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ラストエイジ raison d'être  作者: 圷 啓
1部 校内事変
42/45

004 兆候 その2


 萩原は飲みかけのコップに手を掛ける。

「――なるほどね」

 昨夜のことを話し尽くすと、嗣平の表情は少しやわいだ。

 猫が消えた。ただそれだけで奏の狼狽は大きい。奏は何かに入れ込む嫌いが昔からあった。人形だとか、何かのおまけだとか、嗣平から見てなぜそれに執着するのか疑問に思う物をとっておこうとする癖がある。

 それはきっと、失くすという事に対する拒絶の現われだ。

 少々逡巡した後、嗣平はその続きを、ぐっと飲み込んだ。

 深呼吸を鼻でした後、口を開く。

「と、いうわけで、猫を探さなきゃ」

 ことり、と机にコップが置かれた。萩原、

「そんなに、大事?」

「と、いうか、引っ込みがつかない。中途半端なのが嫌だ」

「ふーん」


 萩原が時計を眺めた。

 保健室内で経過していた時間は意外に長い。既にもう授業は終結間際、寝ている生徒も目を覚ます頃合いにさしかかっている。数分もすれば、また新たに保健室を訪れる生徒も現れるだろう。

 うん。

「話はよくわかった。猫が消えた。そいで、海田ちゃんはそのことがショックで不安でたまらんと。そしてあんたは発見できず手をこまねいている。まとめてみれば単純な話だね」

 二人して、同じ姿勢。腕を組んで、片方が、うーんと声を上げる。

「まあ、そうなるけど」

 そして、萩原は今の嗣平を簡単に総括した。


「つまり、問題はあんたの中途半端さにある」

 嗣平がぎくりとした。

「な、何?」

「うーん。そこで寝てる粕谷といい、どうしてこう、周りはあんたを甘やかすかね。まあ私も人のこと言えないけど。それがいけなかったのねきっと」

「あの、姐さん?」

 組んだ腕をほどき、そして指をびしり、

「一つ、教えてあげる」

 萩原はそう言って、メモ帳に何かを書きつけ、嗣平に見せつけた。

「どれか一つ選べって言われて、選べる?」

 その紙に5つの文字列が並んでいる。

「ささ、選びな。5秒で」

「え、ちょっと待って」

 嗣平はそのうち、判断に迷ったが、4秒で一つを選択した。

 それを眺めた萩原が一言。

「あんたはわかりやすいからね。それを選ぶって絶対思った」

「――これ、何かの心理テスト?」

「いや。単なる分類表。答えは教えてやらない。でも、自分で知ってるはずよ」

 とりあえず、と置いたうえで萩原は続けた。

「協力してほしいときは言いな。あと、授業はちゃんと出ること。放課後ぶらぶらするんじゃないよ。猫の事は任せな。見つかるのは時間の問題だからね。あと、変な奴見つけたら私に報告する。わかったね」

 それだけ言い置くと、厄介払いのように、入口まで嗣平を追いやった。

 スピーカーで鐘が鳴る。

 背中の圧力に耐え切れず、開いた戸に身を潜らせ、外に出た。

 ぴしゃり。

 ――なんだかなあ。

 壁の向こうは静まり返って物音一つしない。

 しばらくその戸を見つめ、生徒の声が廊下を伝ってくる頃合いになる。

 歩き出そうとした。

 その足を止めた。

 保健室の戸を眺める。

 ――でも、助かった。

 一礼。

 それを最後に、嗣平はその場から歩き去った。


***


 転入生が来たことは、落下騒動をかき消すくらいには効果がある。

 何しろ、その行動にはただでさえ注目が集まる。不可解なことがあれば尚更のこと。

 小山内柚瑠は最初の5分は周囲と共にするらしい。しかし、休み時間の残り5分は、何やら「用事」があるのだという。ふらっと出かけ、普通に返ってくる。後をつけようとすると何故かいつの間に姿を消す。まだ1日目だというのに、既に属性ではなく、その人物自体へと注目が移行していても不思議ではなかった。

 そして嗣平は、そんなことなど全く知らない。自分の周辺で起きたこと――先ほどの真、そして、奏のことで小山内にまで気が回らなかった。


 偶然である。

 放課後の屋上へ向かう階段で、嗣平は小山内と鉢合わせた。

 ――何してるんだ?

