【死穢−5】
▶須賀・黒瀬side
高濃度の死穢と機械類が混ざり合い、異形と化した腕が二人めがけて振り下ろされる。
「·····貴仁君」
「分かってる」
其れを左右に別れて避け、対象の意識を混乱させる。
死穢の知能は無いに等しい。手当り次第殺す。
故に、力負けしなければ基本勝てるのである。
ドォォォォォォォォォンッ!
大きな破壊音と共に、先程迄2人が立っていたコンクリートの床には、大きなヒビがはいった。
もし攻撃を喰らってしまったら、ほぼ確実にミンチと化してしまうだろう。
其れでも死ねないのだから厄介だ。
実際に喰らったらどうなるか何て、考えるだけで恐ろしい。
鉄の死穢は、2人を探す様に破壊行為を続け、その度に破壊音が辺りに響く。
「·····チッ、煩ぇな」
バシュッ!
黒瀬が其の音に舌打ちし、左肩から黒い翼が出現させる。
其の翼は煙の様に流動的で、何処か力強い。
「···須賀」
「オーケー」
後方の警戒は須賀に任せ、迫り来る拳を避けつつ彼は相手の懐へと躊躇なく飛び込む。
一連の動作は何故だか酷く手慣れている。
此の躊躇の無さは、生前の日々故だろうか。
「····死ね。」
一気に間合を詰め、身体を捻り翼で相手を切断する。
煙の様であるにも関わらず、其の切れ味は抜群だ。
ガシャァァァァァァンッ!
切断された機械の異形は、切断されたダメージに耐えきれずに力無く崩れ落ちる。
「うわわ、」
「···チッ」
降り注ぐ鉄片を払いながら、2人は其の場から一旦退避する。異形よりも、寧ろ此方の方が危険だ。
「大っきかったねー」
「デカイだけの木偶だ。」
「相手は鉄だよ〜?」
「うるせぇ。」
しかし2人にとってはさほど変わりは無いようだ。
なんだかんだいって此の2人は相性が良い。
「·····でも、こんなにも頻繁に変異するのって、ちょっと異常だよね。」
「ちょっとじゃねぇ、可笑しいだろ。」
「夜深ちゃん大丈夫かな〜」
「·······」
確かに。
雑魚とはいえ、あれ程の量の物体を巻き込んだ変異は珍しい。
もしかしたら、向こうでも変異が起こっているかもしれない。
其れに須賀の勘は悪い事に限って良く当たる。
「·····チッ、急ぐぞ。」
倉庫に向かって足を急がせる。
何もない事を祈りながら。