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物語の切れ端。  作者: 空月


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ネガティブと整備士と出撃前恒例会話。





「ああ、いやだな乗りたくないな今日こそ墜ちるよ墜とされるよ撃墜されるよ」

「おい」

「ああ憂鬱だ、なんでこんな善き日に出動命令出るんだ絶対墜ちるよ見てよこの青空……絶好の撃墜日和じゃないか」

「おいって」

「ああやだな怖いな墜とされたくないな……愛しの蒼姫アズーレ・トワイライトと心中するのは本望だけどああでも蒼姫アズーレ・トワイライトは俺なんかと一緒に墜ちていい機体じゃないよな」

「おいっつってんだろうが」


 当てるつもりはないけれど当たっても構わないくらいの気持ちで投げたそれを、今しがたまでぶつぶつぶつぶつひたすら自分の世界に没頭していた男――残念ながらこれが私のパイロット(パートナー)である――は軽く避けた。


「ひどいな怖いよスパナは反則だよ」

「どうせ避けるから別に獲物はなんでもいいと思うが」

「やだな怖いな俺の整備士パートナー暴力的すぎるよ……」

「一回も当たったことない奴が言うな」


 溜息をつく。ひたすら鬱陶しいくらいのネガティブを撒き散らす、傍から見てると不安しか感じないパイロットだが、腕は随一だったりする。認めているけど認めたくはないという複雑な気持ちを抱かざるを得ない。


「ぐだぐだうっとーしいからさっさと乗り込め。調整終わったから」

「今日はあんまりいい天気で撃墜されそうだから乗りたくない」

「あんたどんな天気でも乗りたくないだろうが蒼姫が泣くぞ」

「じゃあ乗る。……墜ちたらせめて蒼姫アズーレ・トワイライトだけは助けてくれる?」


 上目遣いで窺う男に反射的にイラっとしてしまったのは仕方ないと思う。


「私が整備した蒼姫に乗ったあんたが墜ちるわけないから断る」

「それでも墜ちたら?」

「責任持って蒼姫修復して自殺してやるよ」

「そんな、自殺はダメだよ」


 あれだけ墜ちるだのなんだの言ってネガティブっている分、こいつは命というものをとても尊いものだと思っている。

 ちなみに私は命と誇りは概ね同価値だと思っている。自分に限るが。


「――だけどあんたは墜ちない」

「……」

「あんたが墜ちたら私の整備が不足だったってことだ。だけど私は自分の腕とあんたの腕と蒼姫を信じてる。――さあ、行ってこい」


 何度信頼の言葉を口にしたって懲りずにネガティブを撒き散らすどうしようもないパイロットだが、これが私の唯一無二のパートナーだ。

 だから今日も、私は笑ってこいつの背中を押すのだ。




お題:悲観的なパイロット 制限時間:15分 で挑戦したもの。加筆修正済み。


以前書いた『整備士のひとりごと。』と同世界設定。

ネガティブパイロットの背中を蹴っ飛ばすくらいのコメディでもよかったのに何故かいい話風味になったという。

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