 何しろ、誰かが居るなど思いもしない。

 しかし、転入生の怪しさを思うに至るには十分だった。

 小山内柚瑠は立ち入り禁止の板を調べている。何もないとわかったのか、一息ついた。振り返る。表情に変化は見受けられない。

 小山内が嗣平の存在を見つけたにもかかわらず、である。


「何、してるの?」

 こっちのセリフだよ、とは当然言えない。

 思考のその辺にあったお題目を唱える。

「ええと。探し物、かな。猫とか」

「いないと思うわよ。こんなところには」

「だろうね」

 そこで会話が途絶える。あの四角のことは他言無用と萩原に脅されている。

 何しろ、昨日の今日である。

 駅でのことを話すのはどうも気が引けた。あれは、クラスメイトになると知らずの話だが、なんだか思い出すのは恥ずかしい。ともあれ、引きあいに出すのは見当違いだと嗣平にもわかる。実際問題、普通の人なら適当に質問をして乗りきるのではないだろうか。

 何か口にしなければ。

 そう嗣平が実行しようとした時、先に小山内柚瑠が口を開いた。


「まだ何か、私に用なのかしら。杉内君」

「いや、別に、そういうわけでは――」

 杉内君。

「って、俺の名前、どうして」

 小山内柚瑠の態度に変化はない。

「私、転校慣れてるから覚えるの得意なのよ」

「俺は全然だったなあ。一月はかかった」

 今度、意外にも、小山内は引っかかったような表情をした。

「もしかして、杉内君も――」

 嗣平は肯く。

「いつ?」

「小2の頃の話。もうだいぶ昔」

「じゃあ、私とは入れ違いってことになるわね」

 何かが縮まったような色が声に灯った。

「え? 小山内さん、こっち住んでたの?」

「ええ。小1の頃までね。千場の方に」

「本当に? 俺も千場住みなんだけど。じゃあ、あの煙突があったのは」 

「覚えてる」

 それから、多少は話が繋がった。

 が、それでも3分くらい話していると、小山内は、

「用事があるから」

 その場を後にした。

 思う。

「不思議な女子だよなあ」

 と、言ってもいられない。時間を確認する。既に放課後も2時間近く経過した。

 

 その日、嗣平は奏に帰るように諭している。根回しを奏の友人である渡瀬多恵に頼むまでした。しかし、その少女は嗣平とは犬猿の仲である。一歩違えばコントになる二人の関係。じゃれ合う犬、というのが近い例かもしれない。

「ま、これは大きな貸しだこと。ほほほほほ」

 と言いつつも、渡瀬多恵はあっさりとその頼みを受諾、奏を引きずりどっかへ行った。

 

 そうだ、自分も用事があるのだ。

 しかし、猫の手がかりはまるでつかめていない。

 立ち入り禁止の標識。

 その場所からいなくなった小山内柚瑠は、今度は落し物をしていなかった。

「あ、」

 その小山内にも言っておけばよかったことがあった。

「あんまりうろつかない方がいい――って、もうあとの祭りか」

 言ってすぐに馬鹿なことを口にしたと思った。

 盗難やら事件やらが、彼女と関係あるわけがない。転入生が過去を盗むことなど、無理な話だった。

「……行こ」


***


 先生の言う事には従うべきなのだった。


 5時を回って校内をうろつく生徒など碌なのがいない。それは教師一同の共通認識としてある。新任の教師もその毒気に当たり、1週間もすれば生徒に説教を始める度胸を得る。橘台高校に受け継がれるゆるい学生の風土とは対象的に、教員の風土は中々厳しい。

 見つかるのは時間の問題だ、と萩原は言っていたのである。

 だから・・・、本日最後の捜索を嗣平は行った。

 猫用のケージがあると以前教えられた、西棟4Fにある被服室の準備室へと赴いた。匂いにつられ猫がいるかもしれない。そう淡い期待を持ち、昨日のうちに段取りをつけ、部員に鍵を借りた。

 戸を開く。

 姿形もない。

「やっぱり、か」

 入り口に張られたボロボロのポスター。年度が7年前になっている。窓際の手すりの下にきれいに並ぶ段ボールからは、布やらエプロンがこぼれていた。箱を開けて中身を見る。ああ、ぐちゃぐちゃである。中途半端である。無残である。

「それにしても酷い」

 ここまで来ると、その機能を果たしているとは思えない。

 猫を探すついでに、などと考えたのだろうか。

 よし、と嗣平は何かを決心した。

 仮にそんなことをやろうと思ったのなら、部員にでもやらせればいいのであって、そもそも長いこと使われていないのだから余計なお世話である。その考えを持ち、萩原の言葉の意味を理解すればよかったのである。荷物を仕舞おうだとか、ちょっと埃っぽいから窓を開けようとか、そう考えて部員でもないのがうろちょろしている場合。

 その客観的思考が完全に抜け落ちている場合。


「何してる?」

 こうなる。

 3段目の段ボールを下したところ、4×4の段ボールの左だけが2段となったタイミングで、その声が嗣平にかかった。

 手が固まる。その姿勢のまま、

「掃除、ですかね」

 振り返って、その表情が固まった。

 体育教師の三谷が壁のように立ち誇っていた。

 返事を聞いた三谷は、喝。

「たわけ。そんな嘘があるか。さっきから何をしてるのか見てれば、中身を何やら見ては別のを開けてたな」

 ――やっぱり、そうとられたか。

 三谷は見回りの中でも一番の大当たりだ。何しろその経歴には三月戦争で海峡守備に就いていたというもの。すなわち、彼にとって異端の徒を見つけるのは容易く、その対象は鉄拳制裁に付しても、それは守備隊――学校の――としての役務に過ぎない。

