この苦しみも痛みも罪も、
人に剣を向けた。
人を傷つけた。
ひとを、ころした。
「……いつまで、そうやってるつもりだよ」
生きたかったから。
死にたくなかったから。
そうすべきだと、思ったから。
何を並べ立てたって、人殺しには違いない。そんなのずっと、知っていた。
「手放しちまえよ」
声がする。ぶっきらぼうな、だけど優しい声が。
お前だけのせいじゃないと、抱え込むなと、そんなふうにそそのかす。
それが本心からだとわかるから、私はただ、笑う。
そうして彼は、まるで自分の方が傷ついたみたいに、痛々しい顔をする。
全部全部、選んだのは私だった。
そうしない道だって、探せばきっとあったはずだった。
だけどそれじゃあ、何も変わらないのだと、変えられないのだと、知ってしまったから。
……ああ、違う。
そうしないことを選んで、真っ当な、綺麗な道を選んで。
そうして全てが変わるまでに、苦しむ人も傷つく人も、見ていられなかったのだ。
少数の犠牲を見過ごすことが、できなかっただけ。目の前で苦しむ人を見ていられなかっただけ。
だからこれは私のエゴだ。エゴの果ての痛みで苦しみで、――誰のせいでもない。
痛みを苦しみを、分け合おうと言ってくれる人たちがいる。
差し伸べられた手を、だけど私はとるつもりはない。
選んだのは、私。
暗く汚れた道を、選んだのは私。
だから、同情も共感も、協力も哀れみもいらない。
ただ、黙って見ていてくれればいい。邪魔をしないでいてくれればいい。
全部全部、持っていく。
この苦しみも、痛みも、罪も。
「あげないよ」
何一つ。この全ては、私のものだ。
「自己犠牲なんざ、誰も頼んじゃいねぇよ」
自己犠牲? そんなもの、どこにも転がっちゃいない。
私は私のものを、ただ抱えていくだけだ。
ただ、欲張りな、だけだ。
その優しさは、私には必要ない。
どこかの心優しい、その優しさと潔癖さ故に苦しむような、そんな誰かに捧げるべきだ。……そうでしょう?
笑った顔が、うまくつくれていたかはわからなかった。
ただ、ひどく痛いような顔をされたのだけは、確かだった。
そんな私の、いつかの話。
お題:私の罪 制限時間:15分 で挑戦したもの。
ひとりで全部抱えてしまおうとするひとと、手を差し伸べてもとってもらえないひとの話。




