【残桜−1】
[花笑み]
花が満開に咲く様子。または、花が咲いた様に笑う様子。花=桜
[残桜]
桜のシーズンが過ぎても咲いている桜の事。
ーーー『静寂』の夢を見た。
廃工場の時とは違い、何も聴こえずとても静かだ。
此の世界に来てから頻繁に見る此の夢は、何か意味があるのだろうか?
❅
静かな夢の中から、意識が浮上した。
常に薄暗い空は、比較的明るくなっており、淡いオレンジ色に染まっている。
「·······ん。」
朝、か。
今何時だ?
結構寝ていた気がすんだけれども····
部屋の奥に掛かる時計を確認すると、7時半を指していた。
確か、10時頃に寝たから····9時間半寝てるな私。
因みに、廃工場で負った怪我は大した事なかった。
黒瀬さん曰く肋骨にヒビがはいってたらしいが、内臓に損傷は無いとのこと。
其れよりも、擦り傷が服に擦れたりして痛い方が私としては重大だった。
痛い、地味に。
ふとした時に擦れて痛い。
まぁ、もう治ったから関係ないけれど。
「·······」
脚に貼ってある湿布を剥がしてみると、昨日の痣はキレイに治っており、身体の何所にも痛みはない。
·····傷の治りが早いって本当なんだな。
以前須賀さんが言っていたが、私達は普通より傷が治るのが早くいらしい。
そして、死ぬ時に身に着けていた衣服や持ち物も、身体の一部として再生されるのだとか。
そんな都合のいい事が····と思っていたが、傷は完治しているし、昨日の時点で割れたスマホが復活していた。
どうやら、本当の事らしい。
何という非現実さ····!
まぁ、今更か。
·····そういえば。
以前須賀さんが黒瀬さんに蹴り飛ばされた時、私とほぼ同等な傷を負っていたが、すぐに治っていた気がする。
個人差があるのか?
それとも、私より此の世界に長く居る所為なのか?
時間や経験で治癒力が上がるなら、私も早めにそうなっておきたい。
今後の為に。
後で、須賀さんに訊いてみよう。
其れよりも、
「····早く着替えよ。」
いつまでも寝間着のままでいるワケにはいかない。
もうすぐ8時だ。