【鬼籍に入る−1】
因みに、私の名前は『暁雪』と書いて『暁雪』と読みます。…どうでもいいですね。
嗅ぎ慣れた古書の香りに誘われて、途絶えた意識は再び浮上した。
「·········」
此処は·····古書店?
私は生前(?)本が好きで、よく此の古書店に足を運んでいた。
·····そういえば、「此処の古書店にある本、片っ端から漁る!」とか初めて来た日に息巻いていたっけな。
結局出来ず仕舞いだったけれど。
そんな事より、何故私は此処に?
あの高さから飛び降りたら、どの角度から落ちようと、絶対に死ぬと思うのだけれど。
頭を軽く掻きながら、私は首を傾げる。
あと何故か、屋上にほっぽり投げておいた筈のスクールバッグが手元に。
中身も其のまんまだ。
取り敢えず、今迄の動きを振り返ろう。
私は、落ちたら確実に死ぬであろう高さから飛び降りた。
そして其の直後、走馬灯の様な何かを見た。
·····そして今に至る。
此の場所だって見慣れているから、ラノベでお馴染みの「死んだと思ったら、知らない世界にトんで復活した!?」みたいな展開も不自然。
·····まぁ、此の際何でもアリか。
「全く知らない世界に異世界転生!」とかじゃなくて良かった。
まぁ、其れは其れで面白いと思うけれど。
取り敢えず、現状を把握するべく古書店の外を見る。
「········!」
硝子製の扉の向こうに見えたのは、確かに私の暮らす平凡な街。
しかし、何の特徴も無かった街は、大きな変貌を遂げていた。
全てが色褪せ白い砂が舞い、虚ろな黒い影が行き交う。
『死後の世界』と例えるに相応しい景色が、唯々揺蕩うように、其処に在った。
そして、其の中に、私は確かに居たのであった。
「·······そう簡単には消えられないって事かな。」
此処にいたって何も変わらない。
ひとまず、散策でもしてみるとしよう。
ーーー死んだと思ったら、知ってるようで知らない場所で目が醒めた。
そんな驚くべき状況でも、私は特に何も感じない自分に、正直驚いていた。