あなたを解放する日
「今日を命日にしようと思うの」
「え、ゆきちゃん死ぬの!?」
「……どうしてそうなるの」
唐突な発言だった自覚はあるけれど、まさかそんな返しをされるとは思わなかった。私は顔良し頭良し性格良しの三拍子揃った幼馴染を見つめて溜息をつく。
なんだ、よかったー、と本気で安心していた幼馴染――貴月冬真は、そんな私にきょとんとした顔で問う。
「え、じゃあ何の命日?」
私はすぐにその問いには答えなかった。ただ、少しだけ、昔を思い出した。
私と冬真は幼馴染だ。お隣さんで親同士も幼馴染、生まれたときから一緒にいるといっても過言ではない。きょうだいのように育ったし、親戚なんかよりもずっと近い、家族に等しい存在だった。
ただひとつ、一般的な幼馴染と違うところがあるとすれば、冬真は『私の言うことを何でも聞く』ということだろうか。
それは、わがままを聞いてくれるというような、そんな軽いものじゃなくて、文字通りの意味で。
冬真は私がどんな無理難題を言っても、何をおいてもそれを遂行しようとする。してしまう。『ひとりにしないで』と言ってしまったあの日、本当に私から片時も離れずに過ごしたように。
冬真は、私に負い目がある。だから、何をおいても私を優先させる。
その様を皮肉って、陰で『犬』と呼ばれてしまっているほどに。
最初から、こうだったわけではなかった。
ただの、事故。不幸な偶然が重なっただけ。けれどそれは、冬真に目に見えない枷をつけた。私が望むと望まざるに関わらず。
けれど、それも今日で終わりだ。――終わりに、する。
「そうね、言うなれば――……犬の、命日かしら」
笑った私に、冬真はただ、不思議そうな顔をした。
わからなくてもよかった。それはただの、私の自己満足だったから。
似合わない、不名誉な呼び名を、無くすために。
私ができることが何かなんて、知っていた。
お題:犬の命日 制限時間:15分 で挑戦したもの。若干加筆修正済み。
大切で、大切だから、すれ違うふたりの話。




