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其の一六

由貴のチート力が解き放たれます!



あれから数日後。コンビニでの仕事もようやく慣れ、レジを担当したのだが、不思議と由貴のレジに並ぶ客が居なかった。由貴も由貴で声をかけるのだが何故か視線すら合わさない始末。


「何でだろう?」


今街ではこんな噂が広まっている。

とあるコンビニに、モデル並みに可愛い女の子が居て、ナンパ目的で並ぼうとすると何故か命の危険を感じるそうだ。他にも少し霊感が強い女の子がレジの女の子の後ろを見て失神したとか。

それでも強引に並ぼうとしたナンパ男が居たそうだが、原因は不明だが足を急に挫き、倒れて捻挫したそうだ。


「休憩入りまーす」


他にも休憩に入ろうとした店員が見たのは宙に浮かぶお菓子や、誰も居ない所に喋り続ける由貴の姿を見て、固まっていた。


「何や…あれ…」


「誰ですか?」


此方に気づいていない筈の由貴が、首を突然グリンッ!と振り向き、店員は得体の知れない恐怖を感じて叫びながら家に帰り、そのままコンビニを辞めてしまった。

他にもコンビニの前でたむろしてる不良達に由貴が注意するも。


「はぁ?誰も迷惑してへんやん」


と耳を貸さなかった少年達が後日頭を丸めてコンビニに謝りに来た。本来なら店長に頭を下げるべきなのだが揃って皆んな、ビクビクしながら由貴に許しを乞うていた。

そして店長はこのままではコンビニが潰れると確信して、とうとう由貴にクビを宣告する事に決めた。

土下座しながら。


「もう由貴さんはお金の価値が分かってると思うよ!この道10年以上の私が言うんだ!間違いないよ!」


「そうですか?」


「うんうん!だからこれから家の手伝いをすれば良いと思うよ!だからお願いもう許して!」


店長の謎の気迫に押され、コンビニを渋々辞めると残った店員から歓喜の声が上がり、由貴が辞めたと聞くと辞めた店員や客が戻ってきて、昔のように繁盛し始めた。


後にこの事は【魔の数週間】と語り継がれ、履歴書に付いていた由貴の写真は各コンビニチェーン店にブラックリストとして出回ったとか出回らなかったとか。





「と言うわけで、店長からお墨付きを貰いました」


由貴は茜達を呼んで事の顛末を話し、目を輝かせてながら、やりきったという顔で報告してきた。

茜達はコンビニの噂を知っていたので、思いの外持ったなと心で思っていた。


「そ、そうかー」


「偉いなあー」


「流石由貴ちゃんやでー」


「何で皆んな棒読みなんですか?」


3人は結局、由貴は今まで通りが1番と言い残し、暫くしてから帰っていった。どういう意味かと義彦に聞くと。


「お嬢は仕事なんかしなくても良いって事ですよ」


「そ、そうなの?」


「「「兄貴のおっしゃる通りです!」」」


何だか丸め込まれたような気分だけどと、思いはしたものの、これだけの人がそうだと言っているなら間違いないと、この事に関して由貴は考えなくなった。

生来からの性格のせいで人を疑う事をあまりしないのが由貴の良いとこで有り、悪いとこでも有る。


それから何時もの生活に戻っていると、とある訪問者が現れた。


「お久しぶりですね。田畑さん」


「いやはや。少しばかりコッチの用事が忙しくてね」


大黒様に似た笑い顔で汗を拭きながら、鞄から書類を由貴手渡した。


「コレは?」


「前に話した依頼の件ですよ。そこの者達から証拠を出来れば入手して貰いたいのです」


書類に目を通すと様々な事が事細かく書かれている。

中には政治家の名前に有名新聞社の社員から社長の名前まで書かれていた。

そして分かりやすく書類の下の欄に疑われている罪状が書かれていた。


「スパイ、情報の横流し、犯罪の揉み消し、よくまあ色々有りますね」


これが全部本当ならと思うと嫌悪感すら湧き出る。

自然と由貴の眉間に皺がより、田畑を見つめる。


「そこに書かれて有るのは事実として間違い有りませんが、決定的な証拠が無いのです」


「分かりました。この依頼受けましょう」


「ありがとうございます。期限は設けませんので分かりしだーーー」


そう言いながら帰ろうと片膝を上げたのだが由貴の言葉に身体が固まる。


「30分程ください。それで大半は終わります」


「へ?い、今何と?」


田畑を含め、国のスパイや犯罪を犯している者を何度も追いかけていたのだが、その度に証拠不十分で逮捕する事が出来なかった者は大勢居た。

それからは証拠集めに躍起になったが簡単なものではなく難航していたが、由貴はたった30分で大半を終わらすと言った。


「どうぞ」


流石に冗談かと思っていたが由貴手に、いつの間にか田畑が渡した書類とは別の紙を持っており、そっと田畑に差し出していた。

喉を鳴らし、由貴から書類を受け取り、目を通す。

すると、とある新聞社当てに、C国からの偏向報道の指令書と、支援金が書かれていた目録である事に、これでもかというぐらいに目を開いていた。


「ど、とうやって!?」


「はい」


田畑は驚き、どうやったのか聞こうとしたが、再度由貴から書類を渡され押し黙った。

そこには男性議員の売春の現場写真が俯瞰で撮られていた写真と、買った少女の情報や場所までもが明確に書かれた文書だった。

それからは次々と出てくる決定的な証拠に田畑は改めて由貴の恐ろしさを知った。その気になれば、この子は世界を支配出来るのではないかと。

