其の一三
ちょいと長め。
日間ローファンタジーでランクインしました!
テンション上がります✌︎('ω')✌︎
あの後、車で話すのはなんだと思い、安藤を屋敷に招待する。
突然姿を消したと思ったら、帰ってきた由貴のただならぬ雰囲気に義彦達は客間に話の場を設けて由貴の後ろで何があっても動けるように準備していた。
「それでは聞きましょうか」
「はい。先ずは監視の件、申し訳ありません。あの村での出来事を考えると迂闊に近づくのは危険と判断したもので」
役人らし喋り方に、政府の下にいるだけあって、後ろにいる強面の義彦達の事は慣れているようだった。
それに、村に金を渡していたのはコイツかと、思い。更に村で起きた事も知っている。
もしかすると私を捕まえに来たのかな?と余裕な態度で構えて、男がどうするかを見極めるために話の続きを目で催促する。
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男は初めに、村からの定期連絡がこなくなり、不審に思い、村を訪れたそうだ。
すると到着してから誰一人として人と会わず、村には人っ子一人誰もいない。
「…人が全く居ない。どうなってる?」
変だとは思いながらも御子神家に向かう途中で例の悪霊が封印されている山の付近で大量の変死体を発見した。
直ぐ様調査が行われ、死因は何か強い力で身体を捻じ曲げられて死んだものと判断された。
「安藤さん。俺は怖えよ」
この事件を担当した検死官はこんなの見たことないと震えていたそうだ。
続いて例の封印の間に行くと扉は開かれ、中には行方不明の卒業生が大勢変死体として発見された。
死因は皆ショック死だったが、誰も彼もが恐ろしい形相で死んでいた。
更に調査を続けると村では原因不明の高熱に魘される者や、突然死などが相次いで起こり、残った村人が言うには祟りだと口を揃えて言っていた。
そこで、全員が変死体で発見されたのだが1人だけ行方が分からない人物がいた。
それが由貴の事で直ぐに調査が行われ、暫くしてから偶然にもSNSで由貴の事を発見した。
以来ずっと調査を続けていたそうだ。
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男は事の顛末を話し終えると真っ直ぐに由貴を見つめ、核心に迫ろうとした。
「御子神由貴さん。単刀直入にお聞きします。今、悪霊は貴女と共に居るのですか?」
「それを聞いてどうするのですか?」
「貴女の怒りを買いたく無いので正直に言います。あの悪霊は日本にとって危険です。出来れば再度、悪霊を封印してもらいたいのです。もしそれが無理なら貴女を拘束しろと上から命令を受けています」
安藤は“拘束”に脅しの声色を混ぜながら、由貴の反応を見る。しかし最初から態度は変わらず平然としており、つい最近まで本当に中学生だったのかと感心してしまった。
「考えるまでもありません。私は千都世を封印するつもりも捕らえられるつもりもない」
安藤の気持ちも知らず、由貴は相手の目を真っ直ぐに見つめ、少しも考える間もなく言い切った。
その言葉に安藤は立ち上がり、腰から手錠を取り出し、致し方無しと由貴を逮捕しようと近づく。
「では、申し訳ありませんが、拘束ーーー」
安藤の言葉が言い終わる前に、家全体が揺れ始める。
空気は質量を持ったかの様に重くのしかかり、堪らず膝をついた。光すら捻じ曲げそうな空間に、身体は意思に反して震えが止まらない。
ふと、視界の端に白い足袋が見え、何とかしてソレを確認する。目の前に居たのは黒い着物に鮮血のような真紅の目に、長い髪の女。女と目があった瞬間に命を握られる感触が胸の内から感じた。
【やってみなさい。その前に貴方達皆んな呪い殺してあげるわ】
地獄の底から鬼が語りかけたかの様な錯覚を覚え、安藤は、まともに息が出来ていない。
永遠とも思える邪悪な圧に顔は青白く、唇は紫色になり今にも死にそうになっていた。
「カッ…息が…」
「千都世、死んでしまうわ」
由貴がそう言うと嘘の様に圧が消え去り、安藤と義彦達は手を付いて息を荒くしていた。
「ご覧の通り、千都世は私に危害を加えようとする者には苛烈になりますが、それ以外は優しい人なんですよ」
「あ、悪霊を手懐けたのか?」
安藤は何とか息を整え、かの有名な安倍晴明が倒せず、封印に至った悪霊を、たった一言で言う事を聞かせた由貴に対して、畏怖の念を感じずにはいられなかった。
「悪霊ではなく、千都世と言います。それに手懐けたなんて言い方は好きではありません。強いて言うなら家族です」
由貴から悪霊は家族と言われ、もはや自分の判断ではどうする事も出来ないと思った。
「…一度、この話は持ち帰ってもよろしいでしょうか?悪…千都世様は人類に悪影響を与える者では無いので有れば私が上を説得してみせます」
