夜闇の邂逅
「夜闇に乗じて屋敷を襲う、というのは古式ゆかしい略奪の方法ね」
ふふ、と月明かりにぼんやりと浮かびあがる人影が笑う。
「――随分と余裕なんだな、お嬢さん」
対する男――黒づくめの夜闇に紛れる格好をした略奪者は警戒を滲ませて言う。
「安心して。あなたの邪魔はしないから。ただ、手馴れた人間がどういうふうに略奪をするのかを知りたいだけよ」
「この状況で略奪も何もあったもんじゃないけどな」
「私、少しくらい騒いだほうがいいかしら?」
「……訊くな」
どうも調子が狂う、と溜息をついて、室内のものを物色するのをやめた。黒い噂の絶えない領主の屋敷を襲ったのは、金に困ったからではない。仲間が必要な分の働きはしているだろうと、そのまま部屋を出ようとする。
「あら、もう行ってしまうの?」
その背にかけられた、能天気といってもいい声に再び溜息をついて、巷では義賊とも言われる盗賊団のリーダーは足を止めた。
「状況をわかってないわけじゃあないだろう、お嬢さん。過ぎた好奇心は寿命を縮めるぜ」
「それは忠告かしら? それとも警告?」
「どっちだっていいだろう。とりあえずは口を閉じる努力をしたらどうだ」
「いやね、それじゃあ生きている意味がないわ」
顔は見えずとも笑っているだろうと容易に知れるその声音に、言葉を向けるだけ無駄だと結論づけて、今度こそ彼は部屋を去った。
「さて、あの人たちがここの腐れ領主もついでに始末してくれていればいいのだけど――高望みはしないでおきましょう。とりあえず自由の身を満喫するとしましょうか」
微笑んだ彼女と、去った彼が再会するのは――翌日の街中のことだった。
お題:夜と略奪 制限時間:15分 で挑戦したもの。
名前も代名詞も決めずに三人称は無謀だったな、と途中で気付きました。
あと略奪要素が無いに等しいですね。投げっぱなしは仕様ですけども。




