしたか。私ったら早とちりしてしまいました」


部屋に立ち込めた圧は綺麗サッパリと消え去り、田畑はホッと一息ついた。


「それで、如何でしょう?由貴の都合に合わせますので、出来ればお会いして頂きたいのですが」


「分かりました。お受けします。私は特に予定が有る身でもないので明日でも良いですよ」


「本当ですか!?ならば直ぐに連絡してきますので、確認が取れ次第、義彦さんに連絡を入れ、迎えを寄越しますので。それでは失礼します」


頭を下げて、走るように部屋出て行く田畑を見て、少年の様だと感じ、思わず笑みがこぼれる。

その後、義彦に連絡が入り、明日の朝7時頃に迎えの車が来るとの事。

義彦に総理大臣に会いに行って来ると言うと、お嬢の全国制覇が始まるとか、義彦も偶に訳の分からない事言うな〜と思いつつ、そうね、と流していた。





翌日。支度を済ませ外に出ると、既に迎えの者が外で待機していた。


「おはようございます。本日案内と運転を務めさせて頂きます。藤原と言います」


「本日はよろしくお願いしますね」


高価そうな黒塗りの車に乗り、大阪空港に向かった。

既にチケットを用意されており、由貴は藤原に案内されるがままに飛行機に乗り込む。

当然のようにファーストクラスに案内された由貴だが、飛行機に乗った事がないので、由貴の頭の中では変わった車と思っていた。

席に座ると機内アナウンスが鳴り響く。


【皆さま、今日も日本航空〇〇便、成田行をご利用くださいましてありがとうございます。

まもなく出発いたします。

シートベルトを腰の低い位置でしっかりとお締めください。

それでは、ごゆっくりおくつろぎください】


続いて英語で話し始めると、初めて聞くアナウンスに何処かワクワクしながら聞き入っていた。

キャビンアテンダントが各席のシートベルトを確認していき、全てのチェックが完了した。

すると飛行機が滑走路に向けてゆっくり動き出し、由貴は此処からどうやって東京まで行くのだろうかと窓の外を眺めた。するとジェットエンジンの起動する音に由貴は首を傾げていた。


「この音は何だろう?」


『さあ?私もこんな大きな車は初めて乗ったからね。調子でも悪いんじゃないの?』


飛行機が発射位置に着き、飛行機内からキュイーンと甲高い音と共に物凄い勢いで加速し、少しのGで椅子に押し付けられる。


「!?!?!?」


『あら、飛ぶのね。コレ』


突然の事に驚いていたが、不意に胃が持ち上げられる様な浮遊感を感じ、窓の外を見ると飛行機は大空へと飛び立っていた。


「て、鉄の塊が飛んでる…」


『ゆ、由貴ー!!』


そう言い残し由貴は気絶した。その後、由貴は空港に到着するまで白目を向いて、気絶し続け、二度と飛行機には乗らないと決意した。

空港には田畑が迎えとして待っており、由貴を迎えた。


「いやはや。どうでしたか?空の旅は?」


「あの乗り物には二度と乗りたくありません!」


「お、お気に召しませんでしたか?」


珍しく感情をあらわにする由貴に戸惑い。もしかしたら何か反感でも買ったのかと考え込んでいると、由貴の案内役の藤原から耳打ちされ、由貴の機嫌の悪さに納得した。


「まぁまぁ。此処からは車ですから安心してください。それでは此処からは私が案内しますので」


田畑は由貴の機嫌をこれ以上損ねたくないので、帰りも飛行機だとはあえて言わなかった。


黒塗りの車に乗り込み、東京の政府御用達のとあるホテルに入る。エレベーターに乗り込む、最上階の広い部屋に通されると、最近テレビでよく見る総理大臣がいた。此方に気づくと立ち上がり人の良さそうな顔で歓迎してくれた。


「初めまして、阿倍野 慎之介です。本日はお忙しい中来て頂きありがとうございます」


「此方こそ、一市民の私の為にわざわざ招待頂き、嬉しく思います」


「いえいえ、まぁ立ち話もなんですから」


高価そうなソファーへと案内され、早速ですがと本題に入った。田畑から由貴の能力は報告で知っており、今回も力を貸して欲しいとの事。

勿論、罪の無い人を貶める様な輩のみをターゲットにし、成功の度に報酬もきちんと払うと約束してくれた。そして今回の依頼内容はと言うと。


「由貴さんの能力は知っています。今回は少し規模が大きい依頼になるのですが、今の議員の中には他国から賄賂を貰って政治の邪魔をする者がいると思っています。勿論、何の証拠も有りませんが毎回C国やK国を擁護する発言が目立つのです。ですから」


