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物語の切れ端。  作者: 空月


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幼馴染な騎士団長様と策略と。




 私の幼馴染は、宮廷騎士団長様である。

 金髪に碧眼という王子様然とした(いやこれは前世の記憶による偏見じみた先入観だが)きらきらしい色彩に負けず劣らず顔の造作もきらきらしい、清廉潔白ですと言わんばかりの笑顔がトレードマークの団長様である。

 しかし残念ながら、私はそのご尊顔やら物語の中の騎士じみた偉業やら所作やらにきゃーきゃー言える身分ではない。

 何せ幼馴染である。知りたくもない知らない方が幸せな部類の色々も知ってしまっている。



 第一に、あいつほど策略という言葉が似合う人間はいないと断言できる。

 アレは心の底から他人を自分の思うままに動かすことに喜びを覚える、ちょっと――いや大分か――歪んだ人間である。

 策略家、と言えばまあまだ聞こえはいいような気もするが、あれはもう性癖のレベルだ。


 あいつの身近な人間で、あいつを褒め称える奴がいたら、そいつは『そういう』ふうにあいつにハメられた人間だということになる。それ以外はあいつの悪魔じみた策略を身をもって知っているので、褒め称えるという行為はできないに違いない。よくて褒め称える言葉への相槌レベルだろう。



 そんなあいつは、最近また何やら新しい策を練ってあちこち暗躍しているようだ。策を練るのは戦のときだけにしていただきたい。

 まあ、策を練らないあいつというのは陸に上がった魚というかそんな感じで、そのうち死にそうなのでもう諦めてもいるが。



 そういうわけで、いつものことだと放置していたのがいけなかったのだろうか。



 いつものようにいつものとおり、お仕事という名の読書タイムを満喫していた私の元に、前触れもなくあいつがやってきた。

 それ自体はまあいい。よく、とは言わないがたまにあることだ。多くの人間には『清廉潔白な騎士団長様』の仮面をかぶっているものの、時たまそれを脱ぎ去りたい気持ちになることもあるのだろう。


 なので私はいつものように、半分無視しつつ、一応気配は探っていたのだけど。



 何故か今日は、きらきらしい騎士団長様の笑顔を向けられている。なにこれこわい。



 いや、こいつはだいたい私から見れば胡散臭い笑顔を浮かべているのだけど、こうまできらきら光線を振りまいたりはしない。無駄だからだ。


 だというのに何故。

 心の中で戦々恐々としつつ、しかしページをめくる手は止まらない。だって続きが気になる。



「相変わらずだね」

「……そちらも相変わらずそうでなによりだ」



 皮肉なのか嫌味なのか、もしかしたらどちらでもないかもしれない応酬。しかし中身はない。



「今日は君に、知らせを持ってきたんだ」

「知らせ?」



 騎士団長様直々に、となるとなんだろう。もしや我が兄とも慕うこいつの兄に異変が! ……あったら流石にここまでのんびりしてないか。



「実はね、僕と君の婚約が決まったよ」



 ……ホワイ?


 おっと思わず言語中枢が乱れた。懐かしすぎる前世から更に懐かしい外国語まで引っ張り出してしまった。


 聞き間違いだと信じたかったが、さすがにこの静寂溢れる図書館で聞き間違えるほど私の耳は衰えちゃいない。


 そうして仕方なく本を置いて仔細の説明を求めた結果。

 騎士団長様のここ最近の策略の的が自分であったことを知って、何故あのときに止めなかったのかと私は心から後悔することになったのだった。




お題:あいつと策略 制限時間:15分 で挑戦したもの。微妙に加筆修正済み。


人をハメるのが好きな騎士団長様と、そのマイペースで本の虫で実は転生者な幼馴染の一幕。

外がなければいいかと放置してたら思いっきり自分にも害があったので、きっとこのあとはなんやかんやで主人公はいろいろ足掻くに違いない。

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↑反応があると軽率に続きを書いたりするかも
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