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物語の切れ端。  作者: 空月


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とある世界の錬金術師と悪魔の話。




「毎日毎日毎日、よくもまあこんな穴ぐらで陰気に研究なんぞできるものだな?」


 皮肉たっぷりの声には反応せず、私はひたすら実験結果を書き留める。


「虚しくなったりしないのか? 馬鹿げた夢想を実現させようと足掻くなんぞ、不毛なことをして」


 そんな言葉は言われ慣れている。私はやはり顔を上げずにそれを聞き流す。


「たったひとり、いつまでしがみついているつもりだ? いい加減に俺も呆れるぞ」


 好きに呆れればいい。そもそも工程からして錬金術に孤独はつきものだ。たとえ研究者そのものが一人になったとして、なんの問題があるだろう。


「おい、聞いているのか」


 さすがに焦れたのか、僅かに声に不穏なものが混じったので、嫌々視線を上げる。

 そこには――悠々と宙に浮かぶ、魂までも奪われそうな凄絶な美貌の男がいた。


「聞いているけれど、反応する理由がない。私に何を求めてるんだ」

「その馬鹿げた研究をいい加減やめろと」

「私がこうしていて君に何の不利益があるというんだ。放っておいてくれ」

「何度も言っているが、断る。俺はお前の魂を手に入れたいんだ。その魂を更に美味なものにするために、お前にはこんな陰気な場所で生活するのをやめてもらわないとならない」

「それは全て君の都合だろう。私は今の生活に満足している。魂などはどうでもいいが、私の研究の邪魔をするというのならさっさと君を排除したいというのが本音だ」

「実を結ばない研究などさっさとやめてしまえ。お前の悲願は叶いはしない。卑金属を金属に変えるだの、不老不死だの――そんなものを科学とやらで為そうなどとは愚の骨頂だ」

「非科学的な存在たる君にだけは言われたくないな。私は私の信念の元、錬金術を研究し続けているだけだ。君の指図など受けないし、君の希望通りの行動も取らない」

「強情な」

「それで結構。そうでなければ、世界すら違う場所で変わらず生きていくなどできやしない」


 世界の成り立ちから、構造から、あらゆるものの異なる世界で、以前と同じような錬金術が行えるはずはない。だが、この世界の法則に合った錬金術を生み出すことはできるはずだし、それにはある程度成功している。

 ならばあとは、錬金術の至高を目指すほかないだろう。たとえそれが、魔法とやらで行なえるというのがこの世界の常識だとしても。

 それは私が、錬金術を手放す理由にはならない。


 だから私は研究を続ける。たったひとりの錬金術師となったとしても。それだけの話だ。



お題:孤独な錬金術 制限時間:15分 で挑戦したもの。


錬金術は厨二心を刺激しておいしいと思いつつネタとして消化するにはちょっと勉強不足でした……。

あと孤独なのが錬金術っていうか錬金術師になっている件。

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↑反応があると軽率に続きを書いたりするかも
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