【拝啓君へ−1】
君と出会ったのは、中学に入って1週間後に通い始めた塾。
何気なく座った席の隣に君がいて、「宜しく」と挨拶したのが始まり。
君もほぼ同じタイミングで入った事もあり、少しずつ話す機会も増えていき、『友人』と呼んでも問題無い程になった。
隣の席に座り、勉学に励む日々は、充実していて、毎週塾が楽しみで仕方なかったのを覚えている。
そしていつの間にか、『友人』としての好意は別の感情に変わっていった。
今迄何とも思わなかった君の全てが、ふとした時に、とても輝いて見える様になり始めたのだ。
少し癖のある長い黒髪も、
青灰色の目も、
黒い髪とは正反対の白い肌も。
全部全部。
何気ない動作すら綺麗に見えて。
····恋心、というヤツなのだろうか?
今迄、色恋沙汰とは無縁の生活だったせいでよく判らないが、きっとそうなのだろう。
だからだろうか。
人とは、色恋に浮かれると、周りが見えなくなる。
其の所為で、彼女の内にある『何か』に気付けなかったのだろうか。
ーーー或る日突然、君は俺の前から姿を消した。
『自殺』したらしい。
遺体は見つかっていないが、自宅を調べたところ身辺整理された跡と、自殺をほのめかす書き置きが発見されたらしい。
近くに居た筈なのに、気付けた筈なのに。
突然だった。
余りにも。
「何で···」
突然すぎる死に、口から零れるのは稚拙な言葉のみ。
胸の奥では、疑問符と重い何かがグルグルと渦巻いていた。
「何故?気付けた筈だ!」と。
唯其れだけが、俺の中に在った。
ーーー俺、『雨宮 昴』は、自分の不注意を永遠に恨み続けるのだろう。
【拝啓君へ】は、全て『雨宮 昴』視点で書きます。