楽しいたのしい、監禁ごっこ。
「ねえねえ、お風呂にする? ご飯にする? それともワ・タ・シ?」
「どうしたのついに頭沸いたの」
「嗚呼っ、その絶対零度の視線も素敵……ッ!」
「やめろこの変態ドMもどきが。疑うまでもなく頭沸いてたねそういえば」
深々と溜息をつく。髪をかきあげる動作と共にじゃらりと不快な音が響いた。その発生源を思うと本当に目の前のこの男は頭沸いてるなと実感する。
「仕方ないよ、俺は君と出逢ってから頭が熱帯気候だからね」
「また斜め上の表現だね。スコールにでも降られろ」
「それはつまり君への愛をとめどなく暴力的なまでに表現しろって、そういう?」
「ふざけるな階段でみっともなくすっ転んで気絶してこい」
「君が望むなら」
「そのまま野垂れ死ね、――と言いたいところだがこの手錠と部屋の鍵外してからにしろ」
「えー。やだー」
「かわいこぶるな気色悪い。私はこんなところで餓死するのは御免だ」
「俺が死んだら君も死ぬ、って心中っぽくていいよね」
「寝言は死んでから言え。まるで私が後追いするみたいだから御免被る」
「大丈夫だよ、流石にこの部屋の様を見て君が監禁されてたことくらいはわかってくれるって」
「何一つ安心材料じゃないがな。いい加減飽きろ」
「無理だよ。それは俺に君をどうでもいい存在だと思うようになれってことだよ?」
「なれよ」
「無理ですー。だって君は俺の運命だからね!」
にこにこと人畜無害そうに笑う男の顔は十人中十人が絶賛しそうな整いっぷりで、頭の方もどうやら出来がよろしいらしい。人として大事なものは軒並みダメダメのようだが。
そんなやつに何故か監禁されてから、さて何日たったのだろう。意外と一週間くらいかもしれない、というかそうであってほしい。時間感覚が曖昧になって久しいのでよくわからないけどきっと可能性は皆無じゃないはずなのでお願いします神様仏様。
「朝から晩まで君と居られるなんて、すごく素敵で幸せな生活だと思うんだ」
「私はちっとも素敵とは思えないんだけど。ホント飽きろよいい加減」
「いーやーでーすー」
そんな進展のないやりとりも何度繰り返したことか。まあ多分そのうち飽きるだろうし、あまり認めたくはないけどどうしてもと私が言えばこいつは自殺するレベルなのでどうにでもなるとは思っている。
それでもやっぱり、こいつが監禁ごっこに満足して解放されるのはいつになるやら、と溜息を吐いてしまうのは――まあ仕方のないことだと思う。
お題:楽しい監禁 制限時間:15分 で挑戦したもの。加筆修正済み。
監禁加害者がきゃっきゃしてて、監禁被害者が淡々としてる、いろいろ微妙な監禁話です。




