其の一四(回想編)
由貴の過去と十二天将の事に触れます。
回想編という事で、作者の過去の小話を一つ。
ブランコに乗って、スピードが最高時に勢い良くジャンプして、ブランコ前に有る策に股間を強打してからブランコ嫌いになりました。
由貴「誰得情報だよ」
これは私が10歳の時の話し。
あの頃の私を思い返すと、傀儡という言葉がとても似合う。言われるがままに行動し、それをオカシイとは思わなかった。子供心に大人になっても私は変わらないのだろうと思っていた。
毎日の様に封印されていた千都世に祝詞を唱え、松に報告し、味のしないご飯を食べて、先祖に経を唱えて眠る。
コレが私の日常で、一生なのだと微塵も疑ってなかった。
今に思えば私の世界はとても狭かったし、狭いと言うことすら知らなかったんだろうなと他人事のように思い出す。
「何の為に生きてるんだろう…」
あの時、私の日常が、ほんの少し変わる1日前。
眠りに入る瞬間、自分の口からそんな言葉が漏れ出し、訳が分からない笑いが出た。
今の境遇に対してだろうか?それとも空っぽの自分を笑ったのだろうか?結局答えは出ないまま眠りに就き、私は何時もの日常に戻った。
「由貴様、松様がお呼びです。至急客間にいらして下さい」
しかし今日の朝は違った。女中に早く起きるように急かされ、客間に通された。
「おお!漸く来たか、申し訳ない弥勒様。何分まだ子供でして…」
「構わないよ。私が突然来たんだ。何時間だろうと待つさ」
「流石は弥勒様!寛大なお心をお持ちですじゃ!」
そこには弥勒と言われる男が私を待っていた。
その人は二十代前半くらいで、若さの中に何処か高貴な雰囲気持ち、後ろで結ばれた髪は艶やかな黒。
そして男ながら綺麗な顔をしていた。
最初はいつもの依頼で来た人かなと思ったが、直ぐに違うと分かった。あの松や周りの老人達はその男に機嫌をとるように腰を低くして、男を褒め称え、必死にご機嫌とりをしていた。
「遅れて申し訳ありません、お婆様」
「馬鹿者めが!呼ばれたのなら直ぐに来ぬか!恐れ多くも弥勒様を待たせるとわ…如何様に責任を取るつもりじゃ!」
そんな無茶な。だがこれ言うと余計な怒りを買うし、黙って頭を下げて、弥勒と言う男に許しを乞うしか無いわよね。
「申し訳ありません、弥勒様」
「そうのようなーーー」
「まぁ良いではありませんか。私は気にしておりません。それに」
松は更に由貴を追い詰めようと片膝を立て、今にも飛びかかろうとしていた所を弥勒によって止められ、平伏する様に座り直した。
松が座ると弥勒は由貴の顔をジッと見つめ、子供の様に屈託のない笑顔を見せてた。
「やはり私の目に狂いは無かった。これ程の力を持っているとはね。松さん、十二天将が1人。第1席、騰蛇の弥勒が由貴さんの十二天将入りを認めます」
「おお!由貴が十二天将にですか!?」
「何と!?これは御子神家始まって以来の快挙ですぞ!松様!」
弥勒の言葉に松や取巻きの老人達が驚き騒ぎ出す。
当の由貴本人は十二天将の事は何一つ知らず、何の事だろう思いながら頭を下げて続けていた。
「君は十二天将の事は知っているかい?」
「いえ、浅学の身ゆえ、存じておりません」
「なら軽く説明しておこうか。先ずはーーー」
説明は有り難いが、一々松や取巻きが騒ぐから説明時間がかなり掛かった。
弥勒の説明を要約するとこうだ。
十二天将は、かつて安倍晴明が使用した式神が由来で、現在では日本から選ばれた12人の霊能力者で構成されている。
彼らの活動は主に要人の警護と、スパイの発見、そして霊が関係している事件の解決。
一般人には知られていないが、この科学の時代でも呪いは存在する。今でも国内や海外から日本、又は個人に呪いによる攻撃を受けたりする。
その際に呪い返しを行い、逆に呪いを飛ばした本人を呪い殺したりと影で日本を守っている。
政治家の一部はこの事を知っており、最高機密で守られ、十二天将に高い地位と莫大な資金を提供している。
「以上で説明は終わりだけど、何か質問はあるかい?」
「問題は有りませんが、何故私なのでしょうか?」
「弥勒様の決定に逆らうのか!?」
「まぁまぁ。由貴さん、君はまだ幼い。だから観の目がまだ開いていない。だけどその内分かるよ。君には大いなる力がある。いつかその力を貸してもらうよ」
弥勒はそう言って屋敷から出ていった。
松達が弥勒の見送りが終わると、この日は宴だと言い、松達は宴会騒ぎで呑み潰れていた。
後日。式神の鳩から手紙が届き、そこには表に【十二天将】と文字が彫られた小さな純金の札。その裏に【六合】の二つ名と【第3席】の位が綴られていた。
「これで御子神家は安泰じゃあ!ひゃひゃひゃ!」
これに松達は喜び、またしても宴会を開いていた。
それからと言うものの、偶に有る除霊依頼の他に呪い返しや妖怪退治など色々した。
