【飛べない翼−3】
あれから約3時間。
あの後5回程似たような事が繰り返され、其の光景はちょっとしたカオスな感じであった。
「······ふぅ、朝から酷い目に遭ったよ」
「起きねぇ手前が悪い。」
須賀さんは反省の意が全く無い様で。
しかし、此れはいつもの事らしく、黒瀬さんは呆れ顔で新しい煙草に火をつけている。
「ふぁぁ······ぁ」
反省の意は無い様で。
「·······いつまでもボサっとしてんじゃねぇ。」
「えぇー、だって眠いんだもん。」
·····まだ眠いようなら、もう2,3発蹴りでも喰らえばいいのではないだろうか。
「其れにしても、何で今日はこんなに早いの?まだ9時半ぐらいだよ?」
十分遅いと思うが。
「今日は『アイツ』が来るから、早めに起きるように言ったろうが······」
「?」
『アイツ』·····?
「げっ·······」
黒瀬さんの一言に、須賀さんの表情が少し苦い顔をする。
『アイツ』とは、誰の事だろうか。
須賀さんの反応からして、余り良い予感はしないが、どうなのだろう?
危ない人なのだろうか。
「····『アイツ』とは?」
「あぁ、此の街に居る人だよ。」
此の街の人、か。
いったいどんな人なのだろう?
「······『桐月 ヘレナ』推定20代後半。」
「悪い人ではないけど、うん。まぁそんな感じだよ·······」
其の『アイツ』について考えていると、須賀さんと黒瀬さんが言葉を付け足した。
·····そして何故か、須賀さんが猛烈に目を泳がせている。
『桐月 ヘレナ』さんとやらは、そんなにヤバい人なのだろうか?
黒瀬さんすらも少し疲れたような表情をしている。
何だか地味に不安だ。
「ちなみに、何時に来るって?」
「確か、10時の筈d·····」
バァァンッ!
「御機嫌よう!」
「!!」
吃驚した。
黒瀬さんの言葉を遮る様に扉の開く音がしたと思うと、外から赤い人影が飛び込んで来た。
「ご、御機嫌よう?」
「········はぁ」
其の女性が飛び込んで来た瞬間、須賀さんは謎の汗をかきまくり、黒瀬さんは僅かに目を細めた。
どうやら、2人は本能的に此の女性を苦手としているようだ。
其の女性···『桐月 ヘレナ』さんは、ライトブラウンの髪に露出のある赤いパーティドレスと、かなり派手な出で立ち。
しかも、色んな意味で勢いがある。
····あぁ、なるほど。
2人があの様な反応を示した理由が、何となく解った気がする。
私も、あまりお近付きになりたくない気がする。