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暁弔の末路  作者: 暁雪
【花笑みの教会】
28/34

【残桜−3】


白く細やかな死灰はいが、虚ろな黒い影と、街の間を泳いでいる。

辺りは昼前であるのにも関わらず、夜明けの様に薄暗い。

私は今、そんな街を須賀さんと共に歩いている。

「いやぁ、朝から酷い目に遭った····」

テーブルにぶつけた事で負った彼の後頭部の怪我はいつの間にか治ったらしく、いつもの呑気そうな表情を浮かべている。

片手には、死穢を吸ってドス黒くなったコフィンの詰まった、大きな旅行鞄。

私達は今、火葬台にて死穢コレを処理すべく、膨れ上がった大小2つの鞄を運んでいる。

「大丈夫?重くない?」

「大丈夫です。」

「そっかー、力持ちだね!」

「······」

コフィンの詰まった鞄は、別に大して重くない。

けれど、決して小さいとはいえない鞄を手に街を行き交う黒い影を避けながら前へ進むのは、地味に体力を使う。

外へ出るたびに思うが、彼等はいったい何所どこから涌いてくるのだろうか。

もう少し少なくてもいいと思う。

「·········」

チラリ、と須賀さんの方に目をる。

彼は私の倍はあるであろう鞄を持ちながらも、汗1つかかずに前へと進んでいる。

····どうやったらそんな事が出来るんだ?

須賀さんも、黒瀬さんのように武術を嗜んでいたのだろうか。

そうは見えないが、もしかしたら意外と強いのかもしれない。

そうは見えないが。

傷の治りで思い出したが、今日は黒瀬さんの姿を見ていない。

1人で死穢の除去にでも行ったのだろうか?

「あ、貴仁君?彼は『強制送召キョウセイソウショウ』されて、今現世にいるよ~」

「強制、送召····?」

私の頭に疑問が浮上したのを悟ったかの様に、不意に須賀さんが振り返って言った。

何で分かったのだろうか?

他人ひとの思考を読むのは止めて欲しい。

「『強制送召』っていうのは、定期的に死穢の除去をしなかったり、現世むこうの人に影響を与えてしまう程の変異が起きたりすると、強制的に其処へ飛ばされちゃう事だよ。」

そんな事があるのか。

そういえば、『決まり』の1つに『死穢の除去』っていうのがあったな。

変異が起きた場合は、どの様な基準で送召されるのだろうか?

現世むこうにトバされたのが黒瀬さんだということは、強い順だろうか?

それとも·····?

「後者の変異が起きた場合は、ランダムで送召されるよ~」

ランダム····!

つまり私の様な、未熟者でも送召の可能性は十分にあるという事か。

地味に怖いな。

昨日の二の舞いは正直御免だ。

強制送召される前に、もっと力をつけねば。

「····其れでなんだけどね夜深ちゃん?」

「······?」

「貴仁君が、明日から訓練をもう少し厳しくするって。」

······マジか。

今でもかなりキツイのに、大丈夫だろうか。

まぁ、どうせ死にはしないのだ。

ならば、るべき事をるだけだ。



ーーーーーー『静寂』の為に。













[強制送召キョウセイソウショウ

1週間以上死穢の除去をしないか、現世の人に影響が出る可能性のある変異が起きたときなどに、本人の意思とは関係なく現世にトバされる事。どちらも場所は選べない。

後者の場合は、ランダムで選ばれてトバされる。

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