【死穢−3】
コッ…コッ…コッ………
擦り切れたコンクリートの床に、革靴のやや高い音が響く。
「わぁ、今回は随分とホラー感出てるね〜」
確かに。
まぁ、場所が場所っていうのもあるが。
此処は、何処かの廃工場。
死穢の溜まっている場所は、喫茶店にある掲示板によって知らされ、基本は自主的にではなく掲示板を見て行くのだとか。
「どうするー?貴仁君、ゾンビとか出ちゃったら。ビビっちゃう?」
「······馬鹿言ってないでとっとと進みやがれ邪魔だ。」
「そんなぁ〜」
廃工場に入って暫くすると、退屈になってきたのか須賀さんが黒瀬さんをおちょくり始める。
毎度毎度懲りない。
そういう趣味なのだろうか?
······そろそろ止めておかないと、
ゲシッ
「ぐふっ」
黒瀬さんに蹴られると思う。
もう遅いか。
❅
「じゃあ、僕達は濃度の濃い奥に進むから、夜深ちゃんは此処で回収してて。」
「·····此の程度の濃度なら、変異する事はまず無いはずだ。」
錆びれたコンテナの並ぶ倉庫で、須賀さん達と一旦別行動をとる事になった。
どうやら、死穢は濃度が濃くなると、『変異』するらしい。
詳しくは分からないけれど。
「其れにしても、今回は随分と濃いね。」
「あぁ。」
そうなのだろうか。
倉庫には黒いモヤ···死穢が広がっており、数メートル先は殆ど見えない感じになっている。
私にはまだ基準が判らないが、二人が言うのならそうなのだろう。
「多分大丈夫だと思うけど、何かあったら公衆電話の所まで退いてね?」
「はい。」
「死ぬ事は無いけど、怪我しちゃうと痛いし。」
だったら、黒瀬さんをおちょくるのは止めたらいかがだろうか。
やっぱりそういう趣味なんじゃ······
いや、深く考えるのは止めておこう。
「·····30分後、此処で落ち合う。夜深は此処から出ない事。以上」
黒瀬さんの言葉をキッカケに、私達3人は散っていった。
····問題無く終える事が出来ると良いのだけれど。