そして由貴が最初に言った30分後には全ての証拠が田畑に手渡されていた。


「以上ですが、田畑さんの部下。吉田 正人と言う人が証拠隠蔽に関わっています。どうするかは田畑さんに任せますので」


由貴はそう言って取引現場の俯瞰の写真と携帯電話を田畑に手渡した。


「…どうやったんですか?」


「名前、歳、生年月日、写真まで有るなら簡単です。千里眼で場所を特定して、私の気を道として繋げ、千都世に行ってもらい証拠を持ち帰ってもらいます」


「せ、千里眼ですか!?」


由貴がこの様に、と言うと、何も無い空間から田畑が撮影された俯瞰の写真が出てきた。

由貴は何でもない風に言ったが千里眼はこの世の全てを見通す事が出来る。

それが有れば世界各国の機密情報は筒抜けになる。

田畑は口には出さないが、もはや兵器だと心底恐れ、味方で良かったと安堵した。


「これならば、全員言い逃れも出来ません。本当にありがとうございます。今日か明日にでも依頼料を振り込んでおきます」


「それなら義彦が私の口座を持っているので、そちらで話してください」


由貴は口座を作らず、大金をその辺に置いて有る事に義彦は驚き、直ぐに口座を作っていた。


「分かりました。ではまた依頼が有ればお邪魔させて頂きたいのですが…よろしいでしょうか?」


「良いですよ。このような悪は早々に罰を受けるべきですからね」


田畑心の底から感謝して由貴の家を出て後にした。





後日。テレビでは様々なニュースが流れていた。

売春議員逮捕。〇〇新聞社はC国からスパイか!?

〇〇社、K国との会談により独占禁止法の疑いで逮捕。殺人の証拠隠蔽の疑いで女性議員を逮捕。

生活保護費を不正受給していた外国人を一斉検挙。


テレビの司会者は急に出てきた証拠の数々に、まるで正義の味方が現れたかのようですねと茶の間を賑わかせていた。コメンテーターもこの事には様々な意見を飛ばしていた。


【それにしても突然の証拠の数々はビックリしましたね】


【そうですね、他国のスパイとか映画でしか見た事ありませんでしたよ】


【しかし、まだC国が関与していると言う事実は本当かどうか分かりませんけどね〜】


コメンテーターの一部はC国を擁護するような意見に、たまたま見ていた由貴が調べたところ、テレビ局内のスパイから擁護しろと言われていた。勿論金も、きちんと貰っていた。

直ぐに証拠の写真を撮り、次に田畑来た時に渡そうと千都世に閉まってもらった。

これでもまだ一部なのだが、全ての証拠が出揃っているので、もはや時間の問題だろう。

田畑も頑張っているのだろうと思っていると、部屋の襖がノックされ、返事をすると義彦が部屋に来た。


「お嬢、お話があります」


「入りなさい」


「失礼します」


義彦は部屋に入り互いに正座で対面し、由貴に報告した。

先ずは新たに入った部下の確認と、田畑から送られた依頼金の報告だった。

新たに入った部下は15人で皆組から抜け出した者達だった。千都世に頼んで直ぐに見てもらったが他の組からのスパイでは無く、真剣に働きたい者達だったそうだ。

次に田畑から送られた依頼金は1億円だった。

流石に驚いた義彦だが、田畑から説明が有った。


「本来なら我々が数年かけて手に入れられるかどうかだったのが、僅か30分で全て解決してくれた。その分、浮いた人件費等から、少ないですが受け取って下さい」


そして最後に正当な報酬だと言われたとの事。


「以上が報告になります」


「そう、なら5000万円を義彦の好きに使いなさい」


突然の由貴の申し出に義彦は驚いた。


「お嬢!?5000万円なんて大金。俺にどうしろってんですか!」


「私は大金なんて使う予定も無いし、義彦なら上手く使うでしょ。それとも私の見込み違いかしら?」


由貴はクスクスと笑い、分かりやすい激励とも取れる期待に義彦の心が震えてた。改めて姿勢を正し、頭を下げて、再度強い忠誠を誓った。


「お嬢のご期待に、必ず添えるよう頑張ります!」


「期待してるわ。それから部下の皆んなに労ってやりなさい」


そう言って由貴は財布から10万円取り出し、義彦に渡した。今度も断りそうだったので、会長から部下への労いはおかしくないでしょ?と言うと礼を言って受け取ってくれた。


「ありがとうございますました!失礼します」


義彦は頭を下げて部屋を出ていった。

すると由貴の頭の上からクスクスと押し殺す笑いが聞こえてきた。上を見ると千都世が逆さになり笑っていた。


「どうしたの?」


『ふふ、あんなに嫌がってた割には人を使う事に慣れたわね』


「そんなつもりは無いわよ。ただ、私を信じて付いて来てくれる人に何かしてあげたいと思ってるだけよ。今の私が出来るのは、これくらいだから」


『それが出来ない人もいるのだから、もう少し自分を誇りなさい。分からない事が有れば私も助けてあげるから』


「ありがとう。頼りにしているわ」


任せなさいと言って千都世は由貴を後ろから抱きしめた。少し気恥ずかしい気持ちもあったが、子供の頃はこうやって愛情を貰った事は無かったので、心地よい気分のままこの日は寝てしまった。


『おやすみ、由貴』



C国スパイ「これで我々を擁護するアル!」


悪徳コメンテーター「よっしゃあ!任せとけや!」


千都世「<●> <●>」パシャ


スパイ&悪徳「何故か寒気がする」ブルル

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