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物語の切れ端。  作者: 空月


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名前の無い復讐者






「――なんでこんなことに、って顔だな」


 くつくつと喉の奥で笑って、少年は呆然とした様子で瓦礫の中に座り込む白衣の男を見下げた。


「どうしてここがわかったか、どうして的確に壊せたのか、どうして――まだ生かされているのか」


 その様子じゃ覚えてないな――そんなことだろうと思ったけど。

 言いながらまたくつりと笑って、少年はゆっくりとした足取りで男へと近付く。


「どうしてここがわかったか。どうして的確に壊せたのか。簡単なことだ。オレは昔ここにいた」


 紡がれた言葉に、男は目を見開いた。恐怖にか驚愕にか、震える唇が無意識に近く音を発する。


「それ、は――」

「ありえない、って? ――残念だったな、アンタはそりゃあ無かったことにしたかっただろうが、オレという存在は生き延びた」


 まだ思い出さないか、といっそ愉しげに少年は問う。

 その鈍く赤に光る双眼が、男の記憶の扉をこじ開けた。


「まさか、廃棄処分の――」

「ご名答。アンタが駄作だの失敗作だのと好き勝手言って『廃棄処分』してくれやがった内の一人だよ。懐かしいだろ?」


 まあアンタは名前も付けやしなかったくらいだから、顔も覚えてやしないだろうが――そんなふうにうそぶきながら、少年は男の眼前で立ち止まる。


「虫の息程度のが何人かいてさ。まあ色々あってオレが代表で生き延びて――アンタとアンタの研究をぶっ潰すってことになったわけ。ここまで来るのに大分かかっちまったけど――まあ間に合ったからいいよなぁ?」


 非人道的で、生命を冒涜するような――そんな、闇の世界でしか出来ないような研究の犠牲に、実験体に、失敗作になった者たちの代表として――全てを壊しに来たのだと。


 それが、己への死刑宣告だと、男にもわかった。わかってしまった。


「だからさ、バイバイ。一応、理由くらいは教えてやろうと思ったんだよ。だから生かしてた。それだけ」


 じゃあな、と軽い永遠の別離を口にして――少年は、無邪気までの笑みを浮かべる。

 それが、男の最後の記憶になった。




お題:名前も知らない駄作 制限時間:15分 で挑戦したもの。

人体実験とか人工生命とかの非人道的な研究の被害者と加害者の最後の話です。

ヤマとかオチとか意味とかあるはずもない。


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↑反応があると軽率に続きを書いたりするかも
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