『闇の天使』とやらの可能性について。
「闇の天使っていうのは天使なのか堕天使なのか、それが問題だ」
「何も問題じゃないよ」
また何か阿呆なこと言い出したな、と思いながら適当につっこみを入れる。阿呆なこと言いだした馬鹿は馬鹿だから気付かなかったのか脳内がそれどころじゃないのか――とりあえず適当さしか詰まってない返答には気付かなかったようだった。
ものすごく真面目な顔で、声で、とても重大な話をするように(もしかしたらこの馬鹿にとっては本当に重大なのかもしれない)続ける。
「いや、問題だ。『闇の名を冠しただけの天使』と『闇の名を冠されるだけの堕天使』じゃあ全然意味が違う」
「まあそれはそうかもね」
正直私には関係ないのでどうでもいいけど。
「『闇の名を冠しただけの天使』だった場合、つまりその本質は天使であるからして、闇というのも安寧だの安らぎだのといった穏やかな意味合いだろう。もしくは突然変異で色が違うとか」
「レアキャラ的な?」
「そういうことになる。天使は天使であるからして、私たちとは相反するものだろう。勧誘などできない」
「…………」
「だが、『闇の名を冠されるだけの堕天使』であった場合、つまりその性質は天使そのものとはかけ離れていると推測できる。堕落した天使というわけだ。罪を犯したなり悪徳に染まったなり、その辺りの事情はどうでもいいとして、性質はつまり私たちに近いと考えられる。故に、勧誘を視野に入れるべきだ」
「……ねえ、さっきから気になってたんだけど。何、勧誘するの?」
「無論だ」
当たり前だろうとでも言わんばかりのきょとんとした顔で即答された。殴りたい。
「あのさぁ、まあ百歩譲って勧誘するのはいいよ。仲間欲しいんだねさみしいんでしゅねーとか茶化してあげるよ。だけどさっきから明らかに私をあんたと一緒くたにしてるよね。心外なんだけど。私まだ人間捨ててないし」
「だが、死んだら私と同じものになるだろう」
「それもお断りする姿勢だって何度も何度も何度も何度も言ってるよねこの馬鹿。その頭は飾りなの? 誘惑と智略の悪魔の呼称は詐欺なの?」
目の前の、頭の先から足の先まで人外らしい、凄まじい美貌の男を罵倒するのもこれで何度目だろう。数えたことはないし数えたくもない。
とりあえず、十発ほど殴っていいかな、とこいつが現れる前――平穏だった昔を思い出しながら思った私は想像もしなかったし、想像したくもなかった。
馬鹿が馬鹿なことを言いだした元凶たる『闇の天使』とやらまでもが、私の日々の平穏を脅かしに来るようになるなんてことは。
お題:闇の天使 制限時間:15分 で挑戦したもの。加筆修正済み。
若干キラキラしさの残る厨二ワードをどう料理すべきか、むしろ『闇の天使』って天使なの堕天使なの?……となってそのまま勢いで書きました。
誘惑と智略の悪魔(笑)と、死んだら悪魔になってね!と勧誘されてるひとの話。




