【飛べない翼−2】
コンコンッ
「······失礼します。」
扉を軽くノックして、元はオフィスであったであろう部屋に入る。
壁と床は仮眠室と同じで、デスクとイス数組に、接待用のソファーと、少々雑風景な内装で薄暗い。
「·······早いな。」
黒瀬さんは既に起きていたようで、着ていた外套を脱ぎ煙草から紫煙を燻らせている。
須賀さんはというと······
「zzzzzz·······」
革素材のソファーにて、まだ夢の中だった。
何故か顔にハンカチをかけており、此れまた何故かハンカチの色が桜色。
·······何でよりによって?
まぁ、ハンカチの色などどうでもいいのだけれど。
「·······まだ寝てんのか。おい、起きろ。」
「zzzzzz····」
「おい」
「zzzzzzzzz········」
其れを見た黒瀬さんが、須賀さんを起こそうと声を掛けるが、彼は一向に起きる気配を見せない。
······よくソファーでそんなにも爆睡出来るな。
どうやら彼は、余程眠る事に対して貪欲らしい。
「おい·····!」
数度呼び掛けるも、起きる気配は0。
「·····チッ」
彼は痺れを切らしたのか、煙草の火を消して須賀さんの顔にかかっているハンカチを、奪うように取り去る。
······須賀さん凄い間抜け面。
「zzz·····ハッ!zzzzzz········」
あ、起き····いや、起きてない。
ワザとなのだろうか。
「起きろやクソが。」
ゲシッ…!
「ぐふっ!」
ついに、武力行使に出る黒瀬さん。
腹部に蹴りを喰らい、ソファーでくの字になる須賀さん。
何だか、とてもシュールだ。
「·······痛てて、酷いよぉ貴仁くーん!」
「お前が悪ぃ。」
「そんなぁ····」
自業自得だと思う。
何故、あそこまで眠り続けていられるのだろうか···
実に不思議だ。
やっぱりワザとなのだろうか。
「其れでも限度ってモノがあるよ〜···貴仁君、何だか最近僕の扱い雑じゃない?」
「もとからだ。」
「そんなぁ!」