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物語の切れ端。  作者: 空月


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37/72

この苦しみも痛みも罪も、




 人に剣を向けた。

 人を傷つけた。


 ひとを、ころした。


「……いつまで、そうやってるつもりだよ」


 生きたかったから。

 死にたくなかったから。


 そうすべきだと、思ったから。


 何を並べ立てたって、人殺しには違いない。そんなのずっと、知っていた。


「手放しちまえよ」


 声がする。ぶっきらぼうな、だけど優しい声が。

 お前だけのせいじゃないと、抱え込むなと、そんなふうにそそのかす。


 それが本心からだとわかるから、私はただ、笑う。

 そうして彼は、まるで自分の方が傷ついたみたいに、痛々しい顔をする。



 全部全部、選んだのは私だった。

 そうしない道だって、探せばきっとあったはずだった。


 だけどそれじゃあ、何も変わらないのだと、変えられないのだと、知ってしまったから。


 ……ああ、違う。

 そうしないことを選んで、真っ当な、綺麗な道を選んで。

 そうして全てが変わるまでに、苦しむ人も傷つく人も、見ていられなかったのだ。


 少数の犠牲を見過ごすことが、できなかっただけ。目の前で苦しむ人を見ていられなかっただけ。


 だからこれは私のエゴだ。エゴの果ての痛みで苦しみで、――誰のせいでもない。


 痛みを苦しみを、分け合おうと言ってくれる人たちがいる。

 差し伸べられた手を、だけど私はとるつもりはない。


 選んだのは、私。

 暗く汚れた道を、選んだのは私。


 だから、同情も共感も、協力も哀れみもいらない。

 ただ、黙って見ていてくれればいい。邪魔をしないでいてくれればいい。


 全部全部、持っていく。



 この苦しみも、痛みも、罪も。



「あげないよ」



 何一つ。この全ては、私のものだ。


「自己犠牲なんざ、誰も頼んじゃいねぇよ」


 自己犠牲? そんなもの、どこにも転がっちゃいない。

 私は私のものを、ただ抱えていくだけだ。

 ただ、欲張りな、だけだ。


 その優しさは、私には必要ない。

 どこかの心優しい、その優しさと潔癖さ故に苦しむような、そんな誰かに捧げるべきだ。……そうでしょう?


 

 笑った顔が、うまくつくれていたかはわからなかった。

 ただ、ひどく痛いような顔をされたのだけは、確かだった。


 そんな私の、いつかの話。




お題:私の罪 制限時間:15分 で挑戦したもの。


ひとりで全部抱えてしまおうとするひとと、手を差し伸べてもとってもらえないひとの話。

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