それこそが罪だと、 (シリーズ番外掌編)
行くあてのない異世界人とその庇護者。それだけで終われなかった『私』と『彼』の話。その、いつかにあったかもしれない、番外掌編。
「おやすみ。……いい夢を」
彼が微笑む。私はただ、頷く。
そうして彼に抱き締められながら、眠りにつく。――それが『当たり前』になってしまってから、どれだけ経っただろう。
本来彼は、こんな他者の誤解を招くような行為をする人じゃなかった。それを、――捻じ曲げてしまったのが私という存在であることは、もう今更考えるまでもない。
無知で愚かだった私が、彼の下から攫われて、そうして彼に助けられて。
ごめん、と泣きそうな瞳で、鎖につながれて閉じ込められて。
……多分、それくらいの頃からだったように思う。
私がここに居ることを、生きていることを、確認するみたいに、抱き締めて眠るようになったのは。
それから、徹底的に『敵』を――そう成り得る存在を排除するようになった彼を止めるため、そうして、私のせいで理不尽に殺されたひとの仇討ちを名目に、屋敷を襲われてから。
それは眠るときのの習慣になった。彼が屋敷にいるときは、夜でなくとも。
声すら、彼に届けられない私は、ただそれを受け入れるだけだった。安らぐようにと名を呼ぶことすら、できないから。
私が彼の名を、最初から呼ばなければ。
もしかしたら、違う未来があったのかもしれないと、時々、そんなことを思う。
……ただの、仮定の話だけれど。
いつか失うことに怯えて、彼は私を抱き締める。
抱きしめ返すこともできない私を、それでも毎晩。
それは言葉よりも雄弁に、いなくならないで、と伝えてくるから。
私はただ、彼の腕の中で、目を閉じるのだ。
お題:ラストは眠り 制限時間:15分 で挑戦したもの。若干加筆修正済み。
「確かに恋だった」お題botさんの「抱きしめて眠る癖が、」というお題も意識しています。
名前を呼ぶネタと声を失うネタはちらっとでもちゃんと書きたい欲求があったりなかったりするのですが、ただその場合『彼』の名前が必要なので迷っていたり。
むしろアナザーエンドを書きたいような気持ちもあったり。