「それは保証しますが、失敗すれば?」
「しません。そうなればお終いですから、文字通り死にものぐるいで、やり遂げます」
「そう。では期待してますよ」
「ありがとうございます。それでは本日は失礼します」
床に手をつき頭を下げて屋敷を後にするのを義彦達に見送らせ、今日は色々あったせいか、眠くなってきたので風呂に入った後、寝間着に着替えて直ぐに寝た。
♢
翌日。昨日の男、安藤は目の下にクマを作って、朝早くから屋敷に来ていた。客間に案内した後、昨日の件について話し始めた。
「昨日、上と話し合った結果なんですが、口頭では判断が難しいとの事でして。由貴さんには一度、上と話し合ってもらいたいのですが、よろしいでしょうか?」
「構いませんよ。どちらで会われますか?」
これには千都世の無害認定が決まるかどうかの大事な話だ。何処であろうと向かうつもりだったが、どうやら杞憂なようだ。
「既に屋敷の前に来ておりますが、宜しければ今からでも。都合が悪くければ出直しますので」
昨日の事が効いたのか、今日はやけに下手に出る。
流石にクマが出来るまで調整してくれたんだ。
由貴は今からで結構ですよと言うと、安藤は顔には出さないが、どこかホッとしていた。
直ぐに義彦に頼み、客間に案内してもらった。
現れたのは初老に手が届きそうで、大黒様によく似た男。そして、後ろには更に年老いた老人が入ってきた。
(最初の男はともかく、あの男は…)
大黒似の男は人の良さそうな笑顔で会釈してから席に着く。その隣には、後に入った男が座り、由貴に一瞥をくれるも直ぐに視線を逸らし、由貴の後ろにいた千都世を睨むように見ていた。
「初めまして。御子神 由貴と申します。本日は遠路はるばるのお越し、ありがとうございます」
「いやはや。突然のお邪魔にこの様な丁寧な対応痛み入ります。お聞きしていると思いますが、私が安藤の上司、田畑 明夫と言います。それからーーー」
田畑は横に控える男を紹介しようとしたところ、男が千都世から視線を逸らさず手で制し、口を開いた。
「田畑殿。紹介は不要ですぞ。そこの由貴とは面識がありますゆえ」
「何と。顔見知りでしたか、いや〜世間は狭いですな」
田畑は愛想笑いの様にワザとらしく笑う。しかしその笑いも、男の言葉で直ぐに消え失せた。
「田畑殿は知らなくても無理はない。ここに居る由貴は十二天将が1人。六合の由貴だ」
その言葉に田畑と安藤は今までワザとらしい愛想笑いやポーカフェイスを崩さなかったが、今ではその顔は驚きに満ちていた。
「お久しぶりでございます。白虎の静虎様」
「ふん。安藤殿から、少女が、かの大怨霊を手懐けていると聞いた時は何を馬鹿な事を、と思ったものだが、実際に目にするとは思わなんだわ」
『へぇ。私が見えるとはねぇ』
千都世は話の行方を見守るつもりだったが、先程からずっと、静虎からの猛烈なアプローチに少しの邪気で返事をする。
その邪気と言葉に田畑と安藤の身体は一瞬ビクつき冷や汗を浮かべていた。しかし静虎だけは眉一つ動かさずに千都世を睨み続けていた。
「ふん。胸糞悪い声を出しよって。しかし…言い伝えよりも随分と大した事は無いな」
『へぇ…』
実力者同士の為、多少の脅しではビクともしない。
その為、互いに少しずつだが、殺気と邪気のぶつけ合いでエスカレートしていき、一触即発の雰囲気が漂い、緊張が走る。
その光景に由貴は手で千都世を制し、静虎に怒の気を飛ばした。
「静虎様。本日は話し合いに来たと伺っておりますが?あまり、その様な挑発は辞めていただきたい」
千都世は後ろで浮かびながら、ベーと舌を出して挑発していたが、感が良いのか由貴がバッ!と振り向いた。
「千都世も!こんな所で本気だしたら皆んな死んじゃうでしょ」
『ごめんなさい』
千都世は少し調子に乗った上、由貴から叱られ、シュンと項垂れていた。
一方で静虎は、由貴から放たれた怒気に一瞬だが、臆してしまった自分に腹が立った。
そして、これが僅か10歳で十二天将の三席に抜擢された実力かと嫉妬した。
「…貴様の方が余程化物よな」
「褒め言葉として受け取っておきます」
そう言って互いに黙り込み、田畑がハッと意識を戻し、再び嘘臭い愛想笑いをして謝罪の言葉から話し合いに戻った。
「いやはや。お二人がお知り合いだったとは、それも十二天将ときた。本当はもっと話をしたかったのですが、静虎さん。どうでしたか?」
「気は許せんが…問題なかろう。六合の、は化物をきちんと制御出来ておる」
静虎の少し角が立つ様な言い方に、気にはしたが一々突っかかっていては話が進まないので我慢していた。話し合いで危険性を判断する予定だったが、静虎と千都世を制する事が出来ると分かり、千都世の事は由貴が監視するなら今まで通りで良いとの事。
問題は由貴の方だが。