「その証拠が欲しい、と言う事でよろしいでしょうか?」


「ええ、そうです。他の国が知り得ない情報が毎回漏れているので…出来れば思い過ごしならば良いのですがね」


「分かりました。私も自国を愛する者ですから、その依頼受けます」


「ありがとうございます。早速ですがコレが疑いのある者のリストです」


阿倍野から渡された、それなりのリストの数に由貴は少し驚いた。日本人なのに国を売っている輩がこれ程居るのかと思うと将来が心配になった。

前回同様に千里眼で探すと、出るわ出るわで呆れてしまった。中に日本を売るつもりは無いと言って賄賂を突き返す政治家も居たが、それでも多い。

取り敢えず、裏金の目録と俯瞰の写真。更に偶然、賄賂の受け渡しの瞬間を見つけた時はスマホの動画に念写して阿倍野総理送る。他にも軽犯罪の証拠もついでに渡しておいた。


「これで全部ですかね」


阿倍野は机に広げられた証拠の数々に驚きと落胆が垣間見えた。


「居ても数人と思っていたのですが…まさかこれ程とは。はぁ。しかしこれで日本を貶めようとしている輩は排除できます」


「ええ、お役に立てて光栄です。総理も清廉潔白な人物でとても安心しました」


「どう言う事ですか?」


「いえ、失礼ながら総理の事も調べまして…もし何か有ればポキッとやっちゃおうかなって思ってましたの」


『ふふふ』


由貴の言葉と、自分の背後から聞こえる冷たい声に、阿倍野のハハハと乾いた笑い声が部屋に響いた。

人間、悪い事してなくてもパトカーを見ると何故か緊張する人がいる様に、阿倍野も、悪事はしていないが、これからも清廉潔白を貫こうと心に決めた。


「ご、ご期待に添えて光栄です。ではこの証拠で使って、本当に国をより良くする者達だけが残るようにしてみせますよ。本日はありがとうございます」


そう言って阿倍野は深く頭を下げようとしたが、由貴に手で制され、一国の代表が簡単に頭を下げてはいけないと言われた。阿倍野のは由貴の言葉と物怖じしない胆力は、自分より政治家に向いているのかもなと心で思った。


「それでは、また用が出来ましたら私からお伺いします。由貴さんはどうやら飛行機が苦手と聞いているので」


「そうして下さい」


こんなところはまだ子供っぽいなと阿倍野と田畑は思わず笑ってしまったが、ジト目の由貴から呪いますよと言われ、誤魔化す様に咳払いをして丁重に帰宅してもらった。


ホテルを出て、黒塗りの車に乗る。暫く走ると見た事がある場所に、まるで犬が動物病院を見たかの様に由貴の顔は青くなっていく。


「それでは由貴さん。帰りは藤原も付いて行くので安心して下さい。それでは」


「ちょ!?」


田畑は大黒様の様な笑顔を浮かべながら猛スピードで由貴の前から去った。

肩を叩かれ、後ろを振り向くと藤原が笑顔でファーストクラスのチケット2枚を持っていた。

しかしどうしても乗りたくない由貴はその意思を伝えようとすると、藤原は笑顔のまま言った。


「わ、私は車でーーー」


「いや〜実は今日は娘の誕生日でして、久し振りに早く帰れるので娘も大喜びなんですよ。ああ、すいません話を遮って、何かご用ですか?」


何で今そんな事言うのと由貴は項垂れた。絶対確信犯だよ。取り敢えず田畑は今日呪っておくと決めた。


「いえ、何もぉ有りましぇん…」


由貴は涙目のまま、渋々だが飛行機に乗った。


「大丈夫ですよね!?ちゃんと確認して下さい!」


「お客様、何度も確認しておりますから、安心してください」


「そうですよ。落ちたらその時はその時ですよ」


「何で今それ言うの!?」


何度もシートベルトを確認してキャビンアテンダントにも良く確認して下さいと懇願した。


「千都世、手ぇ握ってぇ〜」


『はいはい』


千都世にも横に来てもらい手を握り締めた。時間が経過する度に千都世の手がどんどん締め付けられる。

飛び上がる前には、京の都を恐怖のどん底に落とした悪霊と、総理や十二天将の中でも一目置かれている少女の悲鳴が青空に響いた。


その後、とある飛行機には苦痛に苦しむ女の声が聞こえると噂が広がった。











飛行機「由貴、マイフレンド」


由貴「私に近寄るな〜ッッ!!」ズキューン!



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