【飛べない翼−4】
「·····じゃあ、次は此れよ!!」
「は、はぁ·····」
「クルッて回ってみて!」
「·······」
時刻は午前11時。
私は今、絶賛着せ替え人形中である。
其れをさせている張本人である『桐月 ヘレナ』さんは、生前デザイナーだったらしく、現在も趣味として作り続けているのだとか。
しかし、着れる人が居なかった為唯仕舞われているだけだったという。
そして、運良く····私にとっては悪いが、現れたのが私というワケだ。
·····何か、色んな所がスースーする。
「流石よ夜深ちゃん!何でも似合うわ·····」
「······そうですか。」
似合わないと思うが。
そんな事より、まだまだ続きそうで怖いのだけれども·····
助けを求める様に彼女の後ろに居る2人に目線を送ってみるが、須賀さんは目を閉じて合掌し、黒瀬さんは我関さずとしている。
あ、駄目だ。
助かりそうにない。
❅
「ふぅ、大満足!此れからは捗りそうね·······」
「そうですか。」
何か不吉な言葉が聞こえた。
そうならない事を祈る。
「······終わったか。」
「大満足」という言葉で事が済んだ事を察したのか、黒瀬さんがやれやれといった表情で、ソファーから立ち上がった。
黒瀬さん、そんな義理は無いと思うが、何故助けてくれなかったのか。
まぁ、彼女はキレたら手が付けられなさそうな人だから、仕方ないのかもしれない。
ほっとくのが1番なのだろう。
「えぇ、終わったわ。·····全く、黒瀬はせっかちね〜」
少し不満気なヘレナさん。
?
此れから何かあるのだろうか?
「夜深、表に出ろ。」
「?····はい。」
表に?
何だろう。
恐らく、前教えてくれた、此の世界の『決まり事』についてだと思うが。
私の考えに気付いたのか、小さく振り返って、黒瀬さんが付け足す。
「ーーー以前話した、『翼』についてだ。」
やはり。
因みに、何故ヘレナのみ下名前呼びなのかというと、本人がそうさせたかららしいです。(他人事)