入城しました
お待たせしましたー。・・・いや、ほんと、すいません・・・。
「はぁー・・・」
口をポカンと開けて大きな城門を見上げる。
玄関は家の顔って言うけど。それに似通ったものがあるのだろうか?かなり立派に作られている。護衛の3人は先に中に入って話をつけている。
真っ赤な扉は優美な金の装飾が施されており、そして大きい・・・大きいんだけど・・・。
「この門ちゃんと開くのか・・・?」
パッと見ても某海賊漫画の監獄の門よりも大きいんだけど。あいや、流石に正●の門よりは小さいけどさ。
でもあれってしっかり歯車とかそういう機械的なもので開けてたような気がする。そこまで技術的に成長しているのか、この世界は?
「もしかして過去に転生者がいたのか・・・?それとも勇者的な・・・」
「何を考えてるのか知らんが早くいくぞ。結構な人数にお前を紹介しなければならないからな」
うへぇと辟易しながら僕は歩みを進める。貴族の類いに憧れは多少あったけど、実際なってみると話は別だ。皆ではないだろうが性根が腐った貴族も中にはいるんだろうな・・・。
「憂鬱だ」
聞こえているのだろうが、義父殿の足は止まらなかった。
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大きな扉の端っこの小さな扉から僕たちは城内に入った。
大きい方開けろやと思わなくもなかったが、お忍びでガルロスは外出しているのだから、当然の処置とも思えた。
これまた広い玄関を歩いていると、初老のおじいさんが立っていた。その顔はニコニコと笑っている。
「お帰りなさいませ、ガルロス様」
「ああ、今戻った」
それなりの身分なのか、とても仕立ての良い服を着ている。流石本物は前世で見たコスプレとは訳が違うな。今や僕の服もそれは立派になっているけど。おじいさんは相変わらずニコニコ笑っている。
「全く、急に城をお空けになって驚きましたよ」
「申し開きもない」
ガルロスがしれっと謝罪する。絶対反省してないだろ。
おじいさんはそれでもニコニコ笑って・・・ん?
「本当に・・・そう思っていただけたなら今後この様な真似は控えて貰えれば嬉しいですなぁ」
違うわこれマジギレして逆に笑ってる顔だわ。
「それでこいつがアイツらの息子だ。話の通り今日からは俺の息子になる」
この野郎僕を盾にして逃げようって魂胆だな。一見して分からないが、結構な力で背中押されてる。
もし僕がただの農民同然の生活をしていた12歳だったらゲームオーバーだったぞ。僕は1歩先に進み出てお辞儀する。
「始めまして。アイン・メルディウスです。何かとお世話になることもありますでしょうが、よろしくお願いします」
一瞬イフリートまで名乗った方がいいかもしれないと思ったが、まだ僕が王族になることが認められたか分からないのだ。無難に名乗らないことを選んだ。
それが効をそうしたのかおじいさんの笑顔が好好爺のそれになる。
「そうですか、貴方があのお二人の・・・。この国の政を管理させていただきます、アレク・ウィスプです。私は貴方を歓迎しますよ。アイン様」
「様なんて畏れ多いです。アインで結構ですよ」
「この国は君主制。お世継ぎには丁重にお相手しなくては」
そこでちらっとガルロスを見て嘆息する。
「しかし貴方はまだ成人していないのにご立派ですね。それに比べ王という御方は・・・」
「ははは・・・」
アレクの溜め息は、出会って早速面倒事に巻き込まれた僕には大きく聞こえた。
話の流れを変えようと、ガルロスが咳をする。
「ところで侯爵達はいるか?1人でもいれば挨拶させようと思うのだが」
「いませんよ?どこかの王の不在がバレないように人払いしましたから。今や必要最低限の使用人しか城にはいません」
どうやら悪手のようだったが。ここまで華麗に藪をつついて蛇を出すとは。王様とはコントの才能もいるのか?
そのまま始まったお小言の嵐をぽけーと眺めていると、肩を叩かれた。振り返るとハドルが立っている。
そう思った瞬間彼は額に青筋を立てて口を開こうとしたが、どこからか矢が飛んできて彼の鼻先を掠めて、窓の外に飛んでいったのを見て顔を青くした。・・・何をしてるんだコイツ。
「ちょっと失礼なことを考えてた気がするがまあいい。ああなったらアレクのオヤジはしばらく止まらねえし、挨拶する相手も今のところいねぇ。なんかあったら呼ぶから庭園で遊んでいろ」
「いいの?」
良かったとしても行き方が分からないんだが。
「案内ならルナリスが奥で待ってるから、捕まえてお願いしとけ」
「分かった」
別に小言が終わるまで待っておく必要もないのだし、僕は迷わず部屋の奥に向かった。
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「じゃあゆっくりしていってね」
「はい。ここまでありがとうございます」
さて、庭園か・・・。予想はしていたがここもまた広い。だが、雑草は一本もなく、ジャングルや森のように鬱蒼となっていない。庭師の皆様ご苦労様です!
まあ来たはいいけどやることないな。茂みとかはあるが、見渡しが悪い訳じゃないので迷いはしないだろう。
「とりあえず・・・どこまであるか知りたいな」
僕は庭の中を突き進む。
この前の逃走劇とは違い、雑草を踏み倒して進んだり、獣に気を付けないでいいので、楽に進めた。
「ん?蝶々か?」
ふと気づくと、頭の上に白い蝶々が留まっていた。
蝶々は気づかれたのを悟ったのか、ふわりと飛び上がり、茂みの奥に進んでいく。
「どこいくんだ?」
もしかしたら花畑があるのかもしれない。前世でも数えるほどにしか見なかったし、見てみるのもまた一興か。
茂みを掻き分け僕は進む。それなりに苦戦して、開けた景色は、視界一杯に広がる花畑だった。
「ビンゴ・・・とは言えるがある意味予想外だったな」
何せ学校のグラウンド並みに広いのだ。そこにあるものが何か分かってても度肝を抜かれるだろう。
周囲には沢山の蝶々が飛んでいる。まるでここだけ時間の流れが止まっているかにように静かだ。
僕は花を出来る限り踏まないよう花畑を歩く。すると、一ヶ所不自然に蝶々が多い場所があった。
「甘い蜜でもあるのか?」
僕はゆっくりその場に近づいていく。少しずつ、ゆっくりと。
あと一歩の所で蝶々がそこらじゅうに飛び上がった。色とりどりの羽が宙に舞う。
「ん・・・ぅ・・・?」
足元から小さな声が聞こえた。見下ろすと幼い少女が寝ぼけ眼を擦っている。
彼女は人形のように整った顔にウサギのように紅い瞳。今にも壊れてしまいそうな儚く細い体に---
---母と全く同じ白い髪をしていた。
姫様の名前は決めていません。また暫く投稿が空くので募集します。髪だけを強調したのは物語後編で分かるかなー?




