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物語の切れ端。  作者: 空月


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39/72

残念美形と戯言の話。




「愛してるんだ」


 麗しい顔に麗しい笑みを浮かべて、彼は言った。


「――足を」


 どう見ても変態だ。


「そんなドン引いた目で見ないでくれないかな」

「いやさすがに変態発言されて何事もなかったかのようにスルーするスキルは持ち合わせてなくて」

「せめてフェチって言ってほしいな」

「いやそれつまり性的倒錯だよ偏執愛だよ変態発言以外の何者でもないよ」


 そうかな、なんて憂いを帯びた表情で問いかけられるけど騙されない。フェチ=フェティシズムなんだから異常性欲で性的倒錯だよ心理学的には。


 そんな変態発言をした人物は、所謂幼馴染のようなものである。ただしちょっと歳が離れている。近所のお兄ちゃん、と言ったほうがしっくり来るし、血筋を辿れば遠い親戚だったりするので、親戚のお兄ちゃんみたいな立ち位置だったりする。


 そんな彼が変態発言をするのは別に初めてではないのだけど、毎回なんとも……残念な気持ちになるのは致し方ないと思う。

 何故なら、見た目だけは極上なのだ、この男。格好いいとかそういうイケメン的な感じじゃなく、美人というか美形というか、芸術品的に見惚れる感じの。


 そんな美形が、異性の足を愛してやまない異常性癖者だというのは、存外知っている人は少ない。

 家族は知っている、らしい。……というか家族揃って美形で異常性癖持ちなんだそうだ。何それ怖い。怖いので詳しくは聞いていない。近所の優しい美形一家の裏の顔なんて知りたくない。


 知りたくないのだけど、何故か私はそのうちの一人の性癖を知る羽目になってしまった。

 これは不可抗力というかなんというか、とりあえず偶発的な事故だったのだけど、それ以来彼はそれを隠すことをしなくなった。そして何故か遭遇率が上がった。意味がわからない。


 ちなみに私の足が彼の好みだとかそういうことはない。たまにじっと眺めてため息を吐かれる度に頭を叩いてやりたい気分になる。

 そんな考えがうっかり口をついて出ていたらしい。彼は僅かに首を傾けて、真顔で言う。


「別に、君の足が残念だっていうわけじゃないよ。ただ、これで足も好みだったらなぁって思うだけで」

「何ですかそれ喧嘩売ってるんですか」

「ううん。好きになる人と性癖って結びつかないなぁってしみじみしてるだけだよ」


 ……。


 何やら深く考えると幻聴にしておきたいような台詞が聞こえたけれども気にしないことにしよう。

 私は異常性癖者に口説かれる趣味はないのだ。うん。


 ひどいなぁ、なんて笑っている男にいつかオトされるなんて未来が来ないよう、ひっそりと祈ったのは――私だけの秘密である。


 

愛、それは足 制限時間:15分 で挑戦したもの。微妙に加筆修正済み。


変態的な足フェチ美形とそのご近所さんの平凡な女の子の話です。

恋愛的矢印を入れるかは実は最後まで悩みました。入れたほうがオチっぽかったのでこっちで。

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↑反応があると軽率に続きを書いたりするかも
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