【死穢−2】
3時間後。
時計の針は6時をまわり、外は真っ暗だ。
「いやー、酷い目に遭った。」
須賀さんはいつの間にか復活しており、ソファーに転がって伸びをしている。
そして、傷は衣服の損傷もろとも回復していた。
「·····いい加減懲りやがれ。」
「そんなぁ〜」
どうやら何かやらかしていたらしい。
須賀さんはどうして黒瀬さんをおちょくり続けるのだろうか。
止めておいた方が身のためだろうに。
「······ッたく、今日は現世に行く日だってのに、面倒な事させやがって。」
「そんな事言って楽しんでるクセに〜」
「あ?」
現世·····?
つまり、生前の世界の事だろうか。
現世へは、街の何ヶ所かにある『白い電話ボックス』へ行きたい地域の電話番号を打つ事でトぶ事が可能らしいが、まだ私は其の様子を見た事が無い。
つい最近死んだばかりだというのに、現世に居たのがかなり昔の事のように感じる。
「夜深ちゃんも連れてくんでしょー?」
「あぁ。」
ぇ、私も······?
いきなり大丈夫だろうか。
まだまだ体術も翼の扱いも慣れていない。
行ったところで足手まといにしかならない思うが。
「·······って事で、今から向こう行くけど大丈夫?」
「訊かれても困ります。」
回収の方法は聞いたが、まだ詳しい内容は分からない。
其れに、死穢は唯気体のように漂うのではなく、変異して生き物の様になるという。
そんな死穢相手に、自分は何か出来るのだろうか。
出来れば、もう少し力をつけてからの方が望ましい。
「んー、そっかぁ。まぁ、何事も経験だよ!」
「········はぁ、そうですか。」
拒否権なしか。
まぁ『決まり事』だしな。早めに詳しい事を知っておいて損はない。
其れに、早く2人に頼らず自立出来るようにならねば。
ーーーまだ分からない事だらけの此の世界で、限りなく完璧に近い、『静寂』を得る為に。