暴虐は飲み込む
パトラ〇シュ・・・僕もう疲れたよ。
8/26イベントを前後で入れ換えました。
「ナルシアッ!父さんはいるッ!?」
玄関の扉を力一杯開き、大声でナルシアを呼ぶ。少々行儀が悪いが、今はそんなことに構っている訳には行かない。
「どうしたんですか?坊ちゃま?」
「魔物が出たッ!それも500以上ッ!」
以前、我が家の皆には種族スキルの効果についてはしっかり話しておいた。
今回はそれが功を創したか、ナルシアも何故分かったなども聞かずに、すぐに質問に答えてくれた。
「旦那様は鍛錬場です!」
「ありがとう!」
そこなら、自警団の人たちもいる!好都合だ!
人を避け、木に登り、屋根を伝い、出来る限りの近道で目的地に向かう。
そして、ようやく鍛錬場の入り口が見えたと思うと丁度父が出てくるところだった。
「父さんッ!」
「どうしたアイン?なにがあった?」
「魔物がジャバックさんの森の方にいるッ!数は500ッ!」
「・・・分かった。今自警団に話をつけてくる。アインは母さんを頼む」
そこにいつもの優しい表情はなく、代わりに緊迫した雰囲気を纏った父がいた。
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話はすぐに広まり、避難準備は夕方には整った。
計画としては、多少もめ事はあったようだが。西にある森の正反対にある、ここらへんで一番大きな都市に避難することになったらしい。
その際、厳しい山道を通ることもあるので、母さんのように体調の芳しくない人たちは、手押し車で運ぶことになった。
「母さん。大丈夫?」
「大丈夫よアインちゃん。何かあっても自警団の皆さんがどうにかしてくれるわ」
「まかせな奥さん!」
「そうしないと俺たちが旦那さんに殺されちまうしな。坊主も前に戻りな」
「分かりました。母さんをお願いします」
このまま僕がここにいてもやることはないので、大人しく前の子供たちの元へ向かう。
避難時の陣形は、僕とナルシアを先頭に置き、7才から10才までの子供を僕を中心に配置し、その後ろに老人などを乗せた3台の手押し車を、他の大人たちが押す。最後に父を殿にして、周りを自警団で固めることになっている。
子供が中心にいないのは、危機察知能力の高い僕と、子供たちからの信頼の厚いナルシアの近くにいた方が対応しやすいためだ。僕の能力についてはユニークスキルと言っておいたので、直ぐにこの配置は決まった。
「父さん!皆配置についたよ!」
「よし、それじゃあ出発だ!!」
そして、それに応じて小さな声が上がる。
こうして避難は始まった。
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「坊ちゃま。敵は見えますか?」
「いや、居ないね」
「なら、これで森は抜けたな」
幸いにも森を歩いているときは、魔物の襲撃はなく。村人も安全に避難できた。だが・・・。
「問題はここから・・・だね」
村の東にある岩肌が丸見えになっている岩山。この避難での山場になる場所だ。
冬が近くなり、寒くなっているのはもちろん。天気もすぐに変わりやすい。おまけに身を隠す物もないというスニーキングミッションの大敵のような場所だ。前者だけで子供は厳しいのに奇襲の心配もとなるとさすがに普通じゃ無理がある。
だが、そこに僕がいるとほぼ絶対に後手に回ることはないので、それが可能になると判断したらしい。・・・こんな子供になに期待してんだか。
でも、力を振るえず歯噛みするよりずっと良い。
「岩影に獣形の生物を1匹発見。アーチャーはこれより敵をおびき寄せるので構えを」
「了解」
合図が帰ってくると、僕は子供たちから受け取った牛の生肉のはいった袋を岩の付近に投げ付ける。
そしてその臭いに連れられたか、岩影から獣が出てきたところを。
「---てぇ!」
ヒュッ!
『キャンッ!』
合図を出して止めを刺す。相手は即死。どうやら狼のようだったらしく、中には仲間を呼ぶやつがいたり、その声に誘われてくる魔物もいるから運が良かった。
「すげえな、坊主」
「安心するには早いよ」
そして一行は先に進む。
避難は順調に進み、このまま無事に終わる---皆そう思っていた。
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「やっとここまで来たか」
「全くだな。まあ坊主がいるから、比較的楽なんだけどな」
自警団が気を抜いたように笑っている。無論小声でだが、それが子供たちにも聞こえたのか、弛緩した雰囲気が伝わってくる。
「アイン。疲れてない?」
「大丈夫だ。それより皆崖から落ちるなよ?助けようがない」
そしてまばらに聞こえてくる了承の意を込めた言葉。
「本当になにもなければ良いんだが」
---そう呟いた瞬間。
ガラガラガラガラガラガラガラッッッッッ!!!!!
後方から悲鳴と崩落音が聞こえてきた。
「まさかッ!」
振り替えって見えたのは、ごっそりと削り取られたかのような道だけだった。そして被害を確認すると---1台、手押し車が足りない。
「岩崩か!」
僕の能力は索敵だ。あくまで敵を探すだけ、自然現象は全く予見できない。
「い、イヤァァァッッッ!」
子供組の女の子が悲鳴を上げる。
これはッ---!
僕は悲鳴を上げた女の子の元に走り、その頭を抱え込み、そのブロンズの髪を撫でる。
「大丈夫だ。落ち着いて」
「ぁあ、あ」
「きっと、皆無事だ。皆助かる。だから・・・先に進もう」
「・・・んぅ」
この状況で、恐怖が広がることだけは避けなければいけない。今のところ、それは押さえられているが、いつ再発してもおかしくない。
「父さん!無事!?」
「ああ!手押し車に乗っていた人たち以外はいる!そっちは!」
「子供たちに欠員はない!僕たちは先にいく!父さんも後から来て!」
「分かった!」
言質をとり、女の子が落ち着いたと思うと僕はその子をリズニアに託して顔を上げ、山を見上げる---そこに、大きな人影があった。
「くそッ!走れ!」
岩崩の音に呼ばれたのか、小さな悲鳴に誘われたのか、いずれが正解なのかは分からない。
そこには、この避難において、最もみたくなかった物が---魔物が立っていた。
(先回りされてたのか!?)
そして魔物は駆け降りる。
突然の悲劇に足を止める、憐れな人間達の元へ
一章前編っていったところでしょうか?
次らへんで終わらせますね。
8/28違和感の修正