其の一五
作者の小話其の2
歩いている時にふと何かが目の前を横切るな〜と思い顔を上げると、目の前を歩いてる人のズボンの腰辺りからトイレットペーパーがヒラヒラと出ていた。
20歳くらいの女性で、言うべきか言わないべきかで、ものすごく悩んだ。
由貴「え?続きは?」
あれから半月後。田畑からはなんの音沙汰も無く。
平穏に普通に暮らしていたが、昨日遊びに来た茜達からこんな事を言われた。
「そう言えば、由貴ちゃんって今高校行っとるん?」
茜がお菓子を食べながら思い付きで由貴に聞いた。
他の2人も興味津々で由貴の顔を見る。
「いえ、私は中卒ですよ」
「へー、そうなん。なんかお嬢様学校とか行ってんのか思たわ。ほな仕事してるん?」
言われてみれば確かに。昔は除霊の依頼や、十二天将からの仕事が有ったが今は無い。
「いえ、昔は御子神家に仕事の依頼がきていたんですが、両親が死んでからはきていませんね」
「ほな今ニートか?」
「にーと?」
そこで、黙って話を聞いていたアニメ好きの奈美に衝撃が走る。この展開は漫画やラノベでよく見た光景だと。奈美は若干の震え声である質問をした。
「な、なあ由貴ちゃん。お小遣いとか貰っとる?」
「いえ、産まれてから一度も貰ってませんよ」
「そ、そうかぁ。いやウチの中では働く必要も無いぐらいお金が有り余っとるんかと思てな」
流石にそれは無いだろうとツッコミを入れられながらも、奈美は少しガッカリしたような安心したような顔をしていた。
すると襖の外から義彦から声がかかり、茜達に断ってからよ義彦を部屋に入れた。
「お嬢、お話が…と、お友達が居ましたか。また改めます」
「いえ、構いませんよ。どうしました?」
「そうですか。まぁやましい話でも無いので」
義彦が由貴に報告した内容はこうだ。
俺達を見ていた他の組の奴等が組を抜けて真っ当な仕事がしたいで雇って欲しいとの打診があった。
弁護士事務所の方もお陰様で大盛況なので、雇う許可が欲しいのとこと。
その報告に由貴は困った顔で義彦に言った。
「私に許可なんか取らなくても、義彦の判断で決めて良いのですよ?」
「いえ、そうはいきません。やはり会長であるお嬢に一言報告しておかないと」
どれだけ言っても義彦は頑なに私を会長としてあるべきだと言い、他の部下も同じで、今では少し諦めている。
「会長になったつもりもありませんが、兎に角、経営関係は一任します。千都世にも後で新しく入る人達を見てもらうので安心して下さい」
「本当ですか!?いや〜面接はお嬢と千都世の姉さんに見てもらえれば安心ですぜ!それじゃあこれで失礼します。おっといけね、忘れるところでした」
そう言って義彦は今月の分ですとアタッシュケースを置いて、頭を下げてから部屋を出ていった。
茜達はさっきの話と由貴の前に置かれたアタッシュケースが気になるが、家庭の事を気安く聞く事も出来ず、何とか違う話題を考えていたが、奈美には関係無かったようで。
「由貴ちゃん、会長って何?後そのゴツいカバンも何なん?」
「「奈美ぃーー!!」」
叫ぶ2人だが、そこは女子大生。何だかんだで気にはなって、由貴を見ていた。
由貴は溜め息を吐き、別に隠す事でも無い判断して話し始めた。
会長の件は義彦が勝手に決めた事だと。
アタッシュケースも義彦に要らないと言っても勝手に置いていくのだと。
「はえ〜。なあ由貴ちゃんカバンの中身って見てええ?」
「ちょい奈美!幾ら何でも図々しいで」
「せやで」
「でも気になるやん!ホンマは2人も気になっとるんやろ!?」
「「うぐ、それは…」」
何だか小さな、本当に小さな争いが起きかけているので、たかが鞄の中身ぐらい見せても構わないと思っていたので、3人の間に入り、見ても良いと許可を出した。奈美はラッキーと鞄を持って机に起き、その後ろでは茜達が由貴にゴメンなと謝りながらも少し楽しそうにしていた。
「それではオープン!」
奈美の楽しそうな声で開かれたアタッシュケース。
その中身見た瞬間。3人は固まり、傍目からは息すら止まっているように見えた。
先に復帰した茜が周りを見て、由貴を見た。
「これ、ドッキリやろ?モンタリングやろ?」
「ドッキリ、ですか?」
「いやいや、流石にこのお金は偽物やろ〜。幾ら何でも騙されへんで」
ドッキリと思っている茜は笑いながら奈美と沙織にいつまでビックリしたんねん。と喋りかけ2人の意識が戻ってくると、今では3人で笑い、奈美は札束を持って由貴に冗談キツイと由貴に絡んでいたが、そこは由貴クオリティ。
「嘘じゃありませんよ。アタッシュケースの大きさと入っている感じから言って、1000万ぐらいですかね?」
そこ言葉に3人はまたしても固まり、奈美は持っている札束を震える手でケースにしまい蓋を閉じた。
「もうウチ由貴ちゃんが怖いわ…」
「リアル金持ちニート」
「勝ち組すぎる」
