【残桜−2】
寝間着から生前の黒いセーラー服に着替え、脱いだ寝間着を畳んで寝台に置く。
因みに、黒瀬さんと須賀さんは、私が仮眠室で寝るようになってからは、別室に寝台を移し其処で眠っている。
何だか申し訳ない。
スカートのポケットにスマホを入れてから、「髪は女の命よ!!」と言いながらヘレナさんがくれた、お高そうなヘアブラシで寝癖を直し、身支度を終える。
其れ以上の事はしない。
面倒だ。
❅
「あ、オハヨー夜深ちゃん!怪我の具合はどう?」
オフィスに入ると、須賀さんがヒラヒラと手を振りながら挨拶をしてくれた。
·····かなり独特な体勢で。
「お早う、御座います。傷はもう治りました。」
「そっか〜、なら良かった。」
「······」
須賀さんは現在、ソファーの背もたれに両脚を引っ掛ける形で逆さになっており、いつも通りヘラりと薄い笑みを浮かべている。
·····何があったら其の体勢になるんだ。
また黒瀬さんにちょっかいでも出したのか。
「あ、体勢?いやぁ、貴仁君に「おっはよ~、今日は僕の方が早いね!」って言ったら、ブン投げられちゃって······」
「······はぁ」
なるほど、地味にイラッとくる。
「其れでね、どうやら打ちどころが悪かったみたいで、背骨がポッキリ····」
背骨····痛そうだ。
其れでも笑顔な須賀さんが怖い。
いや、目が細いからそう見えるだけか?
「んで、今貴仁君に此処に引っ掛けられてる状態!」
「·····そうですか。」
「えぇ〜?何か反応薄いなぁ·····」
どう反応しろというのだ。
困る。
須賀さんは少しづつソファーからズリ落ちており、此のままだと頭をテーブルにぶつけそうだ。
「あと、10分ぐらいで、治りそう、なんだけどね、流石に此の体勢を、1時間も続けてるとね、そろそろ腕とか、色んなトコロがキツい·····」
·····1時間もこんな体勢してたのか。
大丈夫か此の人···もしかして、ドM?
いや、背骨が折れてるから下半身が動かなくて、体勢を変えられないのか。
「痛ッ!」
あ、完全に落ちた。
須賀さんは10分後、宣言通り背骨を治し後頭部を抑えながら起き上がった。
仮にも大人なのに、こんなんで大丈夫なのだろうか。