三月と私。
私には所謂幼馴染というものがいる。
お隣さんの一人息子であり、見た目も頭の出来も、ちょっと比べるのが虚しくなるくらいには恵まれている幼馴染が。
そんな彼の名は、弥生三月という。
冗談のような名前だけれど、残念ながら正真正銘本名だ。
読みは『やよい みつき』なのだけれど、幼い頃――まだ性別が外見に直結しない、つまり綺麗な子供は概ね中性的に見えるような時分、名前のせいで女の子に間違われ、同年代にはからかわれたことから、彼は『サンガツ』と呼ばせるようになった。
……とはいえ、今はそう呼ぶのは私くらいのものなのだけど。そもそも現在でも名前で呼びかけるような間柄なのが家族と私くらいだとも言う。
そうしてその三月は、悲しいことに、ちょっとばかりひねくれた性格に育ってしまった。
見た目は文句なしだし、頭の出来もいいので外面も上手に取り繕っている。けれど、素の性格となると、お世辞にも性格がいいとは言えない。イイ性格とは言えると思う。
「……何か失礼なこと考えてない?」
「ううん、別に」
じっとりとした目で見つめられたので、とりあえずしらばっくれる。失礼なことというよりも、これで性格もよかったら聖人君子だったのになぁ、と惜しんでいただけだ。
信じてなさそうに「ふーん」と呟いた三月は、私の右手にぶら下がっているコンビニの袋に目を向けて、微かに目を細めた。
「その袋……今日も新作買ってきたの?」
「うん。今新商品が多いから、毎日ちょっとずつ買ってるの」
「太るよ」
「太りません。でもそういうデリカシーのないことを言うのはどうかと思います」
「何で敬語。別に、こういうこと言うのは君にだけだよ」
全く別のシチュエーションで言われたらときめけそうな言葉だけど、ちっともそういう雰囲気でも場合でもない。三月は声もいいので、勿体無い気分になる。
袋から取り出してどれから食べようかな、と真剣に悩んでいたら、何だか最近恒例になってきた言葉が耳に届く。
「一口ちょうだい」
「……自分で買いなよ。お金持ちでしょう」
「自分で買って、しかも一袋も食べたいとは思わないからやだ」
「わがままー」
「今度君の好きな洋菓子店の新作買ってきてあげるから」
「……仕方ないなあ」
事あるごとに「一口」をねだる略奪者に今日こそ物申そうと思ったけど、見返りを提示されたら仕方ない。
まあ、冬季限定も春季限定も、パッケージからして素敵なのでちょっと興味惹かれる気持ちもわかるし。
本格洋菓子店の『新作』の言葉にうきうきしながら、私は買ったばかりの新商品の袋を開けたのだった。
お題:3月の略奪 制限時間:15分 で挑戦したもの。加筆修正済み。
この略奪()の頻度は二月から三月にかけて増えるんだよ、でも理由は新商品が多く発売されるからじゃなくてとあるイベントをこっそり三月が意識してるんだよ、というのを匂わせるはずがうまくいきませんでした……。
でも関係性としては気に入ってます。このふたり。




