【残桜−4】
[火葬台]
噴水広場の中心に置かれた、白い花のオブジェ。中心には淡い青紫色の焔があり、死穢の溜まったコフィンを燃やす事ができる。
街を舞う灰は、此の火葬台から来ている。
ゆらり、ゆらりと、淡い青紫の焔が、白い石造りの花の上で揺れている。
「·······」
焔は、私の背を超す程燃え上がっているのにも関わらず、熱は全く感じない。
寧ろ、僅かにひんやりとした冷たさを感じる。
そんな不思議な焔の中に、ドス黒くなったコフィンを投げ込む。
「よいしょー」
ドサドサッ……
焔はコフィンを入れても少し大きく揺らめくだけで、普通の火と違ってとても静かだ。
火の粉を散らすこともせず、唯ひたすらコフィンを白い灰に変え続けている。
青紫色の、熱を感じない焔····
『火葬台』とは、とても不思議なモノだ。
まぁ、此処に来てからは逆に不思議じゃないモノに出会う方が難しいが。
「えーい」
ドサドサドサッ……
「·······」
「いやぁ、随分溜め込んだなー。燃やしても燃やしても全然減らないよ····」
火葬台の焔は、いくらコフィンを投げ込んでもすぐにコフィンを飲み込んで、あっという間に白い灰にしてしまう。
まるで、掃除機の様だ。
面白い程どんどん燃える。
「どっこいせー」
「········」
ちょっと楽しいかもしれない。
ハマりそうだ。
足元に白い灰が積もる。
靴越しに感じる灰の感触は、まるで雪の様で心地良くてクセになる。
「やー」
····だが、須賀さんの掛け声に少々イラッとする。
其の掛け声は本当に必要なのか。
もう少し静かにして欲しい。
·····今度からは出来たら1人でやりたいと思う。