暴虐切り裂く蒼き光
ユニークがもう1000越えちゃうよ。
Pvも4000いっちゃった。
もうこっち本腰いれるしかなくない?
敵は、道の向こう側とこっち側で別れてきた、およそ100体。子供がほとんどと言うことで甘く見られているのだろうか?
降りて来る速度から見積もって、接触するのは恐らく1分後、自警団が十分なほどにいれば、陣形を組み直すくらい出来るだろう。
しかし、こちらに残ったのは見たところ3人。ナルシアと僕を入れても、戦えるのは5人だけだ。
おまけに今回は防衛任務。
別に転生してからこれまで、なにもしてこなかったわけではなく、父との稽古で自分の身は自分で守れる程度にはなったが、僕の本領であろう大盾は未だこの手にない。
ユニークスキルが目覚めていれば希望が見えるが、それもない。
(どう考えても戦力不足。残された道は避難先まで走り抜ける・・・!)
僕は走りながら考えた案を伝える。
「弓持ちは子供たちを誘導しろ!盾持ちと槍持ちは側面について追いすがる敵を引き剥がせ!ナルシアは2人から抜けたのに対応して!」
「「「おう!」」」
「分かりました!」
僕らは走りながら陣形を作り、子供たちを囲うと、いっそう速度を上げて走り出す。
早く動けないものは大きいものが背負い。出来る限り密集して的を小さくする。
そしてついに、魔物が僕らに牙を剥く。
最初に飛びかかってきたのは、錆びたボロボロのナイフを手にした緑色の子供のような魔物。ゴブリンだ。
竜の眼は全てを見通す事ができるが、代わりに全てを見通すには、時間がかかる。
ここは相手の手札を見極める!
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名前:------ -歳
種族:------
レベル:-
生命力:-
魔力 :-
攻撃力:-
防御力:-
敏捷力:-
運命力:-
●種族スキル
○異種族妊娠
●スキル
○短剣:C
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種族スキルには一言申し付けたいが、一番強いのはこの程度で、後は棍棒とか剣のDランクがいるだけだ。弓などの遠距離武器はハイドしている敵にもいなかった。
とりあえず、遠距離攻撃は心配しなくて良いので、目の前のゴブリンに集中する。
拳を構え、竜の鱗を発動する。これだけなら、取り合えず魔力は消耗しない。その分脆いが、ゴブリンの一撃なら何度でも受けきれる。
(大丈夫だ。僕のやることは---殺すことじゃない)
いよいよゴブリンがナイフを僕に向かって降り下ろす。
ステータスを確認した後気付いた事だが、竜の眼には特殊な能力に加え、化け物じみた動体視力がある。
それをフルに活用し、僕は竜の鱗に滑らせるようにナイフを受け流し、それが地面にぶつかるとき、踵で踏みつけ、刃をへし折った。
ゴブリンは大きく体を揺らし、それでもこらえて両足で立つ。
そして、振り返る瞬間、軸足に足を引っかけ転かすと素手でゴブリンの足を持ち、後続のゴブリンに投げつけた。
縺れ合うように団子になるゴブリンたちは、協調性もなく我先に立ち上がろうとして上手くいかず、じたばたもがいている。
そしてそのまま走ってくる3つ目の群れに潰される。その中にも足を引っかけて踏まれて息絶えるゴブリンが出て、それにも引っ掛かるという連鎖が起こる。
多くの人は、そのまま殴って倒した方が楽だと言うだろう。
だが、これにもやむを得ない訳がある。
この世界には『レベル』という概念がある。
僕の攻撃力はB判定だ。だが、レベル1のB判定にすぎない。
母が言うには、『レベルとは魂の格』らしい。
勿論。同じレベルの物同士で、ランクに差があると、大きい方に分がある。が、判定で劣る物でも、10もレベルで勝れば、勝利を納められるというのだ。
とどのつまり、B判定だが、レベル1のままの僕で、殺しきれる自信がなかったのだ。
よって僕が選んだ手は時間稼ぎだ。
面倒だがこれが生き残るに最適な手段だろう。
群れから離れた個体を、無力化して投げる。他にいないときは股関節を外して予備の弾として放置する。これを延々と繰り返し、敵の気を引く。
たまに適当に投げられた武器が飛んできたりするが、全て僕と盾持ちで叩き落とす。
そしてゴブリンが残り10匹になったとき、ナルシアの声と共に希望が見えた。
「坊ちゃっま!麓がみえました!」
「よし!後もう一押しだ!」
「「「オォ!!」」」
麓が見えたなら避難先まで目と鼻の先だ!このまま逃げ切る!
