暴虐の気配です
Pv2500いった!ってはやすぎぃぃぃッッッ!!!
「坊ちゃま。リズニア様が来ましたよ」
「ありがとう。ナルシア」
部屋の扉が開かれ、ナルシアの声が聞こえる。
僕は椅子から立ち上がり、入口まで来ると振り返えってベットに身を横たえている人物に声をかける。
「それじゃあ、行ってきます---母さん」
「行ってらっしゃいアインちゃん」
音を立てないようにゆっくりと扉を閉め、僕はナルシアの待つ玄関へ向かう。
ナルシアと会って、もう10年もたつ。
僕はもう12才になり、もう大体何をやっても不思議がられない程度には外見的にも成長した。
だからって、両親の親バカっぷりは収まることは無いが。それと同様に、村の状況も、ジャバックさんの恋愛事情も全く持って変化はしなかった。
しかしそれでも何もかも変わらないわけにはいかなかった。
---母の容態が悪化したのだ。
もとより、母の体は丈夫じゃないことは知っていた。母自身は僕に気付かれないように注意していたようだが、僕がいないところで、薬を服用したり、せき込んだりしていたことはたびたび目撃している。
だからといって、それに気付いているからといって、それを本人達に言ってわざわざ気まずい雰囲気にする必要も無いので、黙ってはいるが、母はもう長くはない事は、僕も十分理解しているつもりだ。
そうこうしているうちにもう玄関についた。玄関にはバスケットを手に持ったリズニアが立っている。
今やリズニアは、胸や伸長こそ無いが、幼さの中にほんの少しの色っぽさをはらんだ美少女になっている。まあ、同い年だが本人の気質ゆえに、どうしても妹みたいな扱いになるが。
「お待たせ、リズィ」
「ん、大丈夫。そんなに待ってないから」
思えば、リズニアとも随分仲良くなったものだ。僕はアインだがら略称も何もないが、名前で呼び合うのも随分と自然にできるようになった。
僕はリズニアからバスケットを受け取ると、外に出るように促す。
「それじゃあ行こうか」
「うん」
畑の合間を縫って歩き、丘を上って行く。目指すはジャバックさんの木材置き場だ。
村の一員になるということは、当然仕事は任される。
だからといって、前世では現代っ子まっしぐらで土いじりすらしてこなかった身だ。畑仕事なんて出来るとは思っていない。
だから自分でも満足にできる仕事を探すと、危険性などの観点より必然的に荷物運びをする位しかなかったのだ。
最初は寂しく、ジャバックさんと2人で仕事をしていたのだが、僕が働きはじたのを聞いて、最近リズニアも昼食などの手伝いをするために来るようになった。
「ああ、アイン君。来たね」
「お待たせしましたジャバックさん」
「大丈夫だよ。木もいつも通りの場所においてるから」
「分かりました。リズィ、それじゃあ後で」
「うん」
そう言うとリズィはバスケットを持って走って行った。
「よし、やるか」
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「うん。今日はこれで終了だよ」
「お疲れ様でした」
ふう、今日は大分丸太が多かったな。色々道具を使うとはいえ中々にしんどいものがある---があくまで精神的な問題だけだ。
どうやら、この世界では生命力はライフはもちろんスタミナや、抗体の強さも兼ねているらしい。現に僕は生まれてこの方、息切れも病気もしていないし、徹夜をしても眠気はない。ついでに筋肉痛もしないのをいいことに調子に乗って筋トレを無制限に続けたので攻撃力も敏捷力も今やB判定だ。あるだけ困る訳じゃないしね。
「お疲れ様。食べる?」
「うん。貰おうか」
リズニアの方も今日の仕事は終わったらしく、バスケットを持って丸太に座る。
今日の昼食はサンドイッチと簡単なものだが、リズニアは普通に料理がうまい。以前リズニアが我が家に押し掛けたとき、作って貰ったスープは極上のものだった。
そんな彼女が作ったのだからおいしいのは当然。のんびり食べていても、直ぐになくなってしまった。
「ごちそうさま。美味しかったよ」
「そう、良かった」
それから、村にあった竹のような木を使って作った水筒を取りだし、一服する。するとリズニアが心配そうな声で訪ねてきた。
「アイン。イルナスさんの様子はどうなの?」
「母さんか」
母は村のいろんな人から心配されている。それはリズニア一家も同じだ。彼らはたまにしかとれない珍しい薬草を度々持ってきてくれるが、それが母の体調の改善に役立っているとは、今は当然思えない。
「いや、どうも治す手段が間違ってるみたいだ。父さんの持ってた薬も効果がなかったし」
「そう・・・」
「でもな、僕はいつか、何年かかっても母さんを助けたい。だから・・・」
特に目標もなにもなかった今生。今は目標がある。
神頼みでも悪魔に頼ってもこの身を犠牲にしても母を元の母のようにベットから立ち上がらせる。
無論出来ると思っていない。そんな方法があるかも分からない。父に言ったらどやされることは分かってる。だから、これを知ってるのはリズニアだけだ。
最初はそれを聞いたリズニアも泣きそうな顔をしていたが、今はそれも受け入れてくれている。全くもって強い子だ。
「うん。いつか・・・見つかるといいね」
「そうだね」
なんだかしんみりしてしまったが、家でも多少はやることはある。
僕は腰をあげるとリズニアの手を取って---っ!?
「あれは・・・」
「どうしたの?」
僕はジャバックさんの仕事場である森を、竜の目を強く意識して睨む。そして見えたのは---
「生体反応・・・500以上!?」
それも動きからして、それらしい形はしているが、人間のような行動を取っているものは1つもない。
「あれは---」
以前。1度だけ父に連れられ、見たことがある。
曰く、それは人の生に仇なすもの。
曰く、それは世に破滅をもたらすもの。
曰く、それは神の不倶戴天の敵であるもの。
「---魔物」
のどかで静かないつも通りの村の日常。それが今、脆く崩れ落ちようとしている。
さて、そろそろ巻きで行こうか。
良かったら評価とか感想とか欲しいです。それで多少はペースが上がります。てか上げます。