 この際だから、開き直るしかないと嗣平は判断をした。


「ちょっと探し物しているついでなんです」

「何を探しているというんだ? 言ってみろ」

 いくつか挙げる。しかし、全てを三谷は否定する。例え真実を語る者がこの場にいたとしても、意味のないことであると言わんばかりに否定しまくる。放っておけば、古代ギリシャの哲学者まで否定かねないほどの勢いに、

 ついにネタが切れた。

 三谷の眉間にしわが一層募った。

「貴様。さっさと吐けば、停学くらいで済むかもしんぞ」


 状況は悪化の一途をたどっている。

 無茶苦茶だ。はなからそう決めてかかってきてる。

 萩原がその経験による優位性を生徒をからかうのに向けているのに対し、三谷は締め付ける方へ使う。生徒にスパイがいると聞けば、生徒全員を嫌疑にかけその不在を確認してから、「うちにはそんな生徒はいません」とのたまうタイプだ。

 三谷は地を踏み強い音を立て、威圧した。

「どうしたこっちを見ろ? 反論する気力もないか? いいか、貴様ら若いのは戦場を知らん。腑抜けている。堕落している。それを我々が鍛え抜き、立派な人間へと育成しているその途中・・なのだ。だと言うのに、いったいどうしたことか。恩を仇で返すような真似をして、恥ずかしくないのか! ええ!?」

 嗣平は石のように黙って耐えた。永遠とも思える3分もの間、三谷はその訓示を延々垂れ流す。

 なぜこうなったのか。

 その原因を求めれば、萩原の一言に思い至った。


 ――つまり、問題はあんたの中途半端さにある。


 なるほど。それは身に染みてよくわかる。しかしそれは解決策ではなく、原因に過ぎない。もし仮にこの煮え切らない態度が解消するなら、確かにそれは一つの解決になるかもしれない。

 でも、それは、自分が違う人間になることを意味している。

 三谷の言葉は続く。若さは理解できない。出来ないのに言っておきたい。しかし、その言葉が止む時が、学校生活の終わりでもある。

 今は耐えるしか嗣平にはできない。


 救いの手が差し伸べられたのは、さらに3分が経過したとき、

「あれ? 三谷先生、用事はよろしいのですか?」

 聞きなれない声。男性教師の声だろうか。

「ん? ああ、新谷君か。用事はまあ、後でもいい。今はこいつを」

「ええと、ああ、この子ですか。何か?」

「盗難犯の嫌疑がかかっている。洗いざらい吐かせるつもりだ」

 かけてるのはお前だけだろ、と突っ込むのは誰もいない。

 新谷と呼ばれた教師は、

「そうですか。でも、こんなところじゃなく、職員室でも行きませんか?」

 以外にも度胸が据わっている、と嗣平は思った。

 三谷と違い、新谷はどう見ても文科系のなりをしている。センターで分けて前髪にちょっとしたウェーブがかかっているが、恐らく地毛だろう。まだ大学生でも通用しそうな「お兄さん感」がにじみ出るような教師だった。

 そして気が付く。

 昨日、役場にいたあの教師である。嗣平の表情に違和感が募る。

 三谷はそんな嗣平の変化など見向きもしなかった。

「しかし、現場を押さえるのが基本中の基本だ。君は軍隊経験は?」

「ありませんが……」

「まあ、あってもなくても同じことではあるが」

 三谷の隙間を埋めるように新谷が提案した。

「じゃあ、こうしませんか? 今、彼の荷物を探って、何も見つからなければ、とりあえず職員室へ。何か不審なものがあれば、この場で検証を行うと」

 そして、その一言が打開の言葉であったらしい。

 しばらく三谷は秤にかけているようだった。ややあって、

「わかった」

「では」

「おい、動くなよ。今から調べるからな」

 順繰りに探る。ポケットの中身どころか、その隅までチェックを怠らない。鞄の中身も調べられた挙句、最後には靴下まで脱がされた。

 それでも、彼らは何も見つけることができなかった。

 新任の新谷が肯く。

「三谷先生。じゃあ、彼は私が連れて行きますので、先生は先生の用事の方を」

「うむ。そうか。それならこの場は任せる」

 そして三谷は嗣平を睨みつける。

「いいか? これに懲りたら、二度と不審な振る舞いをするな」

 そう告げると、靴音だけを高らかに響かせ姿を消した。

「じゃ、話は職員室で聞くから、ついてきて」

 その新谷の言葉が、今は天国のように嗣平は思った。


***

 

