表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暁弔の末路  作者: 暁雪
【鬼籍に入る】
1/34

【終焉】

 此の作品には、自殺について書かれている場面がありますが、決してまねしないでください。

 また、そこまで暗く沈んだモノにする予定は無いので、気軽に読んで頂けると嬉しいです!


[漢字]

・此れ、此の、其の→コレ、コノ、ソノ

・何処、其処、此処→ドコ、ソコ、ココ



『ーーー死にたいんじゃない、消えたいんだ。』

私の人生を小説とするなら、冒頭にいきなり此の一文を持ってくる私は、随分と歪んでいるんだと思う。

此の一文だけならまだしも、其れを実行するあたり、私は相当歪んでいる。我ながらに。


時は暁。

1人廃ビルの屋上で、柵に腰掛け足をブラつかせながら、空を仰ぎ、まるで他人事の様に私は自嘲わらう。

どうして私は今から『こんな事』をしようとしているのか、正直自分にも解らない。

唯、何となく。『こうしたい』のだ。

今見上げる朝焼け歯、徹夜明けの窓から見える、切り取られた空とは違ってとても綺麗だ。

まだ鳥の飛んでいない空は、透明でまるで時が止まっているかの様に静かだ。

朝焼けを受けた真下のコンクリートは仄かに光を放ち、静かに私を待ち構えている。

そんな静かな空間の中で、短い生を終えて仕舞うのは···

「······悪く、ない。」

寧ろ、雲一つない日に15年の人生を終える事の出来る私は、幸せ者だ。


此れは私だけかもしれないが、1日の内1番静かなのは今、暁の刻だと思う。

車の音も消え、人々のざわめきも、今だけは鳴りを潜める。

限りなく『静寂』に近い此の時間が、私は好きだ。

誰にも干渉されず、独りでいられる気がするから。

自由でいられるような···そんな気がするから。


藍と紫が混じった様な色をしていた空は白み始め、いよいよ新しい1日を迎えようとしている。

いろの無い、濁った新しい1日が。

·····其の前に。

「ーーー逝こう。」


思えば、唯々長いだけのつまらない人生だった。

別に、不幸なだけの人生だったワケじゃない。勿論楽しい事だって多少はあった。

友達と呼べる存在だって、一応1人はいた。

けれども私は、『消える』という形で『静寂』を望む。

理由は無い。

世間一般からは明らかに可笑しいと思われるだろうが、唯、何となくの行為なのだ。

唯、静かなところに行きたくて、こうするのだ。

思い残す事も無いし、躊躇する事はしない。

折角だから勢い良く飛び降りてみよう。

フェンスを蹴って宙を舞う。



空が白み始める暁の刻。

私、『宵月ヨイヅキ 夜深ヤミ』の命は、穏やかに終わりを迎えたのであった。

               ーーープツリ。


             ❅


…ガシャンッ!

何かが砕ける様な音で、意識が浮上した。

「······?」

何だ?

私は、死んだ筈。

目を開けると其処に広がるはまさに虚無。

周囲に拡がる闇は、何処までもくらく、そして静かで心地良い。

もしかして、あの世、というヤツだろうか。

其れとも、死の間際に見ている、走馬灯の親戚だろうか。

身を起こそうにも身体が動かないので、仕方なく唯一動く目だけで暗い辺りを見渡す。

····何も無いのか?

「!」

何も無いと思っていた其処には、私を中心に色とりどりの硝子が散らばっていた。

赤、 青、 紫、 金、 黄、 藍、 緑…

まるで最後に見た暁の空が、其のまま砕けて散らばっているみたいで、とても綺麗だ。

でも、何でこんな所に硝子が····?

さっきまでは、何も無かった筈。

私は、もっと硝子ソレを見ようと目を凝らす。

「·········!」

ん?此れは····

硝子なんかじゃない。

大小様々な硝子の破片をよく見ると、曲線を描いていたり折り重なっていたりと、まるで人の体の一部の様だ。

つまり、此れは···


ーーー私だ。


其の事実に気付いた時、私の意識は再び暗転した。

                    ーーープツリ。

















※タイトルの読み方…『暁弔ジョウチョウ末路マツロ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