その時に他の十二天将と共同で仕事をする事もあり、静虎と他の十二天将と顔見知りになった。
だが誰も彼もが一癖も二癖もある人達で、10歳で十二天将に入った由貴に対して嫌がらせをする者が居たり、由貴が十二天将に入った事で外された者が逆恨みで呪いを飛ばして来たりと大変だった。
だが悪い事ばかりでも無かった。仕事をしている間は自由が効くし、何より知識を深めれたのは良かった。
最初は私の実力を知りたかったのか、初めに比べると仕事は少なくなり、面倒だと思ったら千都世のせいにしたりと悪知恵も使った。
♢
この頃からだろうか?私がある疑問を持つ様になったのは。
「うわ、御子神じゃん。アイツの家って変な宗教やってんだろ?」
「あ〜、聞いた事あるぜ。山に封印されている悪霊を監視しているとか」
仕事を続け早数年。
私は中学生になった。小学生の頃は、そこまで酷くなかったが、中学生になると虐めはエスカレートしていき、虐めのメンバーが友達に言いふらしたりと、いつしか大人を含め由貴を皆んなが避ける様になった。
靴を隠されるのはザラで、鞄や教科書がボロボロになってゴミ箱に入れられていたりと、陰湿な虐めが続いた。
(何でこんな人達を守っているんだろ…)
由貴は松に言われた御子神家の役目を思い出す。
人々を呪い、殺し回った悪霊が二度と出てこない様にし、村人を守るのが安倍晴明様から与えられた崇高な使命なのだと。
だけど今は、その悪霊を監視しているのは私で、他の皆んなは酒や食べ物を呑み食いして、何か有れば私の責任だと怒鳴るばかり。守っている村人からは蔑まれる毎日。正直言って私は精神的にキテいた。
だからあの日。私は千都世に初めて喋りかけたのだろう。
『…下らない」
「!?」
たぶん千都世は馬鹿にしたつもりで言ったのだろう。
千都世の境遇は千都世から聞いたので知っている。だから当時の私の愚痴なんて本当に下らないと思って言ったんだろう。
最近になって千都世にどういうつもりで言ったのか聞いてみたが。
『なんか恥ずかしいから言うのは嫌よ』
と言って教えてくれない。だけどどうでも良い。
返事をしてくれたのが単純に嬉しかったからだ。
そこから千都世も心を開いてくれたのかよく話をする様にり、私は人生で初めて思った。人と話すのがこんなに楽しいなんて、と。
だけどそんな時間は長く続かなかった。
悪霊が暴れていると言う嘘に、松はある恐怖を覚えてしまった。封印が解けて悪霊が居なくなれば、金はどうなる?由貴に何あれば十二天将の座が危うい。
松が密かに監視を出し、その時に千都世と話しているところを見られた。
「全く、とんだ恥晒しだ。由貴。お前には暫く独房に入ってもらうよ」
独房の中では松の手下の坊主達が冷水を浴びせたり、警策で叩いたり、大声で叫ぶ様に経を読み聞かせたりと酷いものだった。
痛くて泣いたり、冷水で身体は震え、胃の中を吐き出したりと、まるで拷問だ。
ある程度すると漸く坊主達は手を止め帰っていく。
痛む身体を摩りながら床に寝転び、小さな窓から入る月明かり眺めていた。
辛く理不尽な事だが、不思議とコレが終わればまた千都世と会えると思うと乗り切れそうな気持ちで一杯だった。
「…あっ。初めて夜更かししたなぁ…」
そう言って気絶するように由貴は眠った。
それから数日後の事。千都世が暴れて手がつけられなくなった松は由貴を呼び出し、元の生活に戻った。
それから色々と有ったが上手くやれていた。
元クラスメイトが来るまでは。
自分勝手な言い分で、どれだけ危険な事をしているのか分かっていない。それにスクールカーストの1番下にいる私の話なんて誰も耳を貸さなかった。
それどころか私の態度が気に入らないと逆ギレして、私を辱めようとしていたのに誰一人として止めに入る人は居なかった。
たぶん、その時。私はもう壊れたんだと思う。
「本当、馬鹿みたい…」
封印の札と共に、私の何かを剥がした。
「もう、好きに生きて良いよね?千都世」
その後初めて千都世と出会い、初めて人を殺した。
その後、今だに私を利用しようとしていた松も、取巻きの老害達も、私を叩いた坊主達も、皆んな皆んな殺した。私の心は罪悪感より、晴れ晴れした気分だった。解放と言うべきか?自分に巻き付いた鎖が切れて自由になった。
そして千都世は言ってくれた。
『ねえ由貴、貴女やりたい事は無いの?無ければそれを探す旅をしましょうか?』
素敵な響きだった。私のやりたい事を探す旅。
全ての楔を壊し、ゼロになった私の人生は此処からスタートした。
茜「最近暑すぎひん?」
奈美「分かりみ」
沙織「こういう時は由貴ちゃんに怖い話ししてもらおう」
由貴「任せて!これは私が仕事で体験した話しでーーー」ほ◯怖BGM
千都世「演出は私に任せて!」ゴゴゴ
茜、奈美、沙織「「「」」」チーン
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