子供たちみんなが坂を下りきり、森へ駆け出す---
---プキュ---
---その刹那、どこかで蛙が潰れたような声がした。
『ピキュァァァアアアアアア!!!!!!!!!』
「ガッ!!?」
「これっ、は・・・!」
「マンドラゴラ、だと!」
辺り周辺に悲鳴の爆音が撒き散らされる。
マンドラゴラ。元の世界では死を呼ぶ叫びをあげるとかなんとか言われていたが、ここではせいぜい叫ぶしか脳がないキノコだ。問題は馬鹿みたいなそのボリュームだ。
普通だと皆踏まないように注意したり、耳栓をしたりと対策はするが、今回は不意打ちだ。
子供たちは両耳を押さえて踞り、自警団も片膝を地面に落とす。
しかし、彼らはすぐ立ち上がり、避難を再開しようとした。
---だが、事態は深刻だった。
『みみが、みみがぁ・・・!』
『きこえない、なんにもきこえないよぅ!』
村には、ナルシアのような獣人がたくさんいる。そういうもの達は、大抵五感が他の種族より高い。
そして、今回それが仇となり、獣人達はほとんど皆が聴覚に異常をきたしていた。それを逃れたナルシアも少し足をふらつかせている。
「くっ!早く騒ぎを止めないと」
僕は離れたところから子供たちの方へ走り出す。
その時、木の影から大きな影が見えた。
いつから、その存在を忘れていたのだろう。
それは、山の頂上に立っていた影に瓜二つだった。
その魔物は一直線に---子供たちに向かっていた。
「くそっ---たれーーーーーー!」
子供たちは走ってくる魔物に気付いたようだ。皆が近くで踞る獣人達を支え、歩き出す。
魔物はその努力を笑うかのように、集団の最後尾に手を伸ばし、その大きな手のひらで、幼ない命を摘み取りにかかる。
僕は、勢いを更に増して子供の元まで駆け寄り、背中を押し出してから、魔物の掌に包まれた。
---ブチュ---
「ごふっ!」
静かに下半身がつぶれ、上半身がこぼれ落ちる。あちこちから悲鳴が聞こえるが、その手から漏れた所から、下半身が元に戻っていく。
まだ、即死じゃない。
僕は体勢を立て直し、再生した両足で地面に立つ。
そして僕は魔物の顔を強く睨んだ。
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名前:なし 10歳
種族:オーガ
レベル:20
生命力:A
魔力 :E
攻撃力:B
防御力:B
敏捷力:D
運命力:E
●種族スキル
○自己再生
〇狂戦士
●スキル
○格闘:B
○投擲:B
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「レベル・・・20」
ここまで来るともう時間稼ぎもなにもない、倒そうにも自警団やナルシアがいても火力不足。敏捷は低いが歩幅が大きく引き離せず、もし逃げれたとしても投擲で攻撃を受ける。
「一体どうすればぁっ!」
考えてるからといってオーガは止まらない。魔力を全力で竜の鱗に注ぎ込むが、紙のように引き裂かれ、受けた右腕が弾け飛び、体も大木に叩きつけられる。
そこから先はただの蹂躙。
オーガの一撃は竜の鱗もものともしないのに対し、僕の拳はオーガの硬い皮膚に拒まれる。
殴られ、抉られ、潰される。遂に大木は衝撃に耐えきれず、オーガの拳は僕ごと大樹を貫いた。
自警団の怒声にナルシアの悲鳴が頭に響く。
どれだけ死ななかろうがこれは効いた。視界がぐわんぐわんと揺れ、思考が黒く染まりそうになる。精神まではそう無敵とはいかないのだ。
それでも立ち上がろうと足を立てようとしたとき、足に違和感を感じたのだ。足が地面に埋っていたのだ。
「くっ!抜けない・・・!」
徐々に近付くオーガの足音。その眼に映るは好奇の感情。
このままでは遊ばれるだけ、遊ばれ続けるだろう。
だが、それでも子供たちからは意識は反らせた。あとはこのまま僕が的になれば。
そしてオーガの拳が僕の脳天めがけて飛んでくる---その瞬間、視界が金色に染まった。
それは幼なじみの背中だった。
「このっバカ!!」
この10年間。もう見慣れてしまった小さい背中。このときだけは、見たくなかった。
このままでは潰れてしまう。
死なない自分のために、無駄に命を捨ててッ!!!
「そんなのッ!認めねぇぇぇえええ!!!!!!」
---そこで僕の意識は途絶えた。
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「なに、これ」
急に世界が蒼く包まれた。
何か魔物が攻撃しているのかと思ったけど、そうじゃない。
「あたた、かい?」
勿論こんな光景は見たことない。だけど、懐かしい感じがする。
そんな優しくて幻想的な世界は、すぐに空に溶けて消えた。
「そうだ、魔物は?」
突然の異変で驚いたけど、ついさっきまで魔物の攻撃が迫っていた。なのにまだ何も起こっていない。
咄嗟に魔物の姿を眼に映し、驚く。
---そこにはただの肉片しか残っていなかった。
ここでもう一章切ろうかな?それとも続けようか・・・。意見もらえたら嬉しいです。
8/28違和感のあるとこを修正