「由貴さんには今まで通り、十二天将に身を置いてもらいます。話を聞く限りあの村には問題が有り、殺されても文句は言えませんが…」
田畑言い淀んだが、十二天将の1人。
それも三席ならばと、今の政府が思っている事を言うべきだと思った。政府が考えている事。
それは千都世を制する事が出来る由貴に恐怖している事だ。十二天将と、三大怨霊にも引けを取らない力を持つ悪霊。その気になれば気づかれずに大勢の人間を殺せる力を恐れていた。
現に村の人々は大勢死んでいる。他にも薬の売人も確認は出来ていないが、由貴と千都世が絡んでいるのは間違いない。
「貴方は殺し過ぎた、だから皆恐ろしいのです。出来れば政府の下に付き、殺しを辞めてもらいたい」
沈黙が部屋を包み込む中で、由貴は考えた。
当然の事だと。人の中に紛れ、怒りを買えば無差別に殺されるかもしれない。そんな危険人物を政府が放っておく筈がない。
私自身は悪人のみしか狙わないつもりでも他の人はそうは思わない。
だけど。だからといって、人に言われるがままの何も出来ない昔には戻りたくない。
それに、人に害を与えるような悪党を黙って見ているつもりも無い。
「私は…今やっている事は辞めるつもりは有りません。もし悪を見て見ぬ振りをすれば、それによって人が死ねば、結局は見殺しになる。だから…辞めません。もし邪魔をするのであれば、全力で抵抗します」
凄くワガママを言っているだろう。矛盾だらけだろう。だけど人の世は矛盾で出来ている。
綺麗事をいくら並べようが、戦争は無くならない。
とある大統領は核を全て破棄すると公言し、ノーベル賞も貰ったが、結局はしなかった。
アジアある国では史実を偽造して自分の領土と叫ぶ国もある。
そんな嘘や欺瞞の世界の中で私は、そんな中でも自分の正義を信じて進みたい。
例えワガママでも、手の届く範囲の救える者は救うし、罰を与える必要があれば迷わず下す。
「そうですか…」
田畑は悲しそうな顔で由貴を見つめた。
仕事上、政府の裏側は幾度と無く見てきた。
昔は日本をより良く変えたいと思い、政治に関わる仕事をしていたが、政治の厳しさにぶち当たり、自分の甘い考えが吹き飛んだ。理想だけでは何も出来ない。
だが今は由貴の理想がとても眩しい。
「分かりました。上には上手い事言っておきます」
「田畑さん!?良いんですか!?バレたらクビどころでは済みませんよ!」
沈黙を守っていた安藤が田畑の言葉に驚きの声を上げる。由貴には知らされていないが政府からの命令は由貴を政治利用出来るなら引き込み、無理ならば他国に渡る前に始末するように言われていた。
由貴が此方に加わらず、悪党とは言え殺人も辞めないなら、殺すしか選択肢は無い筈だった。
「構わんよ。俺は初めからあんな命令気に食わなかったんだよ。国の為に女子供を殺せって言うような国なんかは滅んだ方がマシだよ。外の部隊も撤収させろ」
「…はぁ〜。バレたら俺もヤバイんですからね」
「お前ならノってくれると思ったぜ」
田畑が嘘臭い愛想笑いでは無く本当に可笑しそうに笑った。安藤も由貴の力は恐ろしかったが、田畑同様に政府の命令は気に食わなかった。
直ぐに携帯で撤収命令を出し、その後は2人揃ってお堅い雰囲気を崩して由貴喋りかける。
「と、言うわけです。俺の考えでは由貴さんと千都世さんは自由にさせて方が国にとってプラスになると思います。だから…好きにおやんなさいな」
「由貴さん。私達も危ない橋を渡るんですから、その内此方のお願いも聞いてくださいね。政府の中にも死んだ方がマシって奴は居ますからね〜」
「えっと、あの、その、分かりました?」
先程のシリアスな雰囲気は旅に出て、突然フレンドリーになった2人に困惑して、つい生返事を返してしまった。しかしそれが仇となった、
「よっしゃ!なら近い内にスパイの情報とか色々送るからよ。頼むぜ!それじゃあまた」
「データは由貴さんのスマホに送るますのでよろしくお願いしますね。失礼します。帰りますよ静虎さん」
「お、おう」
流石は政府の下で働いてるだけはあり、あっという間に言質を取られ、考える間も無く仕事を頼まれ、嵐のように帰ってしまった。
「…結局どう言うことなの??」
『上手い事丸められたわね』
「ですがお嬢。これでお嬢の事は誰にも邪魔はされませんぜ。ある程度仕事も受けてやれば彼方さんも邪魔者が消えて、立ち回りもしやすくなると思います」
由貴は正座を崩して、そのまま後ろに倒れ込み、天井を見つめた。
「手の届く範囲増えそうだな〜」
田畑が言ったスパイの事も気になるが、依頼で悪党の情報を聞かされた時点で放っておく事は、由貴の性格上無理な事だった。
Qよく由貴に協力しようと思いましたね?
田畑「」水戸黄門ファン
安藤「」暴れん坊大将ファン
田畑&安藤「由貴さんの純粋な気持ちに心打たれて…」




