這いよる影
外に出ると猛烈な暑さと照り付ける日の光に目の前が一瞬真っ暗になった。
「とんでもねぇ暑さだ。」
「優雅君変な喋り方になってるけど。」
暑さでどうにかなるってのは本当だった。
「優雅君、関係ないのに付き合わせちゃってごめんね。」
桐花さんは申し訳なさそうに言ったが、俺はうれしかった。
「いやそんな、迷惑でもなんでもないですよ。迷惑なのはその桐花さんに付きまとってるっていう…」
「うん。思い違いならいいんだけど。」
それは夏休みに入る前のことだったらしい。
下校途中に毎日ではないが背後に気配を感じることがあったらしく、振り向くと影だけがスッと路地裏に消える事が何度かあったらしいのだ。
「やっぱり、ストーカーか何かなんですかね。熱くなると変な人も増えるっていうし…」
「うーん、今までこんなこと経験した事もなかったし、あまり気にしてもなかったんだけど家に帰ってから考えてみると何かモヤモヤッとするんだよね!」
(桐花さん…もう少し気にした方がいいですよ…)
天然なのか。
(そういえば、あの妖怪なら何か知ってるかもな)
このような怪奇現象とは無縁だった為に今まですっかり存在を忘れていたが、ふと思い出した。
桐花さんの事しか考えてなかった。
(おい!、俺も結構な扱いじゃないか。こんなイベント人生に一度あるかないかだろ。)
鎌鼬はそう言った。
妖怪と話す機会が一度でもあってたまるかとも思ったが、何だか悪い気はしなかった。
(それもそうだよなぁ、まぁ現実味がなさ過ぎて…それはそうと、この件に関して何か知ってる事とかない?)
妖怪に聞くのも変な話だ。
(この件に関して単刀直入に言うと、何も知らないな。と言うのも今の俺の存在はお主からの霊力頼りだ、最近まではそのリンクが弱かった為にあまり遠くに行くこともままならなかったからな。)