13 小山内の3つの話
杉内君。
あなたが目撃したあの生物は「厭」と呼ばれているの。
そいつらはいわば怨念のような存在で、そもそも、普通に生活している人には見えない。その「厭」が見えたっていうことは、おそらく杉内君も先天的にそうした血統を持っているということなの。
もちろん、私も。
ついでに言ってしまえば、妹の手綱もそう。
つまり、あなたはその力とでもいえばいいのかしら、いや、そうした素質といった方がいいかもしれない。その素質をどこからかあの男は嗅ぎつけて利用しようとしていた。
それが私の予想。
といっても、見えるからと言っても直接的に何かができるわけじゃないから、日常生活に支障はないはず。ただ、
今、私がこうして向かい合って話をしている。このことはちょっぴりその日常から外れることでもあります。
そこで、これが一つ目の話。
あなたを観察下に置かせてもらいます。
観察対象者を目の前にして、こんな宣言をするのも馬鹿げた話だけど、少なくとも外出しているうち、これは学校も含めてね、その時間は見張らせてもらうことになると思うの。
本来はさっき見せたアレで、あなたとすべての関わりを消すため記憶を飛ばすようにするんだけど、ちょっと事情があって、少なくとも今回の件が片付くまではそうもできない。
わかってくれるわよね?
そう。よかった。
じゃあ、次の話。二つ目。
多分観察されるって聞いて、怖くなったと思うのだけれど、大丈夫。安心して。
私たちは決してテロや武力闘争をする組織ではないから。
私たちについての話をしないと、安心してもらえないよね。だから、教えられる範囲で話します。
私たちはいわゆる非政府組織にあたるの。そして、その中でも「特殊治安維持」に区分される組織。
治安維持と聞くと何だか憲兵くさい印象を覚えるかもしれない。実際は、むしろ人に見えないように、関わらないようにしないといけないから、黒子って言った方が近いのだけれど。
本来の業務は、先に挙げた「厭」がこの世界に出現する前にその穴をふさぐこと、つまり、封印をすることなの。
だから、あなたに目撃されたことと併せて、私としては二重に失敗をしてしまった、ということだから、恥ずかしいんだけどね。
一応、その封印に失敗したときのために、ああした行動も取る。でも、そっちがメインではないということを覚えておいてほしいの。
だから、あなたに危害を加える気はないから。
ちょっとの間、我慢してほしいの。
うん。ありがとう。
最後の話。
これは、私もすべてを知っているわけじゃないから、あくまで予想も入ってる。
あの、あそこにいた男のこと。
そう。名前、若槻って言うのね。
でもね。それも本当の名前化は正直怪しいと考えていいかもしれない。
その男の所属している組織は、私たちの組織とは一応協力関係にあるのだけれど、ただね。仕事の内容を考えたら、正直向こうは割に合わない。
なぜなら、「厭」を刈るのが彼らの仕事だから。
でも、協力関係にある以上、直接にこっちの妨害をするわけにもいかない。だから、他の手段で仕事を遂行したいときっと考えたのね。
そこで、杉内君にめどが立った。
あなたに何かを吹き込んで、針を抜かせた。本来特殊な針だから、抜くことなんてできないはずなんだけど、多分あなたの体に何か力を流して、それを可能にしたんだと思う。
そして、次の話が多分本当の目的。
目撃者を作ること。
彼らの仕事は私たちと違って完全に隠れてしまうと、その被害計測や達成度合いを報告だけに頼らないといけなくなるから、それを証明してくれる人を探してる。そんな噂を以前耳にしたことがあったわ。
普通の、一般の人だと見えないものも、見える人がいるとなったら話は違う。その人を目撃者に仕立てて、吐かせた後はどうとでも処理できる。
杉内君は多分そのために、あの若槻とかいう男に利用されたんだと思うの。
ショックかもしれない。怖いって思ったかもしれない。でも、大丈夫。
私が、私たちがいるから。
だから、約束してほしいの。
何かあったら、すぐ連絡をすること。私の連絡先をおしえておくから、そこに連絡をして。
あと、学校が終わったら、明日、この家に来て。
一応の身を守る術を教えておきたいから。
私はちょっと用事で遅れるかもしれないけど、代わりに手綱に、あ、妹の連絡先は明日、自分で聞いておいて。私も、知らないから。
なんで、って言われても、組織の決まりでそうなっているから。これは別におかしなことでもないことなの。
話を戻すけど、明日、妹の手綱に言っておくから、それを聞いておいてほしいの。難しい話でもないから心配しないで。
じゃあ、これで私の話したいことは以上ということになるけど。
何か、杉内君から話したいこととか、ある?
そう。わかった。じゃあ、この辺で、おしまいとしましょう。




