微笑みの理由から一夏の伝奇。
「何でいっつもそんな貼り付けたよーな薄っぺらい笑顔なの?」
「宗教上の理由で」
見る人によっては慈愛の微笑みらしい笑顔を前に率直に問うと、どう考えても馬鹿にしてるとしか思えない答えが返ってきた。
「えー……言うに事欠いてそれはないわー……」
「流石にその反応は傷つくんですが」
「……ハッ」
天地がひっくり返ってもありえないだろう主張に、思わず笑ってしまった。
「鼻で笑いましたね。まあ嘘ですけど」
「だろうね。本当だったら土下座してたわ」
「それは見たかったですね。今からでも真実にしましょうか」
「見え見えの撤回されても土下座はしない」
既に嘘だと言質をとってるってのに信じる馬鹿がいるか。
「残念です。……というのは一応冗談として。宗教云々は嘘ですけど、ちょっとばかり特殊な事情はありますよ」
「これで何も理由なくそうだったら生粋の変人認定するところだったわ」
「それはちょっと御免ですね。実は私、笑ってないと不幸に見舞われるんです」
……何がきても予想外だったけど、流石にそれは、なんというか。
「反応に困る」
「心の声が漏れてますよ」
「えー……それ真面目な話?」
「真面目な話。何でしょうね、特異体質ですかね」
「原因不明?」
「原因不明」
「因果関係は?」
「不明です。不明ですけど、笑みを浮かべることで回避できるっていうのはどうも確定みたいなんですよね」
「意味がわからないね」
「ええ、意味がわからないです」
訳がわからないけどそれが事実なら、まあ、薄っぺらい作り笑いが視界に入るのも致し方ないような気がする。積もり積もった地味なストレスはとりあえずなかったことにしよう。
「呪い的なものなのかねぇ」
「知り合いに専門家とかいます?」
「ちょっと連絡とってみるわ」
「いるんですか」
「いるんですよ。忙しい人だから捕まるかわかんないけど。まあその時は第二候補で」
「あなたの人脈も相当意味わからないですよ」
「その発言ほどじゃないよ」
結局、呪いどころか前世とかその前とか何か色々壮大な話になっていくのは――その時の私には、まだ知る由もなかった。
お題:宗教上の理由で微笑み 制限時間:15分 で挑戦したもの。
いつも以上に投げっぱなしのは否定しない。オチが見つからなかったんです……。




