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「『篠崎 絆』」  作者: 宇佐美 風音
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01.Prologue.

 ハッピーエンドという言葉だけを切り取れば、それは儚くも美しい愛を語り後から死にたくなるような恥ずかしく甘酸っぱいもので、皆にとっての光になったりもするし誰かにとっての救いであったりと、悶々と想像するのは難しいことではないと思う。


 残念ながらと形容すべきか僕もその例から漏れない。

 ラブコメで言えば様々な紆余曲折があり、愛しく思う人と結ばれたり。

 ファンタジーで言えば世界を覆う闇を切り裂く光となる。

 ミステリーならば犯人を捕まえて物語を綺麗な一言で終結させ、まぁざっくり言って身も蓋もなくしてしまえば人が幸せになる横文字なんだろう。

︎︎

 けれど当然終わり方はそれだけじゃない、世の中にはバッドエンドなんて言う聞くだけで眉間に寄った皺が戻らなくなりそうな、よりにもよって(にが)そうな言葉もあるわけで。


 謂わば救いようのない終わり、ラブコメで言えば誰とも結ばれず、ファンタジーは世界が滅亡したり最愛のヒロインを失い慟哭し終え、ミステリーで言えば犯人の凶刃に犯される、などなど思い付く限りで列挙すれば、ハッピーエンドと大差ない物が浮上する。

 他にもあるかも知れないが、僕なんかの知識ではこれが限界なのでこれ以上は省くけれど、要するに終わり方ってのは人それぞれが持っているわけでってのが伝わるだけで満足だけれど。


 それらは人が石に躓き転ぶまでの過程で映画が作れるとさえ言われるくらいには、濃厚かつ印象の強いものへと変貌する。

 だけど一様にそれらは視認されたことが大前提。そこに「物語」があると見て聞いた上で、『終わった』と初めて認識するのだ。


 結局とどのつまり、ハッピーエンドとバッドエンドなんてのは焦点を置かない限り終わりで無ければ始まりでもない。「隣の塀に囲いが出来たそうな」「へぇーかっこいい」、みたいな話しにしかならない。


 誰かが居るから終われるのであって、誰も居なければ終わりじゃない。誰かが居るから追われるのであって、誰も居なければ追いもしない。

 人って言うのは悲しいことに自分の身を守るので精一杯な生き物なんだ。なのにどうしようもなく一人では生きられない悲しきかな現実、それが人間だ。

 いつ溢れるとも知らない器に注がれた出来事の数々が、僕らを飽きることなく襲い続ける。


 だからこそ誰かとの「絆」を『頼り』に生きようとする、全くながら哀れで身勝手なものでもある。他人の器までも巻き込もうとする、厄介なもの。


 迷惑極まりない話しではあるけれど、それこそ残念ながら僕ら人間の救いようがない部分。バッドであってハッピーじゃない因子。


 それでいてこれこそが、僕らが狂った最大の要因。

 誰にも追われなかったから、この物語は終わらなかったのか。

 誰もが追い求めたからこの物語が終わったのか。

 誰にも追われなかったから、この物語は終わったのか。

 誰もが追い求めたからこの物語は終わらなかったのか。

 誰もが追い求めなかったからこの物語は終わらなかったのか。


 判然としないまま「×××× ×××」と出会ってから、僕はそんな途方も無い答えを求めていて。

 この胸に問い掛けた答えは、蜂蜜のようにどろどろとしたハッピーエンドなのか、それとも……身を焦がすようなバッドエンドだったのか。

 果たしてこんなにも無知な僕に教えてくれた、この世で最も愛する唯一人の女の子。


 『×××× ×××』、僕を追い続けていたからこそ出せた答えを、君が教えてくれたんだ。


そう、僕の物語は––––––

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