喪失を礎に、世界は回る。
「――馬鹿なことを……っ」
長い旅路を共にした仲間は、そんなふうに私を、私の行く末を憐れんだ。
私はただ、笑っていた。
そんな、旅の終わりのこと。
* * *
「本当、君の阿呆さ加減には呆れるよ」
「開口一番随分とご挨拶だね?」
「そうされるだけの自覚はあるだろう。馬鹿だ馬鹿だとは思ってたけどまさかここまで馬鹿だとは」
「馬鹿馬鹿連呼されるとさすがに何とも言えない気分になるんだけど」
「馬鹿だから馬鹿って言ってるんだよ馬鹿。お人好しも行き過ぎると毒だね」
「いや、別にお人好しってわけじゃ、」
「――犠牲も献身も、君でなければならなかったわけじゃないだろうに」
ふいに温度を変えて呟かれた言葉に、戸惑って口を噤む。
そんな私をじっと見て、この世界の均衡を見つめ続ける『管理者』はため息をついた。
「まあ、もう過ぎたことだ。僕にはどうにもできないし、君にもどうにもできない。選択した時点で取り返しはつかない」
「そんなネガティブな言い方されるのはちょっと……」
「君が選んだのは、それだけの道だよ」
「だって、私が一番適任だった」
「そうだろうね」
「かえれないのなら、とことんまでやろうと思った。それだけのことだよ」
「馬鹿だね」
「そうかな」
「そうだよ。君は、馬鹿だ」
さっき連呼された時とは意味合いが違うことがわかってしまって、私は居た堪れない気持ちになる。彼に、こんなふうに思わせるつもりはなかったのに。
「君のこの先の全てとひきかえに、この世界は安定したよ。これ以上なくね。代わりに君は、未来永劫この世界に縛られる。生も死も、いつしか忘れてしまうだろう」
「それは、ちょっと怖いな。でも、そんなに悲惨な選択じゃないと思うよ」
「どこが」
「だって、君がいるでしょう」
「……」
目を丸くする彼に笑いかける。苦笑じゃなく、ちゃんとした、笑顔で。
「君がいるから、私はあの時、最善を選べたんだよ。喪失を悲観せずに、自分の意志で」
それは私の誇れることだと、胸を張って言える。
「……やっぱり、馬鹿だよ」
消え入りそうな声で呟いた、彼の瞳が揺らいでいたのは、見なかったことにした。
そんな私の、永劫に続く、異世界の話。
お題:打算的な喪失 制限時間:15分 で挑戦したもの。微妙に加筆済み。
ふわっとベタな異世界ファンタジー。
またこういうネタか!と自分で思いつつも好きなものは好きなので仕方ないのです、と開き直る。