茜達から何とも言えない感情で涙を流す光景に、由貴は、すいませんと謝る事しか出来なかった。
そして最後に奈美からは少しは働いて1000万の価値を分かって欲しいとバイトを紹介された。
♢
「と言うわけでバイトをしたいのですが」
由貴は義彦に相談していた。本当はする必要は無いのだが、前に勝手に居なくなっていると街中探され、帰ってきた時に心配しましたと義彦と他の部下に号泣されて、以来は一言声を掛けてから行動するようになった。
「話は大体分かりました。しかしながら言わせて頂きますが、普通のバイトはお嬢には無理かと…」
「しかしやって見なければ分かりません」
「お嬢の気持ち堅いと…分かりました!お嬢の成長の為、この義彦!精一杯サポートさせて頂きます!」
こうして由貴の初めてのバイト経験がスタートした。
先ずは履歴書から始まったが由貴は達筆で義彦からも文句無しと太鼓判を押された。
面接練習でもヤクザや幽霊を相手にしてきただけはあって堂々たるPRにいつの間にか来ていた部下達から拍手が起きた。
「何ですか、言う事なんて最初から有りませんぜ。これなら何処に出ても恥ずかしく有りません」
「ありがとう、義彦。皆んなも応援ありがとう」
そして服を正してから元ヤクザ5人組が服装のチェックをして問題なしと判断。
家を出る時には義彦が火打石を叩き、全員で送り出した。
そして今回の面接現場に到着した。某有名大型チェーン店のコンビニエンスストア【シックストゥエルブ】
面接を受けるため、入り口を潜ると店員から元気な声で、いらっしゃいませー!と挨拶をされた。
由貴は活気溢れる良い職場と心で思いながら店員に面接を受けにきた者だと伝え、奥の部屋へと案内された。すると40歳後半の男の人が入ってきて机を挟んで由貴の前に座る。
コンビニ店長の男、一郎は店の従業員から少し変わった人が面接来たと聞いていた。しかし長年面接官として仕事をしていたので変わった奴の1人や2人、どうって事ないと思いドアを開けると、そこに居たのは高価そうな着物姿の女の子だった。
「そ、それじゃあ履歴書を貰えるかな?」
「はい」
戸惑いはしたものの、一々反応していては駄目だと思い履歴書に目を向ける。そこに書かれていた内容は一部普通だった。一部は。
(何だこれは…)
それは由貴が達筆過ぎて素人が見るとミミズが這ったような字にしか見えず、全く読めなかった。
しかしこのままでは面接は進まないので恥を忍んで書いてある事を聞くと、やっぱり意味が分からなかった。その内容はと言うと。
職歴
十二天将、第3席。六合の由貴。
弁護士事務所会長。
由貴は初めて履歴書を書くので義彦のアドバイス通りに書いた結果がこれである。
(十二天将?て何だ?それより弁護士事務所の会長!?何でウチ来たの!?)
大丈夫落ち着け、落ち着くんだ私。何時もの様に志望動機も聞いた上で人柄を判断するんだ。
「えっと、ウチを選んだ志望動機を教えてもらえるかな?」
「はい。私は友人にお金の価値が余り分かっていないと言われ、先ずはバイトをする様にと此処を紹介されました」
「へぇ〜そうなんだ」(誰だこんな娘を紹介したやつは!?)
何となくだが、この娘は大金持ちだ。それもドが付く方の。無理だよ、幾ら何でも私には荷が重過ぎる。
「うん。よく分かったよ。後日合否の連絡をさせてもらうよ」
「分かりました。本日はありがとうございました。失礼します」
コンビニ店長はこの日程疲れた事は無く、仕事が終わり、家に帰ると浴びる程酒を呑んでから眠りに就く。すると夢の中で死んだお爺ちゃんがとその背後に見知らぬ黒い着物を着た綺麗な女の人が立って出てきた。
『一郎や。今日来た女の子を不合格にしてはならん。すれば必ず災いが起きるであろう』
「えっ?何で?」
俺の疑問にお爺ちゃんの背後の女の人がお爺ちゃんの肩に手を置く。するとお爺ちゃんは半狂乱になり、俺に叫んだ。
『いいから!朝一に合格の連絡をするんじゃあ!』
「わ、分かったよ。お爺ちゃん」
夢の中のお爺ちゃんは何故か焦っており、仕切りに背後の女の人を気にしていた。
俺が分かったと言うとお爺ちゃんは達者でなと言って俺から離れて消えていく。
目覚ましが鳴る前に目が覚め、夢かと思ったが、何故かお爺ちゃんの言葉が頭から離れず、結局昨日には面接に来た子に連絡して、合格と言った。
「おめでとうございます!お嬢!」
「「「おめでとうございます!」」」
義彦達はこの後お祝いだと言って、いつの間にか茜達から聞いていた電話番号に電話して、呼び高級レストランに招待していた。喜んだはいたが奈美だけは
「違う、そうじゃない」
とブツブツ言っていた。後に由貴が働くコンビニは想像も付かない事態に巻き込まれていくのは誰も知らない。
お爺ちゃん「これで勘弁してくれませんか?」
モンペ千都世「お前の孫次第だなあ」
お爺ちゃん「一郎〜!頼む〜!儂の平穏はお前にかかっとるぞ〜!」