「で、本当は何をしていたの?」

 新谷は日報を取り出し、さらさらと書きつけている。内容は嗣平とまるで関係ないものらしい。それがわかるのは、口と手の動きが一致しないことにある。

「何か探してたみたいだけど」

「まあ、そうです。猫のケースを貰った時に、リードもあるって聞いてもらい忘れたのに気が付いて、」

 そんなものはない。もちろん嘘だ。

 新谷は頓着しなかった。書類の手を止めずに、

「そう。それはなかった。そうだね」

「ええ、はい」

「残念だねえ。でもなくてよかったね。もしあの場で君が、ああ、」

 杉内、です。

「そう、杉内君。君が何か身に着けていたら、きっと三谷先生帰してくれなかっただろうからね。そしたら地獄が待っている」

 地獄が待っている。

 その光景を思い浮かべたか嗣平の背を汗が伝う。恐らく新谷の発言は誇張ではあるまい。とくれば、嗣平は思う。

 四角を仮に持ち続けていた場合、不味いことになった可能性は十二分にあったということになる。

 ――萩ちゃんには感謝しないとな。


 新谷が笑みをこぼした。

「冗談冗談。地獄なんて、そうそうないよ」

「あ、あはははは、そうですね。冗談冗談」

「まあ、でも気をつけなね。放課後はあんまりうろちょろしないこと。今日みたいなことだって起こらないとも限らない。でも、勘違いしないでほしい。みんな、それだけ真剣に犯人探しは進めているんだ。三谷先生はとりわけ正義漢だから」

「はあ。よくわかります。すいませんでした」

「わかってもらえたらよかった。もう、帰っていいよ。三谷先生来る前に帰りな

 なんていい人なのだろう、と嗣平は思う。

 それにしては、ある一点が引っかかる。

 三谷に対して取った、毅然とした態度。新米教師が先輩に楯突こうなんざ目の前の相貌からは、想像がつかない。

「あの、」

「ん?」

 日報を持ち立ち上がった新谷が再び腰掛けた。

「どうした?」

「よく先生、三谷先生にはむかえますね」

 それを聞いて新谷が笑い声をあげた。

「はむかうって。本人が聞いたら怒られちゃうな」

「ごめんなさい。でも、すごいと思いますよ本当に」

「いいよいいよ。そんな持ち上げないで」

「何か、コツとかあるんですか?」

「コツ?」

 新谷は顎を右手で軽くねじる。指が離れると、うん、と口にしてから、

「コツは簡単だよ。何事もバランス。そのためにはきっちりとその場を把握することが大事なんだ。相手を知ること。そうすれば取るべき態度がわかる。今回は、三谷先生もどこかで話の腰を落ち着けたがってたから、私は提案をしてみたんだよ」

「提案、ですか?」

 新谷が肯く。

「私は君がシロだと雰囲気でそう思ったし、だったら、と思い切って『検査をしよう』――そう言ったよね」

 嗣平が肯く。

「でも、その前になんて言ったか覚えてる?」

「え? うーん。あ、職員室」

「そう」

 ここ、ここ、と地面を指差す新谷。嗣平は苦笑する。

 新谷はあっさりと話をまとめた。

「人間だれしも、最初に出された案を否定しがち。でも、それに条件が付くと結構いけるんだよね。ま、そんなもんさ」

 言ってることはちゃらんぽらんにも思える。

 が、嗣平は何となく、新谷を信用できると思った。

 聞いてみたいことがあった。

「あの、」

「何かな?」

「もし、自分が違う人間になっちゃったら、どう思います?」

「有名人とか? スポーツ選手だったら最高だね。メジャーで本塁打王とか」

 質問の精度が荒すぎた。

 萩原のようにはうまくいかないなあ、と嗣平は臍をかむ。

 訂正。

 コホン。

「自分が、別の自分になったら、だとどうですか?」

「それは考えるまでもないね」

 ズバリ、新谷はそんな前置きが付くくらい言い切った。

「だって、毎日人間はそうしてるんだから。それに、僕らは子供から大人になるときに、別の自分になってるはずだよ」

「大人になる――ですか?」

「うん。でも、自分は自分。体が大きくなったって、何か役職がついても何を生業にしてもそれは変わらないね。もしかしたら杉内君にはまだわからないかもしれないけど。そうだなあ、例えば、ちょっとした友人たちの振る舞いや言葉の中にも、何かが既に見えてると思う。逆に、自分でわからなくても、他人は自分のそういう部分わかっていたりするかもしれない。だからこそ、楽しい――と、私は思うよ」

 新谷は再び立ち上がって、嗣平を見た。

「難しいかな?」

「――たぶん」

 新谷は嗣平の肩に手をポンと置く。それを最後に嗣平に言った。

「ま、悩みなさい。若人!」



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